モー娘。、エビ中、EMPiRE、神宿に我儘ラキア「今いちばんロックしてるのはEDMとヒップホップ」｜「偶像音楽 斯斯然然」第19回

圧巻の歌の強さ

耳にした瞬間、心と全身が震えた私立恵比寿中学「ジャンプ」はEDMではないのだが、それっぽいサウンドと手法を織り交ぜながら、崇高な雰囲気を醸し出している楽曲だ。

音程感のない字余りフレーズを吐き捨てるように歌って様になるアイドルはそう居ない。私立恵比寿中学「ジャンプ」

アコースティックギターの乾いたストロークと湿り気のあるシンセの混ざり具合いが絶妙で、大地を踏み鳴らしていくストンプなリズムが人力ビルドアップの波を生み出し、サビの圧倒的な強度を作り上げていく様に息を呑む。もうこれは、ブリティッシュ〜アイリッシュのインディーフォークバンド、Mumford & SonsやOf Monsters and Menを聴いている感覚とまったく同じである。それにしても、石崎ひゅーい作曲のクセのある力強いメロディを完全に自分たちのものにしてる彼女たちの“歌の強さ”は圧巻。“いろんなアーティストから楽曲提供を受けているエビ中”ではなく、“いろんなアーティストがエビ中に楽曲提供している”ところにまで達した感のある彼女たち。12月18日リリースのニューアルバム『playlist』が楽しみで仕方ない。

もう1つ、EDM寄りのエレポップトレンドをウマくJ-POPに昇華した曲が、神宿の来年1月15日リリースのベストアルバムからの新曲「ボクハプラチナ」だ。これまでのグループイメージを良い意味で覆す、大人の雰囲気たっぷりの曲。

2’45”からラストサビへの流れは何度聴いても美しい。神宿「ボクハプラチナ」

オリエンタルな旋律とラップ混じりのパート、“ラララ〜”と流れるリフレインから高らかに舞うようなサビは、“サビらしいサビ”というより“ドロップに歌がついている”という印象を受ける。美麗にまとめ上げたアレンジゆえにスッと耳に入ってくるが、間奏がなく終始歌唱パートであるのにこの抑揚と聴きやすさは見事。一ノ瀬みかの凛とした強さと塩見きらのクールな表情を持った歌声、小山ひなのタメたブレスも魅力的で、“こんな声も出せるのか……”と、神宿のヴォーカル力の高さを知らしめる1曲である。