【連載】26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「最後は泡が綺麗にできたので嬉しかったです」複数の人にお茶をもてなす編

【連載】26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「最後は泡が綺麗にできたので嬉しかったです」複数の人にお茶をもてなす編 26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回

江嶋綾恵梨(26時のマスカレイド)

Pop'n'Roll Chief Gourmet Officer

2021.12.09
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昔から和に関するものが好きで、茶道にも興味があった26時のマスカレイドの江嶋綾恵梨。そんな江嶋たっての希望でスタートした連載「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」が2回目を迎えた。今回は“お茶を差し上げる”をテーマに、お菓子とお茶の差し上げ方や茶盆点を習得しながら、複数の人をもてなすことにチャレンジ。遠州流茶道師範で日本茶アンバサダー、着付け師でもある近藤あやさんを講師に迎え、楽しみながら茶道のイロハを学んでいく。

取材&文:井手朋子

26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

今日、ちょっと頑張ったかも

前回は、お盆の上でカジュアルにお茶を点(た)てる“茶盆点(ちゃぼんだて)”を体験した江嶋。茶盆点は最も簡略化した手順でお茶を点てる点法の基本中の基本だが、今回はその復習を兼ねつつ、複数の人にお茶を差し上げる手順をマスターしていくことに。

この日のレッスンは、最初に好きなお茶碗を1つ選ぶところからスタート。講師の近藤さんが持参したお茶碗の中から江嶋が選んだのは、人気の女性作家irodori窯の酒井美華さんが作った、土で模様を形成してからお茶碗の形にする“練りこみ”と呼ばれる技法のもの。お茶碗1つひとつにストーリーがあり、その背景を知るのもお茶の醍醐味だ。

次は、先生からこの日いただくお茶の説明が。用意されたお茶は2種類で、1つは京都・宇治の山政小山園の“口切抹茶”と呼ばれる限定品。本来新茶の時期は5月だが、収穫した茶葉を茶壺に入れて低温でじっくり熟成させ、それを10月中旬から12月末頃に石臼で挽いてお抹茶にして味わう。茶壺の口封を切ることから“口切抹茶”と呼ばれており、コクのある柔らかい風味。もう1つのお茶は、埼玉・狭山の奥富園の「明松」。規模は小さいながら、1つひとつのお茶を丁寧に作り、フランスなど海外のお茶の品評会でも賞を獲っている製造元で、爽やかな苦味が心地よい。もともと日本茶が大好きな江嶋は、この説明だけでも嬉しそうな様子であった。

熱心にお茶の説明を聞く江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より
26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

江嶋にとって最大の楽しみとも言える本日のお茶菓子の説明へ。茶道では、濃茶の時は主菓子(生菓子)、薄茶の時は干菓子や落雁(らくがん)、有平糖(ありへいとう)をいただくことが多いのだが、この日の主菓子は、京都祇園の和菓子屋『鍵善良房』の生菓子。鹿が鳴いてる様子のお饅頭や銀杏、紅葉、亥の子餅など、秋らしい生菓子が並ぶ。それに加えて、干菓子は京都の『永楽屋』のものが用意された。こちらは寒天と砂糖から作られた“琥珀”と呼ばれる和菓子で、見るからに美味しそうだ。

京都祇園『鍵善良房』の生菓子|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より
京都『永楽屋』の干菓子|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

目を輝かせる江嶋の隣で、先生が“復習を兼ねてお茶を点ててみて、お菓子を召し上がりながらそのお茶を飲んでみましょう。それが終わったら、次はみなさんにお菓子を配ってお茶を点てましょうね”と本日の段取りを説明。先生いわく、お茶を点てるという動作は普段やらない動きゆえ、2椀、3椀と進むにつれて変なところに力が入り、手と肩が凝ってしまうのだそう。

そんな先生の説明の横で、一生懸命に帛紗(ふくさ)を触って復習する江嶋。そう、お茶を点てる際に重要になってくるのがこの帛紗の扱い方で、前回江嶋は苦戦していたのだ。それを思い出したのか、かなり複雑な表情を浮かべてしまう。先生と一緒に“それではお茶を一服差し上げます”と開始のご挨拶をするも、消え入るような声で“助けてください……”とひと言。お客さまにお茶を召し上がっていただく際は、次に“どうぞお楽に”とお伝えするが、そのあとすかさず“私がね”と付け加えていた。

一生懸命に帛紗の復習をする江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

開始早々、前途多難な様子ではあるが、気を取り直してお茶を点てることに。

ここで江嶋は“コツはありますか?”と先生に質問したところ、“手首のスナップ。それからお茶碗の底の方に抹茶が溜まるので、茶筅(ちゃせん)は底の抹茶を混ぜるようにしてあげた方がいい”というアドバイスが。とりあえずその言葉を参考にやってはみるものの、ウマくいかないので先生にバトンタッチ。先生はシャカシャカと小気味よい音を立て、見事なお手前でお茶を点てていく。“こぼれる心配のないお茶碗だから、底から点ててだんだん上の方に上がっていく感じ”という助言に、“へぇ〜”と感心した様子を見せる江嶋。

ちなみに、泡は表千家はあまり点てず、裏千家や遠州流は綺麗に点てるのだそう。

と、ここで先生から“お菓子食べちゃう?”という嬉しいひと言が。思わず満面の笑みがこぼれた江嶋が選んだのは、旧暦10月の亥の日の亥の刻に食べる習わしがある亥の子餅。茶道の世界では、お菓子をいただく時はお懐紙(かいし)を半分に折って手のひらに乗せた懐紙の上でお菓子を切っていくのだが、前回と同様にお菓子を切る動作に躊躇する江嶋。先生の“切れないお菓子は作らないから安心して(笑)”の言葉に促されるように、いざ実食。すると“美味しい”のひと言とともに、今日イチの笑顔。食べ終わったあとは、“確か懐紙を折り曲げていなかったっけ……”と作法の記憶を辿っていた。

亥の子餅を食べて、満面の笑みを浮かべる江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

いよいよ、自分が点てたお茶をいただくことに。

ここで思い出されるのが、前回受けた“お茶は3、4口で飲み干した方がいい”というアドバイス。早速“1口目ミスったかも(笑)”と後悔する江嶋に、“そこまで無理しなくて大丈夫(笑)”と先生が伝えて、なんとかお茶をいただき終えると、今度はお客さまに“しまわせていただきます”とお伝えしてお茶碗に道具を収める工程へ。

この過程で帛紗を使って茶杓(ちゃしゃく)を綺麗にするのだが、ここでまた混乱のもととなる帛紗のさばき方が登場。江嶋は真剣な表情で先生のさばき方を真似し、“なんか思い出してきたなぁ”と言うものの、“似てるけどなんかちょっと違う”と先生に言われてしまう。紆余曲折がありつつも、ひととおりの工程を終えると、すっかり放心状態に……。

自分が点てたお茶を飲む江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より
お茶の美味しさをこれでもかと噛みしめる江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

先生も思わず笑って“どうです?”と聞くが、消え入るような声で“難しそうだな……。でも、やることは覚えてるんですよ。これを清めてこれをやって……”と言う江嶋。そんな彼女を励ますように、“微かでも、記憶がちゃんと残ってるから偉いですよ。だって帛紗の扱い方などは半分ぐらい覚えているじゃないですか”と先生。そこで“先生優しい……。だってこれ1人でやるんですもんね、どうしよう。ちょっと練習したいかな……”と弱気な発言が出たため、先生は力強い声で“いいじゃないですか! 特訓の会とか作れば(笑)”と提案。

そもそも茶盆点は毎週通って3ヵ月ぐらい続けても、1週間空くとあれ?となってしまうもの。そのため、鬼の特訓をしたあとにメンバーに振る舞おうという案が出る。今後の予定を相談する傍らで、“今、(頭が)パンクしてる”と硬直した表情を浮かべつつも、帛紗のさばき方を必死に練習する江嶋。さらに自ら“頭の中で別の言葉で覚えよう!”と自己流での習得法を思いつく。お盆の上で道具の位置をずらしていく一連の動きを、ダンスのフォーメーションで覚えることにしたという江嶋。さすがアイドル。頭がパンクしつつもひととおりの流れを復習すると、“さっきより覚えたかも”ということで、連続してお茶を点てることに。

真剣な表情でレッスンに挑む江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

仕切り直して、ここで現場に集結したマネージャーや編集スタッフ、カメラマンにもお茶菓子を配り、1人ひとりにお茶を点てていく。周りの“音がいい”、“香りもいいですね!”の声に触発されて“下から〜、手首のスナップしっかり〜、先生みたいにあんなに速くできないけど〜”と、自分を鼓舞しながらお茶を点てるというシュールな展開に。

そして“さっきより上手にできた!”というお茶を、マネージャーに飲んでもらおうと差し上げる江嶋。“さっきより泡の感じが上手じゃない?”とちょっぴり嬉しそうな顔を見せ、周りが安堵したのもつかの間、息つく間もなく今度は担当編集者にお茶を点てていく。連続して点てると準備や片付けの工程が減ることもあって、余裕が生まれたのか次々と現場スタッフにお茶を点てていった。

最終的に5椀分のお茶を点て、2時間近くにわたるレッスンもようやく終了。その瞬間に、思わず拍手が起こる。江嶋の“今日、ちょっと頑張ったかも”というホッとしたようなコメントに、先生も“点てましたね〜、今日は。これだけ点てたのはちょっとハードかもしれない”と称え、この日のレッスンは終了となった。

スタッフにお茶を点てる江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より
スタッフにお茶を点てる江嶋|26時のマスカレイド 江嶋綾恵梨「えじのお茶会体験記〜大和撫子になっちゃうよ?〜」第2回より

今回のお抹茶
京都・宇治 山政小山園「口切抹茶」
埼玉・狭山 奥富園「明松」

埼玉・狭山 奥富園「明松」、京都・宇治 山政小山園「口切抹茶」

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