
【コラム】神宿、“第2章”の革新と躍進 この1年で手に入れた比類なきアイドル性を紐解く
【コラム】神宿、“第2章”の革新と躍進 この1年で手に入れた比類なきアイドル性を紐解く
大人を纏った神宿の比類なきアイドル性
2019年、5周年を迎えた神宿の革新は、塩見の加入とともに変化した音楽性にこそある。「グリズリーに襲われたら♡」は、これまでグループが武器としていた元気でストレートな可愛さではなく、あざとさを全面に打ち出した楽曲だ。少女から大人への成長、清 竜人の得意とするミュージカルタッチも相まった、“大人の女性が演じる可憐な少女”である。
神宿「グリズリーに襲われたら♡」MV
また、NICO Touches the WallsからLADYBABYまで幅広いロックに定評のある浅野尚志による硬派なナンバー「全身全霊ラプソディ」は一ノ瀬みかの強さが覚醒した曲でもある。声を目の前に出すのではなく、口角を横に広げながら上顎にぶつけて頭の上から突き上げるように響かせていく、声楽のヘッドボイス的なスタイルで他を圧倒する歌唱はここに極った。鼻からスッと抜ける美しさ、声量ではなく周りの空気を震わせることが巧みな塩見きらのしなやかさとは別のベクトルであり、ジャスト且つ、時に前のめり気味で入ってくる攻めのリズムは、タメ気味にたっぷりとしたリズムの取り方をする小山ひなとのコントラストを生んでいる。これぞ、神宿ボーカルの三つ巴である。
【choreography video】全身全霊ラプソディ/神宿
そんな三つ巴のせめぎ合いを存分に堪能できるのが、「ボクハプラチナ」だ。海外におけるポップカルチャーのトレンドをしっかり抑えつつもJ-POPの情緒が溢れだす様は、最先端ポップスの急先鋒であるK-POPに対するJ-POPからの回答ともいうべきものだ。オリエンタルな旋律とラップ混じりのパート、“ラララ〜”と流れるリフレインから高らかに舞っていくサビは、“サビらしいサビ”というより“ドロップに歌がついている”という印象を受ける。間奏がなく終始歌唱パートであるのに、くどさを感じさせない聴きやすさも見事。歌、メロディ、アレンジ、どこを取ってみても寸分の隙のない盤石な強度は、柔よく剛を制すといった趣である。こんなとてつもない楽曲のあと、どんな楽曲が来るのかと思っていた矢先の「在ルモノシラズ」だった。
神宿「ボクハプラチナ」MV
音楽性の変化による歌唱力の向上であるのか、はたまた歌唱力の向上があったからこその音楽性の変化なのか、そこを見越した塩見の加入か、それとも彼女の影響力がグループの特性を変えたのか……きっかけはどうあれ、そのどれもが確実性として合致し、化学反応を起こしたのだろう。はっきりと言えるのは、塩見が加入してからの1年で神宿は大きく変わった。いろんな意味で面白くなった。強いて不満があるとするのなら「グリズリーに襲われたら♡」の塩見の台詞“タスケテ ワタシ、コワクテイッポモウゴケナイヨー”がこなれて棒読みでなくなってきたことくらいだろう。
YouTuberとしての活動も神宿を形成する大きな素養である。羽島みきの愛嬌を振りまく姿から垣間見える頼れるリーダー像、謎のハイテンションな暴走まっしぐらの羽島めい、一ノ瀬みかの表情筋芸しかり、各々の“キャラ立ち”も抜群。美容、グルメ、チャレンジ企画……といった定番ネタはもちろんのこと、打ち上げ動画に関してもアイドルのオフショットにならず、神宿流のエンタテインメントとしてきちんと成立しているところが実に面白い。神宿のファンに向けてだけではなく、きちんとYouTube視聴者層に向けて訴求力のあるものになっている。コンテンツを生みだす力はセルフプロデュース力として、比類なきアイドル性へと繋がっているのだ。
神宿はこれまでのアイドル路線を踏襲しながら、新たなフェーズに突入している。その勢いは止まることなく、5月16日、そして6月10日に更なる新曲がデジタルリリースされることが発表された。ティーザー映像を観る限り、また新しい神宿を見ることができそうだ。4月に一ノ瀬が誕生日を迎えて全員が20代となった。大人を纏った神宿からますます目が離せない。
神宿「Erasor」 ティザー映像
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