エビ中と夢アド、さまざまなアーティストから楽曲提供を受けるアイドルの到達点｜「偶像音楽 斯斯然然」第22回

夢みるアドレセンス　カースト最上位のエリート集団

ティーン誌のファッションモデルを中心に結成されたエリート集団であり、“カワイイだけじゃダメなんですか!?”というキャッチコピーが決して大袈裟にならないビジュアルの強さで鳴り物入り。加えて、真心ブラザースの名曲をクラムボンのミトが再構築した「サマーヌード・アドレセンス」（2015年）、スクールカースト最上位女子の品格を振りかざしながらシーンに殴り込みをかけたOKAMOTO’S＋アゲハスプリングスの「舞いジェネ！」（2016年）、アイドル史に残る“沸き曲”もとい、キラーチューン、首藤義勝（KEYTALK）による「ファンタスティックパレード」（2016年）など、その作曲制作陣とともに強度の高い楽曲がズラリ。

夢みるアドレセンス「舞いジェネ！」

夢アドが楽曲提供を受けるアイドルとしての完成型の1つだと思うのは、広告代理店と大手メジャーレコード会社による潤沢な宣伝費と制作費でしっかりと質の高いものを作るという、芸能エンタテインメント要素の強いアイドルだということである。それは音楽性や歌と同等にビジュアルや見せ方を含めた総合芸術でもあるアイドルにとって重要なことであり、かつきちんと当時のメンバー5人のキャラクター性に重きを置いたグループのイメージ作りができていたことが何よりも夢アドの強さだった。志磨遼平（ドレスコーズ）の「おしえてシュレディンガー」、MINMIの「リーダーシップ」などは、楽曲はもちろん、衣装、MV……そうした総合芸術としての作品性が徹底されているわけだが、そもそも夢アドメンバーのビジュアルなくては生まれなかったものだとも思える。

夢みるアドレセンス「おしえてシュレディンガー」

夢みるアドレセンス「リーダーシップ」

肝心なスキル面を見れば、作家性の強い楽曲を高い歌唱力と柔軟な感性で昇華させていく、というより、楽曲以上の強い個性でねじ伏せていくようなパワーを感じる。荻野可鈴による天性の少女キャラボイスと、志田友美の一切の迷いのない真っ直ぐで太い歌声は、どのトラックであってもグッと前に出てくるし、たとえどんな楽曲であろうとも自分のものにしてしまうという押しの強さが感じられる。そこに空気を読まずに入ってくる山田朱莉の素っ頓狂なギャル具合いもいい味を出していたわけで。それこそ「ファンタスティックパレード」は、どこをどう切ってもKEYTALKの曲なのだが、誰がどう聴いても夢アドの曲にしか聴こえないという強さ、この無敵感は尋常ではない。

夢みるアドレセンス「ファンタスティックパレード」