22/7[ライブレポート]CG技術のもと“ナナニジ初のキャラクターたちの舞台劇”として歌唱パフォーマンスも交えながら作り上げられた<22/7 Character’s Theater 2023>
Pop'n'Roll 編集部
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結成7周年を迎える22/7が、そのバースデーイブにあたる12月23日(土)に二部にわたって<Character’s Theater 2023>を開催した。最新鋭のCG技術のもと“ナナニジ初のキャラクターたちの舞台劇”として、歌唱パフォーマンスも交えながら作り上げられた同公演は、配信のみならず、リアルメンバーが登壇するトークショー付き劇場ライブビューイングも行なわれ「デジタル声優アイドル」として活動するグループならではの世界を確立させるものとなった。1つの物語を軸に異なる視点で展開しながら、クライマックスにはファンへ贈る最高のクリスマスプレゼントが登場し、あふれる喜びの中で1年を締めくくった。本記事では、両部のオフィシャルレポートをお届けする。
<22/7 Character’s Theater 2023>(2023年12月23日)
文責:キツカワトモ
写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ
物語は<22/7 Magical Tour>の初日、福岡公演で幕を開けた。福岡出身の氷室みず姫は“どう私の故郷は? いいところだろ”と胸を張る。このツアーでは、ライブのさまざまな場面でイリュージョンに挑戦しているとのことで、キラキラと粒子をまとったスティックを振りながら「謎の力」を歌い踊るメンバーたちの衣装が早変わりしたり、神木みかみの姿が妖精のごとく消えたりと、夢のようなパフォーマンスがくり広げられていた。そんな22/7のパワーの源といえば、お菓子。楽屋へ戻ると、用意されたご当地のお菓子に一目散に手を伸ばす。なかでも瀬良穂乃花は誰よりも早く現地入りして買っておいた入手困難な「いちごマカロン“イチロン”」を楽しみにしていた。だが、開演前にテーブルの上に置いておいたはずのそれが忽然と姿を消しており、瀬良はショックで倒れてしまう。そして、目を覚ました時には――。“ここはどこ? 私は、誰……?”。メンバーの記憶喪失という悲劇にみまわれた22/7は、一体どうなってしまうのか!?
同公演は、1つの物語が2部にわたって異なる視点で展開し、両部見ることでさらにグループの魅力を堪能できる内容になっていた。まずは、22/7に加入してからの記憶が戻らない瀬良の心の動きを軸に、メンバーたちの協力のもと失われた欠片が埋まっていく過程を描いた第1部「Pieces of Memory」から話を追っていこう。
シーンは変わって、レッスン室。改めて1人ひとりが瀬良に自己紹介をしていくなかで、現在は海外で撮影中だという斎藤ニコルの変わらずつっけんどんな声も電話越しに聞くことができた。滝川みうは“必死に練習していたのだから、身体が覚えているかもしれない”と、瀬良をリハーサルに誘う。そこへ掛かったのは「タチツテトパワー」! 桐生塔子と一緒にパンチのある歌い出しを担った瀬良は、天真爛漫な自己紹介のフレーズをも想い出すに至るのだった。
公園のベンチに、瀬良と桐生塔子が座っている。桐生は、厳しいレッスンにヘトヘトな瀬良に寄り添い、加入して最初の合宿でどれだけ彼女に励まされたかという話をした。そこへ、紅白ユニットで同じ白組のメンバーたちも現れて瀬良を力づける。“ほのちゃんが自信を取り戻せるまで、何時間だって付き合うからさ!”と、西浦そら。そして、滝川が紅組の桐生に“塔子ちゃんも一緒にね。穂乃花ちゃんのためだよ”と声を掛けたかと思えば、ツアーの大阪公演へとシーンが切り替わり、なんとユニットの垣根を超えてメンバー全員でパフォーマンスする、通称“全部のせ”で、リアルメンバーに先駆けて白組曲「最後のピアノ」を披露するのだった。ダンスの得意な白組メンバーたちに負けじと食らいつく紅組メンバーたちから目が離せない。また紅組曲「ハレロ」も、「22/7 ANNIVERSARY LIVE 2023」同様に全員曲へとかたちを変え、声を合わせて「ハレロ」と唱えるとステージがひときわ明るくなった。紅組のメンバーを消して移動させるイリュージョンも大成功。楽屋に戻った瀬良が、こみ上げる興奮のままに“ライブってこんなに楽しいの!?”と叫ぶと、一之瀬蛍は“初めてのライブのときも同じことを言っていたよ”と笑った。
見慣れた光景は、冠バラエティ番組『22/7計算中』のセットだ。「世界の矛盾」を激しくもしなやかにパフォーマンスし、その日の収録は終わった。ウマくしゃべれなかったことを反省する瀬良だが、メンバーたちは、かつてオンエアされなかった彼女のモノボケをいじりながら“そんな穂乃花こそが面白い”と、温かな空気で包んだ。
“私は私。でもやっぱり……全部、想い出したいよ!”記憶が戻らないまま、いよいよ迎えたツアー最終日、東京公演。メンバーカラーを点呼して“世界の平和は我らが守る!”と叫ぶヒーローのような円陣は、どんな逆境にも力をあわせて立ち上がってきた22/7らしい。「不確かな青春」、「とんぼの気持ち」と、きらめきとくすんだ心のはざまでおぼつかなく揺れ動く様を映し出しながら、ついには迷いを振り払って仲間たちとの“今”を信じて突き進む「未来があるから」の力強いパフォーマンスへとライブは続いた。
1人、舞台裏の暗闇に佇む瀬良は、メンバーたちのフォローに感謝しながらも“私だって、みんなと一緒に盛り上げたいよ!”と、強く願う。すると、1つの記憶がぼんやりと浮かび上がってきたではないか。後輩メンバーたちがレッスンしているところに先輩メンバーたちが初めて訪れ、瀬良が驚きで尻もちをついてしまった“ナナニジでの最初の記憶”だった。そこへ、瀬良が記憶を取り戻すきっかけになるのではないかと、どうにかこうにかイチロンを入手してきたメンバーたちがやってくる。イチロンを口にした瀬良は、小さく飛び上がり“イェイ!”と敬礼。元気印の完全復活に歓喜するメンバーたちのもとに、アンコールを願う観客からの“ナナニジ!”コールが聞こえてくる。
一方、第2部「Pieces of Mystery」では、同じイチロン事件のなかで“奪われた穂乃花の記憶、この名探偵フジマが取り戻してみせる。……ばっちゃんの名にかけて!”と、ポーズもキメキメな“自称”名探偵・藤間桜が、織原純佳と神木を助手に真実の欠片を探し求めた。だが、藤間の繰り広げるトンデモ推理は、数々の証言によってあえなく覆される。“謎はすべて解けました。マジック、盗まれたイチロン、消えた記憶……。”先に犯人に気づいたのは織原だが、泣きつく藤間にヒントを与え、見せ場を譲る。だが、“ん? 犯人? えっと……何の話なん?”たどり着いたのは、どんな名探偵も敵わない、衝撃の結末だった。随所で第1部とは異なるやりとりが展開したが、ライブシーンにおいて「とんぼの気持ち」に代わって「命の続き」が歌われたことは特筆すべき点の1つ。セリフを唱えるメンバーにスポットライトの当たる演出は劇的で、“もっと生きたい”という叫びがキャラクターの魂を立ち昇らせながら鮮烈な印象を残した。
瀬良の中の22/7の記憶は、ほかのメンバーたちにとっても1人ひとりを繋げる大切なものだ。それを取り戻し、清々しい気持ちでアンコールに出た9人は「曇り空の向こうは晴れている」を歌う。瀬良の“希望というのは、人から人へ繋げていくものなんだ”という台詞は、この物語を通してさらなる実感を持って響いた。“こうやって想い出せたのは、観客のみなさんと大好きなメンバーたちのおかげなの!”恐らく事情を知らないであろうファンに向けても包み隠さず想いを伝えるところが、何とも瀬良らしい。藤間は“この先も、みなさんともいっぱい、いっぱい、マジックのような日々を過ごしたいです!”と締めくくった。
そして、最後の曲を歌おうとしたその時。“ちょっと待ったーっ!”と振り向くとそこには、瀬良を心配して海外から駆けつけた斎藤の姿があった。しかも、まだ一度もやったことのないその曲を一緒に踊るというのだ。それが“当たり前じゃない!”の言葉1つで納得させられるのも、斎藤だからこそ。物語に没頭するうちに忘れていたのだが、これは“舞台劇”。メンバーたちは、あくまで台本をもとに演じているはず。それでも藤間の潤んだ声には、心からの喜びが感じられた。そうして歌われたのは「君とどれくらい会わずにいられるか?」だった。手にしたステッキによって、可愛らしい振りが何倍にもチャーミングに映える。1人ひとりの微笑みも、互いに交わすまなざしも、そして10人の息が揃ったダンスも、本当の“全部のせ”という奇跡のようなひとときが確かに輝いていた。それが魔法やマジックなどではなく、仲間を思う心とたゆまぬ努力の成果であることを、22/7の7周年を祝うすべての人が知っているだろう。
公演後、デビュー6周年を記念して開催されたストーリー仕立てのライブ<22/7 ANNIVERSARY LIVE 2023>のBlu-rayが発売されることも告知された。今年、リアルメンバーとキャラクターたちが同じ“演技”をテーマに挑戦したことは“彼女たち”の未来に向けて、大きな布石となったに違いない。期待は、高まるばかりだ。