PINK CRES.を今改めて振り返る　新感覚ガーリー＆ハッピーオーラ全開の圧倒的なガールクラッシュ｜「偶像音楽 斯斯然然」第53回「偶像音楽 斯斯然然」第53回

オーセンティックなハウスに寄せた『えとせとら』

2018年にリリースされた2ndアルバム『えとせとら』は、PINK CRES.サウンドをよりタイトにまとめつつ、オーセンティックなハウスに寄せた印象の強い作品。Little Glee Monster楽曲で知られるCarlos K.を筆頭に、YUU for YOU、Giz'Mo(Jam9)、Lauren Kaori……といった多彩な気鋭クリエイターによる楽曲が冴え渡たり、可愛いからカッコいいまで、よりカラフルな作風となった。

目に見えるほど歌唱力の上がった二瓶と、ラップ担当としてのスキルを揺るがないものとした小林、表現力と声の響かせ方、英詞を含めた発音などますますボーカリストとして進化を遂げた夏焼。3人によるPINK CRES.としての強さをより確固たるものとした。そのことがひしひしと感じられるアルバムである。メンバーの成長を強調するように、より高低差のあるメロディの楽曲も多く、タイトなサウンドプロダクトも相俟って、ガーリーな雰囲気から一段階大人になったような雰囲気の楽曲も増えている。

PINK CRES.「Etcetera」

当時の音楽シーンを振り返れば、BLACKPINKが名実ともに世界的な人気を確立しようとしていた時期でもあり、女性ボーカルグループのトレンドとして、ガーリーなものとは一味違う、“女性が憧れる女性＝ガールクラッシュ”が注目されてきた頃でもあった。リード曲「Etcetera」は、そうしたトレンドを意識したものであるし、「ラブ・タグ」や「TOUGH GIRL」のような、J-POPと洋楽、それぞれのよいところをハイブリットしながら、新しさと懐かしさをクロスオーバーさせていく、といった実験的な趣を感じさせる楽曲もある。こうした時流を見据えた意欲的な音楽戦略を見れば、アップフロント及び、ハロー！プロジェクト系譜の中で、PINK CRES.がいかに異質なグループであったかがわかるはずだ。