【連載】沖口優奈×作家・爪切男(前編)「僕は文章でもプロレスをやってるんだと思います」

【連載】沖口優奈×作家・爪切男(前編)「僕は文章でもプロレスをやってるんだと思います」

【連載】沖口優奈×作家・爪切男(前編)「僕は文章でもプロレスをやってるんだと思います」マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第12回:作家・爪切男(前編)

マジカル・パンチラインのリーダー沖口優奈が、さまざまなリーダーと対談して理想のリーダー像を見つけていく本企画。第12回目は、“SPA!マジパン部”を結成するほどマジカル・パンチラインを激推ししている『週刊SPA!』の犬飼編集長からの推薦により、作家の爪切男との特別対談が実現。ライター、ブロガーとして文筆業のキャリアをスタートさせ、その後メールマガジンの編集長も務めた爪氏。自身の実体験を綴ったデビュー作『死にたい夜にかぎって』が大きな話題を集め、現在、同作は賀来賢人主演による連続TVドラマが放送中である。著書の中で過去の恋愛エピソードを赤裸々に明かす人気作家と現役アイドルという異次元のトークセッションが実現した今回の「ここの責任者、出してください❤️」。その前編では、爪氏の作家人生の原点や『死にたい夜にかぎって』の誕生に、沖口が迫った。

マジカル・パンチライン 沖口優奈「ここの責任者、出してください❤️」第12回:作家・爪切男(前編)

撮影:中島たくみ

プロレスの試合内容を全部自分で考えて書いてました(爪)

沖口:
まず、爪さんが作家になろうと思ったきっかけを教えてください。

爪:
自分が何かを表現する生き方をしようって決めた時に“自分にやれそうなものって何だろう?”って、消去法で残ったのが作家でした。学校にいた時の自分を客観視してみて、クラスメイトのあいつの方がスポーツができるから自分がアスリートになるのは無理だなとか、あいつの方が歌がウマいから自分が歌手になるのは無理だなとか。そういう風な感じで候補を消していって、最後に残ったのが“書くこと”だったんですよね。その時、自分が諦めたものに自分でも納得しちゃって全然腹が立たなかったんです。

沖口:
その分野では負けたくないっていう気持ちが起きなかった?

爪:
起きなかったんですよ! 多分、“書くこと”を諦めることになっていたら、“負けたくない、諦めたくない”っていう気持ちになったはず。だから、“書くこと”をやったんだと思います。あと、親父が異常に厳しい人だったんで……。

沖口:
はい……。『死にたい夜にかぎって』を読まさせていただきました。

『死にたい夜にかぎって』著者:爪切男
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『死にたい夜にかぎって』著者:爪切男

爪:
ありがとうございます。小学校の時に親父に“お前は顔で生きていけないから、何か一芸を身につけるしかない”って言われて。それで親父にいろいろ好きなことを聞かれて、“書くこと”が1番好きだと言いました。1人でもできるし、1番やりやすかったっていうのもありますね。

沖口:
その時はどういうことを書かれていたんですか?

爪:
僕はプロレスが大好きだったので、プロレスラーの名前を書いた紙をくちゃくちゃに丸めて、それをティッシュペーパーの箱に入れて。それを順番に全部出して、並べて、広げて、架空の対戦カードを決めるんです。その試合内容を全部自分で考えて書いてました。

沖口:
頭の中でゼロから考えて?

爪:
時間を決めて、1時間以内に15試合を書くとか。この試合が終わった後に〇〇が乱入して来て、××がどういうマイクパフォーマンスして、セコンドの△△が乱入して倒されるみたいな、そういう試合の流れを細かく書いてました。

沖口:
自分の頭の中の妄想みたいなものを書いてたんですね!

爪:
とにかくプロレスが好きで、小学校5年生ぐらいでプロレスのファンタジーがわかっていましたね(笑)。

沖口:
早い!(笑)

爪:
プロレスには八百長とかやらせとか言われちゃうきな臭い部分も確かにあるわけですよ。でも、それでもプロレスを観に来るお客さんで、東京ドームや日本武道館が満員になってるわけです。僕はそこにこの世の救いを感じたんです。勝ち負けも重要だけど、そこに至るまでの過程だって大切。1番大事なことは観ている人を楽しませること。プロレスが勝敗を超えたエンタテインメントスポーツだとわかってから、僕はますますプロレスの虜になって、“僕も自分なりにプロレスの世界を表現してみたい!”と思うようになりました。

沖口:
なるほど! そういう思考からプロレスを書くようになったんですね。

爪:
しかも、試合内容を書くだけじゃなくて、古舘さん(古舘伊知郎)みたいに実況してカセットテープに録音していました(笑)。多分、まだ家に200〜300本あると思いますよ。

沖口:
すごい! 自分で試合内容を書いて、それを実況して。

爪:
実況してみて、ちょっと違うなって思ったら、また書き直してとかもやってましたね。誰にも見せたり聞かせたりしないで、全部1人でやっていました。そういうコツコツ作業が作家としての基礎になってると思いますね。

沖口:
スポーツって、普通台本がないのに、大逆転があったりして、みんなそこに感動するじゃないですか。でも、プロレスって、最終的にはヒール役はやられて、ヒーローが勝つっていうシナリオがあるにも関わらず、あんなに多くの人が熱狂できるのがすごいですよね!

爪:
だからこそ、ほかのスポーツよりも(選手同士の)信頼を感じました。ちゃんとベビーフェイスの人がカッコよく輝いてくれるから、ヒール役の人もしっかり悪者ができる。だって、技を受ける時も、相手を信頼していなかったら、“頭から垂直に投げ落とすよ”って言われても、安心できないじゃないですか(笑)。その信頼感を含めて、プロレスが1番人間らしくて好きなんです。だから、僕は文章でもプロレスをやってるんだと思いますね。

沖口:
なるほど。

爪:
小説のヒロインであるアスカとも本当はもっと過激なやりとりをしていたんですよ。殴り合いの喧嘩だって山ほどしてたけど、プロレスと一緒でただの殴り合いをお客さんに見せるのってよくないじゃないですか。全部をありのまま見せると引いちゃうので。笑える話にするために事実に少し手を加えたりしていますが、そこはプロレスから学んだエンタテインメントですね。

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