渡辺淳之介＆岩淵弘樹監督［インタビュー］アイドルの悲劇の正体「1番自覚しなきゃいけないのは、自分が何者でもないってこと」

ポスト

9人の話し合いを映画で初めて観て衝撃的でした（渡辺）

――劇中のBiSメンバー9人と渡辺さんが話し合うシーンでは、渡辺さんも感情が入っているように見えました。僕自身は、あの瞬間、渡辺さんは悔しかったのかなと。

渡辺：
悔しかったですね。話し合いを重ねてきて最終的にはわかってくれると思ってたし、合宿でも1週間話し続けたことを、何1つじゃないのかもしれないけど、理解してもらえなくて。合宿に参加したBiSメンバーには、“今は確かにBiS脱退がかかる状況だけど、お前らも合宿を経てBiSに入ってきて、当時先輩メンバーたちは自分たちのことしか考えてないってことはなかったでしょ？　だから、BiSのことだけじゃなくて、オーディション参加者のことを考えてあげて、彼女たちにやっぱりBiSっていいグループなんだ、BiSに入りたいなって思ってもらえることの方が大事でしょ”って言ったのに、最終PRで“BiSを解散させない！”とか言い出して、“ええええ!?　嘘だろ”みたいな（笑）。あそこで、心が折れましたね。やっぱりまわりの人たちも、自分のことだけを考えている子のために何かをしようとは思わないじゃないですか。彼女たちはそこを履き違えたと言うか。映画には映ってないんですが、彼女たちから“これから問題をなんとかする”って言われたことがあって、“その「これから」っていつだよ？”って思って。逆に、僕が半年間ライブのブッキングを入れなかったり、CDを出さなかったりして、メンバーに“どうなっているんですか？”って問い詰められて、“これからなんとかするから”って答えたら、僕がブチ切れられると思うんですよ。そういうことに気づいてないって言うか、残念でしたね。彼女たちはなにかしらのアクションができたはずだったけど、どうして一致団結してそれができなかったのかなって……。男性目線からしても、女性が9人集まった時に、裏でほかのメンバーの悪口を言ったりとか、どうしても気が合わないヤツがいるのはわかるんですよ。それにしても、お前ら、表向きでも話が一致してないじゃんみたいな。（編集部の女性スタッフに向けて）女性的に見て、どう思いましたか？

女性編集部員：
女性の目線からしても違和感はありましたね。

渡辺：
意味わかんないですよね（笑）。よかった、女性目線だと違うのかなって思っていたんですよ。映画を観ていたらわかると思うんですけど、絶対あいつら、今の9人でやりたいって思っていないじゃないですか。メンバーだけで話し合っていても、“この話、早く終わらせようぜ”みたいな空気で。“この９人で続けるために、渡辺さんを説き伏せよう”みたいな話をすると思っていたんですけど、僕も9人の話し合いを映画で初めて観て、“嘘だろ”って思いました。“私たち好かれてなくない？”とか言ってて、けっこう衝撃的でしたね。

――そういうこともあって、今回のタイトルは『IDOL-あゝ無情-』になったのでは？

渡辺：
いや、ホントに無情だなって（笑）。ウチの事務所の中でもグングン上がっていくグループは、メンバーそれぞれが個人よりもグループの方を大事にしているんです。第1期BiSの時は、僕もそうでしたけど、BiSのためなら死んでもいいと思ってたヤツらがいっぱいいたんですよ。例えばプー・ルイなんかはBiSのために死んでもいいって思ってなかったら脱いでなかったと思うし。そういう話を、第2期BiSメンバーにはめっちゃしました。僕、思うんですけど、やっぱりお客さんにもバレてたんだと思うんですよ、メンバーがBiSのことを好きじゃないことが。

岩淵：
渡辺さんが、合宿中に女の子たちに向けて“楽しくないでしょ？”って言ってたのが印象的でしたよね。そういうところはお客さんにも伝わるし、キーワードになるのかなと。

渡辺：
と思いますね。裏を返せば、楽しくないなら、そんなことに人生の時間を使っている暇なんてないじゃないですか。それこそ辞めたいのなら、すぐに辞めた方がいいのにっていう想いは正直ありますね。