PINK CRES.を今改めて振り返る 新感覚ガーリー&ハッピーオーラ全開の圧倒的なガールクラッシュ|「偶像音楽 斯斯然然」第53回

PINK CRES.を今改めて振り返る 新感覚ガーリー&ハッピーオーラ全開の圧倒的なガールクラッシュ|「偶像音楽 斯斯然然」第53回 「偶像音楽 斯斯然然」第53回

冬将軍

音楽ものかき

2021.03.27
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2021年6月30日に解散するPINK CRES.。ガールズグループとして、シーンの中で異色かつ異彩な存在感を放っていた彼女たちのオリジナリティを、冬将軍が独自の視点で紐解く。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

PINK CRES.が2021年6月30日を以って解散することが発表された。

2015年Berryz工房の無期限活動停止後、夏焼雅の新グループとして2016年から活動開始。ボーカルグループ、ダンスグループとしての存在感、同性をもターゲットにしたビジュアルイメージとファッション方面への戦略、そして意欲的な音楽探求……どれをとってみてもハロー!プロジェクトのOGグループとして異色であったし、J-POPシーンのガールズグループとしても異彩な存在である。

ハロー!プロジェクト卒業後に音楽活動を続けるケースは意外と少ない。夏焼と近しいところでは、モーニング娘。の田中れいながLoVendoЯ(2012年〜2019年)を、鈴木愛理がソロ活動を開始している。両名ともに形は違えど、アップフロントらしいJガールポップをやっている印象があるのだが、PINK CRES.はそういった匂いを感じさせないところが興味深いところだ。

そんなPINK CRES.とはなんだったのか。改めて振り返ってみたい。

PINK CRES.始動

PINK CRES.の中心人物であり、リーダーの夏焼雅といえば、個性派揃いのBerryz工房の中で、歌唱&パフォーマンスを牽引するメンバーであり、“オシャレ番長”、“美しさの絶対基準”とも呼ばれた、チートキャラ。後年はサブキャプテンを務めた。Berryz工房活動停止以降、音楽活動を続けることは口にしていたものの、音沙汰ない期間を経てからの“夏焼雅がついに動きだす”と行なわれたオーディション。しかしながら、蓋を開ければ該当者なし、という結末。

YouTubeのハロプロ番組の司会をやっている夏焼の姿を観ながら、“おれたちは歌っている姿が観たいんだ!”と、やきもきしているベリヲタ(Berryz工房のファン)、みやヲタ(夏焼雅のファン)をあざ笑うかのように、再度行なわれたオーディションを見守る夏焼の表情は、この先のビジョンがしっかり見えているように思えた。

ああ、この人を侮っていた。何も考えていないようでちゃんと考えている……。

と見せかけて実は何も考えていないのかもしれない。Berryz工房が苦悩や努力といった姿を絶対に表に出さないのは、嗣永桃子の毅然としたパーフェクトアイドルとしての矜持が大きかったわけだが、同様に夏焼の放つ得体の知れないオーラ、チート感もそれを色濃く強調していた。勘のよさ、感性、直感がズバ抜けている。まさにセンスで生きているような人なのである。

「夏焼雅 新グループ・オーディション最終合宿」は33:10〜

こうして、小林ひかる、二瓶有加というオーディション合格者によって誕生した新ユニットがPINK CRES.である。しかしながら、はっきり言ってしまえば、最初の印象はよくなかった。幼少からアイドルエリートとして育ってきた夏焼と芸能経験のない2人が同列にステージに立って、いきなりウマくいくはずなどないのだ。2016年夏に行なわれた初お披露目イベントは正直なんとも言葉にできない後味の悪さを感じてしまったし、PINK CRES.というユニット名が発表された<Buono! Festa 2016>で、日本武道館に立った3人の印象も正直あまり覚えていない。今どきの女子が流行りのサマーソングを歌っているという、なんとなくの感想しかなかった。

そんな印象を大きく変えたのが、2017年6月にリリースされた1stアルバム『crescendo』である。

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