わーすた 、こぶしファクトリー、豆柴の大群、CYNHN、アンスリューム……ロックスピリッツを感じた新曲｜「偶像音楽 斯斯然然」第25回

こぶしファクトリー「スタートライン」　力強い“有終の美”

2020年3月30日を以って解散するこぶしファクトリー、3月4日リリースのラストシングル。もう一方の曲「青春の花」とは打って変わってストレートなロックナンバーが、この「スタートライン」。シンプルながらも強いメロディと潔いバンドアレンジは、原宿ホコ天でラバーソウル履いてジャンプしていた80’sバンドブームのパンクロックを想起させる“俺たちいつでもロックバカ”世代が心躍る曲調。それでいて、低めにチューニングされた図太いスネアが打ち鳴らされる暴れ気味のドラムが、今どきのロックが持つ疾走感を掻き立てていく。ラスサビ前にズドンとキマるフィルインはこの上なく気持ちよく、楽曲の大きなフックとなっている。

しかしながら、こういう赤条々のロックナンバーをアイドルが歌うと、ただノリ良いだけの一本調子になってしまうことも多いのだが、かなり聴き応えのある完成度に仕上がっているのはさすが。まさにハロー！プロジェクトきっての声量とテクニックを持つ彼女たちだからこその妙味。音程をただなぞるだけでは到達できない“歌”がここにある。

それにしても、ベリヲタ（Berryz工房のヲタク）の自分がこれを聴いて咄嗟に思い浮かんだのは、やっぱりBerryz工房のラストシングル「永久の歌」。Berryz工房の意志を受け継ぐ形で誕生したこぶしファクトリーが、Berryz工房のラストを彷彿とさせる強い想いが込められた楽曲で終わるのはなんとも感慨深い。うん、Berryz工房のラストライブも3月だったな（2015年3月3日）。

アイドルと歌の素晴らしさを教えてくれた　Berryz工房「永久の歌」（2015年）

などと思っていたら、知人が“間奏のギターソロからの流れは°C-uteのラストシングル「ファイナルスコール」のオマージュなんじゃね？”と。おお、言われてみれば確かにそうかもしれない。

SHOCK EYE（湘南乃風）作詞作曲　℃-ute「ファイナルスコール」（2017年）

そうしたハロー！プロジェクトの“イズム”がふんだんにちりばめられた渾身の楽曲を力強く歌うこぶしファクトリー。キメの歌詞、“You should be so HAPPY!”は、“有終の美 そう、HAPPY!”ということか！　楽曲を手掛けた星部ショウ、いろいろニクイな……。