第16回：タトゥー後日談＆ライターの不思議〜小出祐介&南波一海「小出は明日、昨日の南波と連載する」〜南波のタトゥー話の後日談から、ライターの不思議について話題は膨らんでいく

南波：
いや、ライターについていろいろ考えてしまうなぁ。自分はインタビューをまとめるとき、自分の言葉をかなり削るタイプなんですよ。個性をなくすくらいの気持ちでやっているというのに。

小出：
あのね、文章でやってることと普段やってること全っ然違うよ？（笑）　三宅もそう。自分の言ってることをあんまり載せたがらない。結果、こっち側の発言が多くなるんだけど、普段の佇まいとは全然違うじゃん。

南波：
めちゃくちゃ目立ちますよね。

小出：
宇野さんも取材のときはめちゃくちゃ喋ってる。でも、上がってきた原稿は宇野さんの発言がいつも1文くらいだったりする。

南波：
そうなんだ！

小出：
自分の言ってることのなかからどこを残すのかを吟味するのがウマい。喋りではいろいろ言ってるけど、あとの流れを考えて、自分の文が簡潔にまとまるように再編してるんだと思う。

南波：
『CINRA』でやってたマテリアルクラブのインタビューも面白かったもんね。

小出：
あれこそ宇野さんめっちゃ喋ってたからね。でも、上がってきたものは発言が短いんだよ。だけど個性もちゃんとあるし。で、言いたいのは、僕の知ってる限り、普通の服を着てるライターはいない。

南波：
それはインタビューを受けている人ならではの視点だね。

小出：
そっか。一般の人は知る機会がそんなにないか。

南波：
だからこれ、面白いのか不安（笑）。ライターを続けている人は身なりも個性的で、その人は記事のなかで個性を消そうとしても結果的に記名性が出てしまうと。自分の場合は裏方がいいなと思ってやってるんですけどね。

小出：
本当に裏方がいいって人はすべてのものに地味なチョイスをしていくでしょ。南波さんはごちゃっとした柄好きでしょ？　色もトリッキーなのが好きだし。

南波：
あんまり考えたことなかったけど、冬に多いアースカラーみたいなのは苦手かも。暖色っぽいやつ。茶色とか。

小出：
春になるとともに色が白とか桃色とか、段々と色が鮮やかになって開けていくじゃん？　あれには抗いたい？

南波：
いや、あの感じは好き。だからなにかのカウンターというわけではないんですよ。

小出：
枯れ葉色とか土色がいやなんだ。オーガニックなやつ。

南波：
どうしたって馴染む色みたいなのがイヤなの……。あのさ、この話、いらなくないかな（笑）。

小出：
いるよ。こういう流れになっちゃったからしょうがないもん。（南波の靴が目に入る）あっ……。靴……。自分で見てみてくださいよ！

南波：
あ！　イチゴ柄だわ。

小出：
めちゃめちゃ主張してるじゃん！

南波：
でも、これは自分のなかではただの白のスニーカーですよ。

小出：
たしかに白だけどさ、イチゴがでかいよ！　非常にクセのあるワンポイントが入ってるって。このワンポイントの差し方は指のワンポイントと発想が同じだよ。

南波：
うわ、たしかにそうだわ。ぐうの音も出ない。

小出：
あはは（笑）。トリッキーなワンポイントに惹かれるんだね。