<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)

有安杏果[ライブレポート]「芸術は心の栄養剤になるんじゃないかと信じている」歌い、踊り、演奏して思いを届けた<サクライブ2020>

Pop'n'Roll 編集部

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2020.11.13
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有安杏果が、11月12日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて<有安杏果 サクライブ2020>を開催した。同公演は、当初、3月に全国ツアーとして行なう予定だったが新型コロナウイルスの感染拡大によって延期に。さらに振替公演も中止となっていた。今回、キャパシティを制限し感染予防・拡散防止対策を行なった上で実施し、配信を通して全国へ届けられた。本記事では、そのオフィシャルレポートを掲載する。

<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)

取材・文:矢島由佳子

開演時刻となると、バンドメンバーである福原将宜(ギター)、宮崎裕介(ピアノ)、川崎哲平(ベース)、波田野哲也(ドラム)が先にステージに登場。4人が音を鳴らし始める中、有安が笑顔で姿を現す。

ステージ中央まで行くと、両手を胸に当てて会場を見つめ、その両腕を大きく広げて“ようこそ”という気持ちを示しつつ、感極まった様子も見せていた。

3月のツアーで届けるために完成させてリリースした「サクラトーン」、7月にリリースした「Runaway」と初っ端から立て続けに新曲を届けたあと、“夢みたいだね! まだ信じられない自分がいます。本当にお待たせしました、<サクライブ2020>へようこそ! 本当に久しぶりだね”と、ようやくライブができることへの喜びを露わにし、会場からは待ってましたと言わんばかりの長い拍手が響き渡る。

客席にいる人たちはマスクを着用、声を出すことも規制されていて合唱やコール&レスポンスなどができない状況である中、“声出せないのはしんどいよね。しんどいと思うけど、みんなの想いをしっかり受け取るつもりです”と語りかけた。

<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)

次に披露した新曲「Do you know」、「愛されたくて」、新曲「LAST SCENE」の3曲は、ダンスを踊りながらハンドマイクで歌を届けるパート。激しく身体を動かしたり、その長い腕をしなやかに広げたり、軽やかにクルクル回ったりしながらも、歌もリズムも体幹もまったくブレないところが有安の持ち味だ。

続いて、子役をやったりオーディションを受けたりしていた時から何度も歌っていたというMISIAの「Everything」をカバー。さらにこの日は、DREAMS COME TRUEの「何度でも」も歌唱する。自身のライブでカバーを披露する際に、難易度最上級と言えるMISIAやDREAMS COME TRUEを選曲するところに、有安の絶え間ない挑戦心と、それを魅せられる歌唱力の高さが表れている。

中盤のハイライトとなったのは、グランドピアノ、ウッドベース、声という、シンプルで極上な編成からスタートし、歌をオーディエンスの心に染み込ませた「虹む涙」。この日前半は新曲を連発するセットリストとなっており、もちろん夏にリリースした「ナツオモイ」も披露した。

<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)

オーディエンスが声を出せないため普段のライブのようにリアクションを受け取ることができず、“ホンマに楽しんでもらえてる? 大丈夫?”と心配を見せる場面もあったが、タオルを振り回すことが恒例となっている「Drive Drive」ではタオルを半分に折っていつもより小さく振り回す配慮がなされていた中でも、クラップが湧き起こり会場は陽気な空気に満たされる。

バンドメンバーと“おうち時間、何してた?”というトークをゆっくりくり広げる場面では、会場が和やかな雰囲気に包まれた。そして、より一層心を込めて歌ったのは「小さな勇気」。新しいライブ様式で、観客もステージに立つ側も慣れない部分は多いが、聴いた人の背中をぽんっと押せるようなメッセージを有安が歌に込めて、それを受け取った人はこの会場を出る時には少し前向きに、強くなれている、という音楽的なコミュニケーションはどんな状況変化が起きても揺るがないように思えた。

そして終盤は、アップテンポな3曲「Catch up」、「TRAVEL FANTASISTA」、「Another story」でかっ飛ばして、会場をハッピーな空間に塗り替えて幕を閉じた。

<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)

アンコールでは、有安のライブの恒例となっている“逆再生メドレー”。本編で演奏した楽曲たちを、最後の曲から1曲目まで遡っていき、すべてアレンジを変えて、1本のメドレーにして披露するというものだ。

この日はジャズテイストを含んだ「LAST SCENE」がメタルに、ロックナンバーの「Runaway」がスカに、「何度でも」がレゲエに、といった風にそれぞれの曲が大変身を遂げ、計20分近いメドレーに仕上がっていた。

また、2021年1月に行なうツアーのタイトルが<有安杏果 Live Tour 2021 “雫ノ音”>に決定したことを発表。そのタイトルに込めた想いはツアー会場で発表するとのこと。そして、“改めて、今日、みんなの大切な時間を預けてくれてありがとうございます”と深々と頭を下げて、ライブが開催できるかどうかわからない状況が続いた頃は本当に苦しかったと振り返った。

“みんなもしんどかったよね。今はすごく大変な状況だと思うし、衣食住がまずあってのことだとわかってるんですけど、だけど、私たちがやってる音楽とか芸術は人の心を豊かにする、心の栄養剤になるんじゃないかと私はずっと信じているので、みなさんにもこれから届けていけたらいいなと思います”と自身の想いを丁寧に語った後、最後は「ペダル」のリアレンジバージョンを演奏し終演となった。

2021年4月からは、<サクライブ 弾き語りツアー2021>(全国8ヵ所9公演)を開催することが決定。“自分の歌と楽器だけでどこまで表現できるのか”という想いで、自身1人でステージに立ち、全曲弾き語りで届けるという。有安のチャレンジ精神とアグレッシブな向上心は、とどまるところを知らないようだ。

なお、<有安杏果 サクライブ2020>のライブ配信は、11月20日(金)までアーカイブ視聴することができる。

<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)
<有安杏果 サクライブ2020>東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(2020年11月12日)

<有安杏果 サクライブ2020>

2020年11月12日
東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

セットリスト

1. サクラトーン
2. Runaway
3. Do you know
4. 愛されたくて
5. LAST SCENE
6. Everything
7. 虹む涙
8. ナツオモイ
9. Drive Drive
10. 小さな勇気
11. 何度でも
12. Catch up
13. TRAVEL FANTASISTA
14. Another story
EN1. 逆再生メドレー
EN2. ペダル

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