NEO JAPONISM、MIGMA SHELTER、RAY それぞれの配信ライブで見た「自粛期間に爪を研ぐ」ということ|「偶像音楽 斯斯然然」第35回

NEO JAPONISM、MIGMA SHELTER、RAY それぞれの配信ライブで見た「自粛期間に爪を研ぐ」ということ|「偶像音楽 斯斯然然」第35回

NEO JAPONISM、MIGMA SHELTER、RAY それぞれの配信ライブで見た「自粛期間に爪を研ぐ」ということ|「偶像音楽 斯斯然然」第35回

これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

RAY 轟音の中で生まれる奥深いゆらぎ

アイドルを応援するということは、その都度1番に輝く姿を見逃したくないということでもある。そんな儚い美しさを教えてくれたのが、7月14日に行なわれたRayの1stアルバム『Pink』リリース記念60分無料配信ライブだった。

RAYは歌がウマいとかダンスが抜群であるとか、技術面を語るグループではない。むしろ、その成長過程にあるような少女的なボーカルとその存在こそが歪んだ(“ひずんだ”より“ゆがんだ”の方がしっくりくる)轟音の中で、奥深いゆらぎを生んでいて、その様がまさに至極なのだ。

7/14(火・夜)1stアルバム『Pink』リリース記念60分無料配信ライブ

“シューゲイザーはじめ、オルタナティブ、emo、メロディックパンク、激情ハードコア、IDM等様々な90s要素を濃縮還元した〜”という謳い文句そのままに、私のような中高年の甘酸っぱいノスタルジックな思い出をぐしゃぐしゃに引っ掻き回してくれた大傑作『PINK』。モジュレーションや空間系エフェクトにまみれ、アーミングのギターなどチューニング甘めに聴こえるバンドサウンドの中でたゆたう女性ボーカル、その相性は抜群であり、その世界に少女が歌い踊るという視覚的な効果が加わると、これほどまでに破壊力が増すものなのかと改めて思い知らされる。

RAY - 世界の終わりは君とふたりで/The End of The World with You (Official Music Video)

グループの中でも抜きん出た儚げな少女性の高い歌声の持ち主が、普段はストロングゼロ片手に飲酒配信している甲斐莉乃であるというのもRAYの面白さ。自室のふすまのかけらに木下、木村、木口……と名付けて販売するという、文字にすると何を言ってるのかさっぱりわからないぶっ飛んだ発想も爽快である。内山結愛のおっさん心に揺さぶりをかけてくる洋邦名盤のレビューを綴ったnoteは以前にも触れたが、もうどんな作品が来ようとも動じないぞ!と思っていた矢先、Captain Beefheart & The Magic Band『Trout Mask Replica 』が来た時には思わず声が出た、ちくしょう。ぬか床を作ったり焼き鳥焼いたりと、とてつもないほど自由奔放な配信をしているのに、なんだか知的な香りがするのはなぜだ。完全に彼女の思うツボなのかもしれない。

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