わーすた 、こぶしファクトリー、豆柴の大群、CYNHN、アンスリューム……ロックスピリッツを感じた新曲｜「偶像音楽 斯斯然然」第25回

CYNHN「水生」　麗しき“青い未完”

6人から5人となった新体制となったCYNHN（スウィーニー）、3月18日リリースのニューシングル。ギターのディレイが鳴るイントロだけでただならぬ曲であることを予感させる。クセのあるスラップベースと躍動感溢れるリズム、小刻みに揺らいでいくギターといい、変則的に緩急をつけていくバンドアンサンブルのアレンジは、楽器隊だけのインストゥルメンタルでも成立しそうなほどの“弾きすぎている”ポストロック風味。にも関わらず、歌は滑らかに際立っていて、邪魔をしていないという見事な構築美。歌メロディとバンドアンサンブルが別々の旋律として存在しながらも、時に寄り添い、絡み合って、そして離れていく……、そんな交錯していく様がとても美しい曲。

ロシア語で“青色”を表す“CYNHN”と“青い未完”、グループを象徴するワードがここまでハマる楽曲のすご味。メロディの音の使い方と符割り、そこに対する歌の聴かせ方が独特でたゆたいながらの浮遊感が素晴らしい。水中でもがき苦しんでいるような重々しい歌詞なれど、“もう君は行ってしまったのに 綺麗だった”といった詞（ことば）の置き方もなんとも綺麗で、作詞作曲を手掛ける渡辺翔の才能に嫉妬すら感じるほどのクオリティ。

“ヴォーカルユニット”と自ら称えるに相応しい美麗な歌声。崎乃奏音のスッと抜ける麗らかさ、綾瀬志希のブレスから発音までの俊敏なタイム感、眩くて儚さを感じる月雲ねる、しなやかで艶やかな百瀬怜、優しくおおらかな青柳透が折り重なるユニゾンで、この上ない恍惚感が訪れるのである。