第9回：マテリアルクラブと原田珠々華（少々）〜小出祐介&南波一海「小出は明日、昨日の南波と連載する」〜

南波：
トラックメイクとかでも、このサンプルとこのサンプルは音楽的にぶつかってるじゃんっていうのが気になる人もいて。

小出：
やりたくても、一生そういうトラック作れないよね。“ぶつかってる”と感じちゃうから。

南波：
綺麗に整ってしまってゴリゴリした面白さが生まれなかったりする、みたいなことですよね。

小出：
まさにそう。聴いてみる？　ラップやってるやつ。

南波：
お、聴きたい！　もうアイドルソングじゃない週があってもいいでしょ（笑）。

小出：
これが載る頃には先行配信されてるはず。

【マテリアルクラブ「Nicogoly」】

南波：
めちゃめちゃマジでラップしてる！　そしてこの連載で話しているようなことが盛り込まれている！

小出：
“音楽のコスプレ”とか、上坂すみれさんの回で出てきたワードも出てくる（笑）。あっこにはラッパーの彼女のつもりで歌ってもらってる（笑）。歌ったら歌ったで、あっこはすごく器用なんですよね。

南波：
いやこれは驚きの展開だ……。単純に創作意欲がすごい。ここへきてラップをやろうというのが。

小出：
でも、それは自分の中にもともと入ってたものだから。その出しどころがなかったというだけで。むしろ、この曲はすんなりできた方かも。意外とリリック書くのもそこまで苦労しなかったし。

南波：
文字数で言ったら普段の何倍よっていうレベルですよね。

小出：
うん。文字数多っ！みたいな（笑）。でもラップのリリック的な書き方になると日頃の制限が外れるからさ、なに書いてもいいやの気持ちになるので。

南波：
ラップって言葉数が多いし、それこそフロウが大事だから1つひとつの言葉が刺さらなくてもいいっていう側面もあって。

小出：
リズムでも持っていけちゃうしね。あと、韻が偶然もたらす道筋が発生したりもする。それは普通に歌詞を書いていたらなかなか起きないことだから。この韻からこう進むと意味ない言葉でも意味あるふうに聞こえるとかもあって、それで繋げていくこともできる。

南波：
歌だと余計なこと言っちゃった感が出たりすることも、ラップだと言葉遊びとして成立させやすかったりするんですよね。

小出：
うん。しっかり考えてみて、やっぱラップってすごい面白いなって思った。しかし今回マテリアルクラブをやったことで、自分がヘンな歌手になったなって思うよ（笑）。普通にロックバンドやってて、こんなちゃんとラップのリリック書く人ってたぶんいないだろうから。

南波：
ですね。

小出：
宇多（宇多丸）さんとDさんに褒められたので、オアシスで言ったら、ポール・マッカトニーとジョン・レノンにノエルとリアムが褒められるみたいなものだから、もう誰になに言われようと平気です（笑）。

南波：
あはは（笑）。でも本当にフォーマット借りました感はまったくないですね。

小出：
うん、自分なりに消化できた気はする。もしフォーマット借りるなら、いまだったら絶対トラップやるもん。

南波：
三連のラップでね。

小出：
そうそう。いま、ここまで固く韻踏む人あんまりいないでしょ（笑）。

南波：
韻がマジで固い。

小出：
自分の好きなラップというのは、これだけ固い韻なんだよね。そういうところに自分なりにアクセスできたかなと思う。だから……総じてヘンですよ。