アニメ『推し武道』から考える“推し”の概念と、インフルエンサーが生み出す新時代アイドル像｜「偶像音楽 斯斯然然」第24回

「♡桃色片想い♡」18年越しの再評価

さて、話は『推し武道』に戻るのだが、放送前から話題になっていたのがエンディングテーマ、えりぴよ（CV：ファイルーズあい）の歌う「♡桃色片想い♡」だ。言わずと知れた、松浦亜弥の代表曲のカバー。ベリヲタの自分からすると、“雅が行くよっ！”でお馴染みのBerryz工房・夏焼雅の名演と、ももち（嗣永桃子）の名カバーの印象も強いのだが、つんく♂のメロディと詞に高橋諭一のアレンジという、ハロー！プロジェクトの超王道コンビによる名曲が、リリースから18年の時を経てハロー！以外のところでカバーされるという胸熱かつ斬新な試み。つんく♂節もハロー！独特のサウンドアレンジもない「♡桃色片想い♡」は、純粋に浮き彫りになったメロディと詞から、その楽曲の強さを改めて世間に知らしめた。

TVアニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』ノンクレジットエンディング ♡桃色片想い♡／えりぴよ（CV：ファイルーズあい）

そうだ、話は若干逸れるのだが、『推し武道』の原作者・平尾アウリによると、ChamJamの最年長でリーダー、人気ナンバーワンの“無自覚美少女（空音談）”、五十嵐れおの外見のモデルとなっているのは、“ゆうかりん”こと、元スマイレージの前田憂佳であるということを改めて記しておきたい。

そうした「♡桃色片想い♡」の再評価から松浦亜弥の再評価、さらにTwitterでは「#実力派ソロアイドル待望論」というハッシュタグまでも散見した。現在、アイドルといえばグループを指すことがほとんどであり、ソロで活動するアイドルは少ない。それは先述の“推し”文化の定着もあるだろう。逆に、ソロであれば声優歌手の活躍の方が目立つ。いわゆる古くからある往年のソロアイドルスタイルを求めるファンは自ずと声優側の方に行っているのかもしれない。声優というとアニメファンを連想することもあるわけだが、声優によるアーティスト活動が盛んな昨今では、一概にそういうわけでもなかったりする。

安心感と懐かしさもあるアイドル像。ハロヲタにはどこか見慣れた構図、Dance Shotのただひたすら前後するだけの定点カメラワーク……と思ったら、彼女の所属事務所はアップフロントに所縁のあるジャストプロ、ということで妙に納得した　小倉 唯「I・LOVE・YOU!!」。

傍から見れば、アイドルも声優も、似たようなファン層に思えるかもしれないが、実際はまるっきり違うし、両ファンの被りや重なりはほぼない。