MAD MEDiCiNE[ライブレポート]メルヘンとメンヘラが錯綜するダークファンタジーで包み込んだ“Merry BAD END”の世界
MAD MEDiCiNE[ライブレポート]メルヘンとメンヘラが錯綜するダークファンタジーで包み込んだ“Merry BAD END”の世界
MAD MEDiCiNEが、8月31日(土)に下北沢シャングリラにて<Digital Mini Album「いちばん幸せな死に方。」東名阪Release Oneman Tour『Merry BAD END』>を開催した。
同公演は、東名阪で実施されたデジタルミニアルバム『いちばん幸せな死に方。』リリースツアーのファイナル公演。台風10号の影響により、中止の可能性もあった中、その逆境を吹き飛ばすように5人は躍動感あふれるステージを展開し、観客を圧倒。その実力の高さを見事に見せつけた。
本記事では、メンバーが圧巻のパフォーマンスで魅せた同公演の模様をお伝えする。
MAD MEDiCiNE<Digital Mini Album「いちばん幸せな死に方。」東名阪Release Oneman Tour『Merry BAD END』>下北沢シャングリラ(2024年8月31日)
取材&文:冬将軍
撮影:ミヤタショウタ
メルヘンでメランコリックなSEとともに、憑宮ルチアが優雅な佇まいとともに現れ、ありすりあが不適な表情でステージに登場する——。
MAD MEDiCiNEが8月31日(土)、下北沢シャングリラにて、デジタルミニアルバム『いちばん幸せな死に方。』を引っ提げた東名阪リリースツアー<Merry BAD END>のファイナルとなる東京公演を迎えた。台風10号の影響により、当日ギリギリまで開催が危ぶまれたが予定通り行なわれ、大盛況に終わった。
ダークな世界観を演出してきたMAD MEDiCiNE(以下、マドメド)が“Märchen(メルヘン)”をテーマにしたアルバムを制作すると耳にした時、どういうものになるのか想像ができなかった。しかし、聴いてみればそれは杞憂に過ぎず、非現実的世界という共通項のもと、メルヘンを見事なまでにマドメドらしいダークネスで昇華したものであった。そして、その不気味な魅力を放つ楽曲群は、メンバーの確固たる自信とスキルによって、さらに強力な輝きを放つものとなっていった。そんなツアーであった。
“ご一緒に!”
最後にステージに登場した途端、会場の空気と熱を一気に掌握した魔王・那月邪夢が高らかに声を上げ、メルヘンとメンヘラが錯綜するマドメドワールドへと引き摺り込む。
「アリス心中」でライブはスタートした。オーディエンスの眼前にはMVと同じ世界が拡がっている。ステージ上に、十字架、縄で釣られたぬいぐるみ、中央には赤と白の花が活けられた花瓶が置かれている。
猛り狂いながら打ち鳴らされるバスドラム、禍々しいサウンドに転がっていくメロディと突如挟み込まれる《ふわふわりん〜》のフレーズが虚を舞ったかと思いきや、刹那フレーズがオーディエンスの耳を強襲する。ジェットコースターのように展開していく楽曲を自在に操る5人に、フロアの皆が翻弄されていく。
“さぁ、やってきました<Merry BAD END>ツアー、東京! 盛り上がっていこうかぁ!”
邪夢が声を上げると「狂躁シェイプシフター」に傾れ込んだ。《咲いて》と《狂躁》の扇動によって沸き上がるオーディエンス。そんな混沌とした情景からさらなる深淵へ叩き込むよう、そのまま「東京ブラックアウト」へ。耳にべっとりとまとわりつくような唯一むにの歌声がフロアを襲い、Q酸素の野太いボーカルが制圧する。さらに5人は「黒猫のダンス」を畳み掛け、観る者に隙を与えずに攻め立てる。その様相はまるでロックバンドのようであり、グループとしての勢いを感じる圧巻のスタートダッシュだ。
自己紹介を終えたあとの「愛執迷宮ドールハウス」。哀愁感あるメロディを5人は丁寧に紡いでいく。無機的な世界観を持った楽曲に“生きた”のライブ感が吹き込まれる。ルチアからむにへと流れていく訥々としながらも息吹を感じる落ちサビはまさにそれだった。そして、アウトロでのグロッケンシュピールの美しい音色の余韻を破壊するよう、ノイジーなリズムがけたたましく響いた。人形は人肉へと変わりゆく……。
「人肉アントルメ」の殺伐としたリズム、小刻みなカッティングギターとスラップベースがひしめき合う、腹の底から舌の先まで響く激音を受けながら、むにがクラップでオーディエンスを制していく。先の「東京ブラックアウト」といい、どこか邪悪な雰囲気を纏い複雑なリズムを持った楽曲は、歌唱も表現も難易度は高く、新作におけるマドメドの新境地というべきもの。複雑なリズムと、そこに絡みついたメロディを巧みに操る5人のボーカリゼーションが、その実力の高さを知らしめる。邪夢のウェットな声とむにのドライな声のコントラスト、2人の間を酸素のボーカルが抜けていく。さらには飄々としたりあが、どこか少女の潤いを感じるルチアが、楽曲のフックとなりライブを差配していくのである。
続く「レゾンデートル」は、“デジタル×ゴシック”を掲げたマドメド楽曲の中でバンドサウンドが際立つ楽曲。マドメドの根底にあるV-ROCKイズムが5人の魂を震え立たせる。そのボルテージはさらなる昂揚を見せながら「ヒステリックトリック」へ。“メンヘラ口上”で盛り上がる会場の熱気は青天井だ。
“前のツアーより一体感があった”とツアーを振り返ったりあ。その手応えを感じながらのラストスパートが始まった。「ira=elide」、「らぶぎみ」、「ときめきオーバードーズ」とアッパーなナンバーで一気に駆け抜ける。デジタルビートと5人の歌声が織りなすマドメドの真骨頂。その爆発したエネルギーを冷やすように響いたピアノの音色に乗せ、邪夢がそっと歌い出した。美麗なファルセットが天高く突き抜ける。ラストに贈られたのは「この身体の傷跡は、来世でも巡り逢うための目印。」だ。儚くも強さを感じるハイトーンのメロディをしっかりと5人が繋いでいった。自分たちの居場所であるステージと、そこから見える景色を確かめるように。
アンコールは「眠罪」。暴発するようなビートと躍動感が迸る5人のパフォーマンス、そして強靭な歌声が会場を揺らしてフィナーレを迎えた。マドメドが持つハイスキルと観客を圧倒していくライブ運び、そして何よりも余裕と貫禄で魅せつけたライブだった。
無事に開催はできたものの、台風の影響による新幹線をはじめとした交通機関の麻痺を受け、追加公演が行なわれる。10月19日(土)、渋谷WOMBLIVE<東名阪Release Oneman Tour『Merry BAD END』追加公演編>。
MAD MEDiCiNEの“メルヘン”ワールドはまだ続く。
MAD MEDiCiNE<Digital Mini Album「いちばん幸せな死に方。」東名阪Release Oneman Tour『Merry BAD END』>
2024年8月31日(土)
下北沢シャングリラ
1.アリス心中
2.狂躁シェイプシフター
3.東京ブラックアウト
4.黒猫のダンス
5.愛執迷宮ドールハウス
6.人肉アントルメ
7.レゾンデートル
8.ヒステリクトリック
9.ira=elide
10.らぶぎみ
11.ときめきオーバードーズ
12.この身体の傷跡は、来世でも巡り逢うための目印。
〜アンコール〜
En1.眠罪
【インフォメーション】
<Digital Mini Album「いちばん幸せな死に方。」東名阪Release Oneman Tour『Merry BAD END』追加公演編>
日時:2024年10月19日(土)OPEN 15:45/START 16:45
会場:渋谷WOMBLIVE
チケット:優先¥6,000/一般¥2,000/女性¥1,000
※8月31日 東京編の未入場チケットをお持ちの方は無料でご入場できます。