槙田紗子[インタビュー前編]新アイドルプロジェクト始動の真意「自信を持って“私、アイドルだったから”って言える子を増やしたい」

槙田紗子[インタビュー前編]新アイドルプロジェクト始動の真意「自信を持って“私、アイドルだったから”って言える子を増やしたい」 槙田紗子『SACO PROJECT!』インタビュー前編

鈴木 健也

Pop'n'Roll Editor in Chief(編集長)

2021.01.13
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ぱすぽ☆のメンバーとして活躍し、グループ卒業後は振付師として精力的に活動している槙田紗子が、新アイドルプロジェクト『SACO PROJECT!』(サコプロジェクト)を発足。2021年1月1日よりオーディション参加者の募集を開始した。アイドル時代から夢見ていた自身プロデュースのアイドルグループを作るという構想の実現に向けて歩みを始めた槙田。彼女は、今、このプロジェクトにどのような想いを抱いているのか? また、今後どういうグループを生み出していこうと考えているのか? 全2回のインタビューで、『SACO PROJECT!』に向けた槙田紗子の志を明らかにする。

撮影:越間有紀子
編集協力:竹内伸一

お母さんになっても自慢できるグループに

――今回は槙田さんが立ち上げ『SACO PROJECT!』について伺いたいのですが、以前のインタビューで、“アイドルをプロデュースする構想がある”という話をされていました。ただ、“30歳までに”と言っていたので、想定よりもかなり早く実現することになりましたね。

槙田:
そうなんですよ。30歳までにできたらいいなって思っていたんですけど、私の人生のスピードが、想像よりも速かったというか……。私は、物事を1年単位で区切って考えるんですけど、アイドルを卒業してから振り付けを始めて、2020年の終わりで丸3年が経つんです。人によっては短いと感じるのかもしれませんし、長いという人もいるでしょうけど、自分としては“もう3年やったんだ”という感覚なんです。それで、ここでとりあえずは一区切りという気持ちがあって。私は、アイドルをプロデュースすることを見据えて振付師をやっていたので、“今は勉強だ”と思って、自分のやりたい仕事だけをやるのではなくて、発注された仕事はすべて応えていこうというスタンスでやってきたんです。いろいろな仕事から学ぼうという精神で3年やったので、そろそろ自分のやりたいことを始めてもいいのかなと。振付師として勉強する期間は終わりで、次のステップに進むタイミングなのかなと思って、ちょっと早まりましたけど、プロデュースの構想を本格的にスタートさせることにしました。“もう今、やっちゃおうかな”っていう、半分ノリと勢いもありましたけど(笑)。

――実際、スタートさせようと決めたのはいつだったんですか?

槙田:
実は、コロナ禍でなければ、もっと早くスタートさせていたと思います。2020年に入ったくらいには“もうやっちゃおうかな”っていうモードでした。毎年11月に<サコフェス>をやっているんですけど、2020年11月の<サコフェスVOL.3>でデビューできるように動こうかっていう話もあったんですよ。でも、コロナでオーディションできる状況ではなくなってしまって。それで、2021年に本格的に動き出すことにしたんです。

――“アイドル自身がアイドルという職業を肯定できるグループ”というのがコンセプトだそうですね。

槙田:
これは私がアイドルをやっていた時から感じていたことなんですけど、芸能のお仕事っていろいろあるじゃないですか。女優さん、モデルさん、バラエティタレント……いろいろなジャンルがありますよね。でも、アイドルってなんでもやらなくちゃいけないんですよ。基本的には歌とダンスですけど、バラエティも必要な要素になってきますし、お芝居をやらなくちゃいけない場面もあります。アイドルって、そのグループの中でコンテンツを作らなくちゃいけないので、結局、いろいろなことを求められるんです。すごく大変な職業だと私は思っているんですけど、でも、親しみやすさがあるので、下に見られがちでもあるんです。アイドル自身もアーティストになりたいというか、脱アイドルの方向に進みがちで、グループとして脂が乗ってくるとだんだん自我が芽生えて、セルフプロデュースをするようになったり……それもすごくカッコいいことなんですけど、アイドルを否定している様子が伺えるとがっかりするんですよね。

――アイドルという職業への愛が深いからこその想いですね。

槙田:
私は、そういうグループやアイドルの子たちを近くで見ていて、“アイドルってもっと素晴らしいんだから自信を持ちなよ”って思うんです。すごくもったいないですよね。アイドル自身がアイドルを肯定しないと、周りも認めてくれないですよ。話はちょっと逸れますけど、私は鈴木愛理ちゃんが大好きなんですけど、彼女は今、ソロの歌手をやっていて、本人の願望としてはアイドルではない方向へ進んでいきたいんでしょうし、それは正しいことだと思うんです。そういう状況の中で、愛理ちゃんは“アイドルだった自分を否定したくない”ってちゃんと発言しているんです。それってすごいなって思うんですよね。“こうあるべきだよな”って思ってて、“なぜ、こう思えない子がいるんだろう”って思うんです。

――いわゆる“アイドルだったことが黒歴史”みたいになっている場合もありますよね。

槙田:
そうなんです。それって、きっと過去に否定されたりとか、“アイドルだから”っていうレッテルを貼られた経験があって、それが悪い方向のトラウマみたいになっているのかなと。自信を持って“私、アイドルだったから”って言える子が増えたらいいなって思っていて、それを大事にしたいんです。まずは、将来SACO PROJECT!のメンバーになる子たちを、プロデュースする私が肯定してあげることから始まると思っています。その子たちがお母さんになっても“アイドルやってたんだ”って自慢できるグループにしたいなって思います。

――アイドルとしての自分を肯定できるって、とても大事なことですね。

槙田:
そうですよね。たまに、すごい逸材を見つけたというような記事とかで、“アイドルにしておくのはもったいない”って書かれていることがあるんですよ。それがもう、許せなくて(笑)。“もったいないってどういうこと?”って、私には理解できない。でも、そういう感覚がまだあるのも事実で。アイドルというコンテンツ、ジャンルが自ら敷居を低くしている部分もありますからね。ただ、本質を見てくれれば、“もったいない”という発言にはならないと思うんです。

――槙田さんが言うように、アイドルって実はいろいろなことができて、表現者としてはかなりレベルが高いですよね。

槙田:
自分の経験上でも、自分の畑ではない現場に行ったとしても、まったくの初心者にはならないんですよ。例えば、いきなり“舞台が決まったから”って言われて、ポンと現場に放り込まれても“演技なんてやったことない”って何もできないことはないと思うんです。本格的に演技をやったことはなくても、ダンスと歌で表現することはやっているから、表現のベクトルが違うだけなので、意外と器用にこなせちゃったりするんです。それは今、振付師をやっていてすごく感じますね。特に舞台の現場だと、アイドルの子はすごく器用なんです。

槙田紗子

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