NANIMONO[ライブレポート]“魔法が解けた”その先で見つけた希望――新たな物語の始まりのステージ「今という時間を、今日という日を、この一瞬一瞬を、全力でNANIMONOと一緒に生きてくれたら嬉しい」

NANIMONO[ライブレポート]“魔法が解けた”その先で見つけた希望――新たな物語の始まりのステージ「今という時間を、今日という日を、この一瞬一瞬を、全力でNANIMONOと一緒に生きてくれたら嬉しい」

NANIMONO[ライブレポート]“魔法が解けた”その先で見つけた希望――新たな物語の始まりのステージ「今という時間を、今日という日を、この一瞬一瞬を、全力でNANIMONOと一緒に生きてくれたら嬉しい」

NANIMONOが、12月13日(金)に豊洲PITにて<NANIMONO 2nd ALBUM RELEASE TOUR『魔法少女になれなかった』>ツアーファイナル公演を開催した。

10月16日(水)にリリースした2ndフルアルバム『INTERNET MAGICAL GIRL』を引っ提げて、11月2日(土)の青森Quarterからスタートした同ツアーは全国で11公演を実施。

この日の直前にはピンク色担当・47774の脱退が発表されたが、メンバーは強い決意と、ツアーを通じて磨き上げたパフォーマンスを、ソールドアウトとなった会場に向けて全力で届けた。

本記事では、NANIMONOが輝く未来に向けて新たな一歩を踏み出した同公演の模様をお伝えする。

<NANIMONO 2nd ALBUM RELEASE TOUR『魔法少女になれなかった』>豊洲PIT(2024年12月13日)

撮影:田中健児

“インキャはインキャらしく、殻に閉じこもっていればよいのだ!”

会場に轟く邪悪な声。つらい気持ちが大好物な“つらたん”との死闘をくり広げてきたNANIMONO。全国ツアーを経て、つらたんに敗れてしまった彼女たちはインターネットダークサイドの住人として……。

“そうだ、何者かになんてなれなくたっていいんだ——。”

唐突に始まった「未確認生物」。フードを深く被り、表情の見えない6人が歌い踊る。陰を纏いながらもキレのよい動きと真っ直ぐに突き刺さる遊乃ヲユタの歌声が、満員の豊洲PITの虚空を突いた。

11月2日 青森Quarterからスタートした<NANIMONO 2nd ALBUM RELEASE TOUR『魔法少女になれなかった』>が12月13日 豊洲PITでファイナルを迎えた。チケットはソールドアウト。会場を埋め尽くしたTAKARAMONO(NANIMONOのファンの総称)が見守る中、ライブは始まった。しかし、そこに本来戻ってくるはずだったピンク色担当、47774の姿はない。この10日前の12月3日、774の脱退が告知されたからである。6人はどのような気持ちでこのステージに臨んだのだろう……。

けたたましいビートが疼くSEに乗ったお馴染みのキャッチフレーズに合わせ、新衣装で1人ひとり登場するメンバー。ライトセイバーを手にした6人は精悍な顔つきで客席を見つめる。インターネットダークサイドというテーマはもちろんのこと、数々の対バンイベントで出演してきた想い入れ深い豊洲PITでのワンマンへの意気込み、そして志半ばで袂を分かつことになった774へ、それと同時に6人として歩むこれからの決意……さまざまな想いが彼女たちをそうした表情にさせたのだろう。

メンバーが振り回すライトセイバーの動きに合わせて、フロアから“7色”のペンライトが揺れる。

“今日は待ちに待ったツアーファイナルー! 魔法少女になれなかったけど、NANIMONOはインキャのままで今日来てくれたみんなのこと楽しませちゃうよ”

輪廻ねるが陽気に声を上げる。「INTERNET MAGICAL GIRL」へ。《幼い頃憧れた夢を叶えてくれる少女 画面の中映るのはウソツキのボクだ》の一節、今年6月にTOKYO DOME CITY HALLにて行われたワンマンライブ<NANIMONO 2nd ANNIVERSARY ONEMAN『インキャが世界を救う★ ~なにものといっしょ~』>で聴いた時とはかなり印象が異なっていた。《魔法少女になれなかった 君のヒーローになれなかった》のフレーズを何度も歌う彼女たちは、次なる希望を見出し、我々をそこへ導いてくれる、そんな気さえしてくる力強い歌になっていた。

ステージのバックスクリーンと無数の照明が創り出した水の中をたゆたうように6人のシルエットが揺らぐ「JELLY FISH」。“どんなにダメなキミでも嫌いになんてなれないよ……”と、紫苑りんかの刹那げな台詞で始まった「WHITE MUSK」。弾むようなメロディに優しくもメランコリックな歌声が重なる。先ほどまでの鋭さとは打って変わり、柔らかい存在感のあるヲユタの声と、透き通るような柊真ミフユの美麗な声がファルセットを交えながら、どこまでも遠くどこまでも天高く、眩い光を放ちながら輝いていった。

“インキャがインキャらしく生きるために戦う、インターネットダークサイドから来た、私たち……NANIMONOーッ!!”

眠岸ぷりんがソールドアウトしたことに感謝すると、成田あやのデザインによるマザーボード柄の新衣装の話題へ。ポンチョについたフードを被ると他人の目を見なくて済む、というインキャ仕様になっている大事なこだわりをしっかりとアピール。リーダー、ひなたゆまが全国ツアーでつらたんと戦ってきたこと、そして負けてしまったことを改めて報告。“キラキラしたものに憧れていたけど、根がインキャだから変われなかった”と反省しながらも、楽しかったツアーを振り返った。NANIMONOの活動を通し、“つらい気持ちを吐き出してもいいんだ”と気づいたねるは、改めて自分の居場所がNANIMONOであると確信したと口にし、インキャのために優しい世界を作ると宣言した。

“TAKARAMONOのみんな、NANIMONOと一緒に優しい世界、作ってくれますかー?”、りんかの声に応えて会場から大きな歓声が上がると、ぷりんがさらに煽る。“えー、でもでも、まだなんかが足りないんだよなぁ〜。みんなが一緒に踊ってくれたら、このモヤモヤも晴れるかも?” 始まったのは「404」。ノリのよいリズムに合わせてひたすら《足りない足りない》の狂喜乱舞をくり広げたあとは、スマホ撮影OKの「顔面コンプ期」へ、豊洲PITをネガティヴながらもハイテンションのNANIMONOワールドに染め上げる。TAKARAMONOは、センターの花道へ躍り出る6人を迎えるようにNANIMONO楽曲唯一の“ガチ恋口上”を叫ぶ。そんな様相をご満悦に眺める6人は、息つく暇なく「インキャのキャキャキャ」をドロップ。リズミカルにカオティックにインキャの優しい世界を作り上げていくと、CO2バズーカを勢いよく客席に向けて噴射した。

勘のいいTAKARAMONOが気づいていたように、アルバム『INTERNET MAGICAL GIRL』の曲順通りのセットリストでライブは進んでいく。ステージ上はバックスクリーンのみという、TDCホールでの<インキャが世界を救う★ ~なにものといっしょ~>に比べるとシンプルなステージセットと演出であるが、その分、NANIMONO6人の表現者としてのパフォーマンスが際立ち、ライブをシンプルに魅せるには充分だ。シンプルながらも無数の照明が彼女たちの優しい世界を彩り豊かに照らしていく

“インキャでもアイドルになれる”という、誰も想像できなかったことを現実のものにした彼女たち。そのアンセムというべき「死ぬまで眠りたい」で大暴れしていく。そして、“今日は私たちのためにこーんなにたくさん集まってくれて本当にありがとう。この豊洲PIT中の尊い気持ち、《おうふ おうふ》に乗せて聞かせてね”と、ぷりんの言葉から送られた「オタ恋」へ。美しいメロディに乗った、どうしようもないヲタクの抑え切れない気持ちは6人の歌声とともに《おうふ おうふ》という声となって会場に響き渡った。

「どーぱみん!」で始まったラストスパート。ボルテージ全開の6人のパフォーマンスに全身全霊のコールで応えていくTAKARAMONOの熱が頂点に達した。

“魔法少女になれなくても、私たちは私たちのやり方で、夢に向かってまたここから走っていきます。夢は諦めなかったら叶うんだよ。みんなに今までかけた魔法が解けちゃわないようにここからもう1度、キラキラの夢、見に行こうね”

ゆまの言葉からラストに届けられた、この日2回目の「INTERNET MAGICAL GIRL」。再び連呼される《魔法少女になれなかった》のフレーズ。それは悲観ではなく、さらなる希望であり決意だろう。

《「優しい世界になあれ」》

優しくも強い願いを掲げて、6人はステージを降りた。

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