第3回:ヒョリン〜小出祐介&南波一海「小出は明日、昨日の南波と連載する」 〜
連載3回目は、K-POPからアイドル性問題、さらに話題は予想外の方向に……
小出 祐介
南波 一海
-
ポスト
-
シェア
-
ブックマーク
南波が小出のために選んだアイドル曲を聴いて、2人が気になっていることをフリートークする連載。今回はK-POPの面白さから、Twitter上でも度々議論が交わされている“いい歌とはなんなのか問題”へと話題が広がり、さらには小出の発言で南波の予期しなかった展開へと話しが脱線してしまった。
小出:
今週はどんな感じですか。
南波:
この連載に幅を持たせておきたいと思って、こんなものを持ってきました。
小出:
なんだろう。miwa?
南波:
違うから(笑)。かけますよ。
【ヒョリン「SEE SEA」】
小出:
トロピカルな感じですね。(しばらく聴き込んで)BLACKPINK? いや、ソロか。誰だろう。
南波:
SISTARというグループにいたヒョリンの新曲です。プロデュースはTWICE「TT」や「LIKEY」でヒットを飛ばしまくっているブラック・アイド・ピルスンですね。
小出:
最初はこんな日本人いるのかと思って聴いちゃってた。すげえなぁって(笑)。
南波:
K-POPは以前から国を挙げて海外戦略をやってきたじゃないですか。今では実際にアメリカのヒットチャートのトップに入るアーティストも出てきて。
小出:
K-POPはここのところずっと面白いでしょ。男子も女子も。こういうトロピカルネタも分解して、自国の独特なトロピカルにしていたりして。最近だとどんな曲でもトラップっぽいラップパートが8小節くらい入ってきたりする。この流れで急にこんなラップ出てくるか! みたいな。
南波:
しかも、そのラップがめちゃくちゃカッコいいという。
小出:
めちゃウマい。この曲は、BLACKPINKの子と声が似てたからそうかなと思ったんだけど。
南波:
小出くんは以前からBLACKPINK好きですよね。
小出:
うん。いろんな要素が混ざりすぎて、音楽国籍も謎になってるから面白い。
南波:
羨ましいなと思うのが、現在進行形の新しい音楽をやっていて、それがちゃんとエンタメとして広く受け入れられているところで。日本の音楽的に評価されているアイドルは、僕らが昔聴いていたとか、好きだったりした音楽をやっているところが多いから。
小出:
そうだね。だけど同じ曲の日本版作るのって難しそうだよね。こういうトラックと日本語って相性がよくないから。K-POPだからこそ独自の発達ができたというのもあると思う。
南波:
そもそもハングルの持つ音やリズムが面白いっていう。
小出:
そうそう。ハングルの言葉の鳴りが面白い。英語と混じっても発音に親和性があるし、しかも英語にはない発音が語尾に来たりするから、聴き心地が楽しいんだよね。洋楽っぽい曲に乗せても、そのまま洋楽にならずに別のものになるでしょ?
南波:
なるほど。
小出:
英語も日本より普及してるから発音もいいしさ。韓国語と英語がきっちりと混在してるっていうのかな。だけど日本語と英語って、例えば1音に対して詰められる文字数も、発音の特性も全然違うから、混ぜるとちぐはぐな感じがしちゃう。日本語のそういう弱点を、空耳的に言葉をはめ込むことで克服していったのが桑田佳祐さんなのかなと思うんだけど。邦楽だと、言葉の鳴り方含めて、きちんと洋楽チックなものが流行りにくいっていうのはあるよね。
南波:
サウンドだけじゃなく言葉の響きもあるのか。
小出:
響きもリズムも出しにくいからね。そういう意味でも、東京女子流の去年あたりの展開はやっぱりすごくよかったと思う。ちゃんと日本語でトロピカルハウスを消化していて。トラックもカッコよかったし。
南波:
クラブミュージック寄りだと、西恵利香さんの「DAY」が攻めた内容で。
小出:
よかったよね、新譜。トレンドをDTMで再構築したようなテイストが好きだった。あのジェネリックな感じが面白みになっていると思った。
南波:
かなり尖りつつも、日本語のポップスにするという点で見事な落とし所だなと。
小出:
だね。本格的なトラックを作ると、こっちもトレンド本流の人たちと並べて聴くから、比べようとしちゃうじゃない。だけど、DTMテイストとなると意外とそうはならないというか。レンジが狭かったり、音が間引かれたりした感じが、別物へと発展させたりする。
南波:
日本は日本で独自に発展してきたものもありますよね。
小出:
西さんはきっとそういうようなシーンとの親和性を見出しつつあるから、今後の展開も楽しみですよね。
次ページ