Buono!が伝説と呼ばれる理由　今さら訊けない“最高で最強のロックアイドル”入門

ロック＋アイドル

Buono!は、テレビアニメ『しゅごキャラ！』シリーズのテーマソングを歌うために結成された。ロックをコンセプトとし、活動をしていく中でその人気を不動のものにしてきた。外部の作家陣による楽曲制作と、スタンディングの会場でバンドセットのライブを行なうという、ハロー！プロジェクトの中でも特異なグループでもあった。

制作はポニーキャニオンであり、これはつんく♂主導とする当時のハロー！プロジェクト体制では異例中の異例。つんく節とも言われる16ビートを感じながらしゃくるような大人びた歌唱法は封印されており、等身大の素直な少女的な歌唱法が用いられている。音楽性とサウンドにおいては、感情直結型ギタリスト、西川進によるブリティッシュロックスタイルのプロダクトによる貢献度が大きい。Led Zeppelinのオマージュをふんだんに盛り込んだ「ロッタラ ロッタラ」（2008年）は、Jアイドルポップスとブリティッシュロックの融合として、西川の数多いアレンジワークスの中でも代表曲の1つとして挙げられている。

「ロッタラ ロッタラ」（2008年）

今でこそバンドセットでライブを行なうアイドルグループも珍しくはないが、バックバンド“Dolce”を従えたライブも当時は珍しかった。しかし、Buono!楽曲の基盤は王道のガールズポップスであり、“アイドルがロックをやる”というよりも、先述の「ロッタラロッタラ」しかり、“アイドルソングをロック調にする”といった趣のほうが強い。オケを使用し、きらびやかな衣装を纏って華のある振り付けで歌う正統派アイドルモードの前半から、バンドセットによるロックモードの後半へなだれ込むワンマンライブの構成にもそれが大きく現れていた。

Buono!は、さまざまな外部作家によるバリエーションの豊かさとロックテイスト溢れる楽曲が魅力であり、クセの強いつんく曲のハロー！プロジェクト内で清涼剤のような存在でもあった。であるため、非ハロヲタ（ハロー！プロジェクトのファン）のボノヲタも少なくはなかったのである。

着実にその人気と実力を固めていたが、2010年、アニメ『しゅごキャラ！』放送終了に伴い、ポニーキャニオンとの契約が終了する。『しゅごキャラ！』ユニットとして誕生した存在意義はなくなってしまい、グループ存続が危ぶまれた。しかし、翌2011年にアップフロントの自社レーベル、zetimaから「雑草のうた」をリリース。その活動は継続されることとなった。制作はアップフロントになったが、外部作家による体制とコンセプトは引き継がれた。千奈美にポニーキャニオン時代の集大成、ベストアルバム『The Best Buono!』（2010年）は珠玉の名曲がずらりと並んでいることに加え、Rod Stewart、INXS、METALLICA……といった名だたるアーティスト作品を手掛けたオーストラリア人エンジニア、Don Bartleyがマスタリングを担当。奥行きを感じさせるワイドレンジ、細部まで行き届いた音像処理が素晴らしいアルバムに仕上がっている。こういった海外マスタリングを行なうアイドル作品も当時はまだ珍しかった。え？『The Best Buono!』って廃盤なの!?

スピード感あるロックなビートが気持ち良い主演映画『ゴメンナサイ』主題歌「DEEP MIND」（2011年）