2024年“今、会いにいけるアイドル”と“SNSネイティヴ世代アイドル”｜「偶像音楽 斯斯然然」第121回

SNSネイティヴ世代のアイドル

そして、アイドル本人たちのスタンスも大きく変わっている。誰もまだ知らない、とっておきの子を世の中に知らしめる、と言ったところが主流であったアイドルの売り方も、いつしかSNSで影響力のある子がアイドルになる、というケースが圧倒的に増えている。そして、スクールカースト上位（この言い方も古いが……）の子がアイドルになるのではなく、根暗で陰キャが自分を変えたくてアイドルになる、というケースが増えてきた。それこそNANIMONOは陰キャを武器にしながら確実にその人気を広げ、ついに来月メジャーデビューを果たす。負の感情を叩きつけながら重苦しい愛を歌うマーキュロやMAD MEDiCiNEといった地雷系ロックの台頭も目覚ましい。

NANIMONO「インキャ・オブ・ファイヤー」

アイドルはプライベートを晒さないという昭和伝統も長くあったが、現在はプライベートを含めたSNSの使い方がウマいアイドルが人気になるという現実も多くある。SNSネイティヴ世代ならではの動きだ。それは運営サイドも同じで、“このポストが○○RPで次メンバーのアー写公開！”というのもHEROINES発祥のユーザー主体プロモーションの代表的な例である。

ただ、そうした自給自足のプロモーションゆえの弊害もある。実際、iLiFE!ブレイクのジワジワ感があった2022年時点では多くのアイドルヲタクがそこにいまいち気づいていなかった。この界隈と真逆のファン層を持っているのは、いわゆる“楽曲派”と呼ばれる界隈であるだろう。普段のイベントでも両界隈が交わることはあまりないので、それは致し方ないのかもしれない。それも多様性、シーンに新たなコミューンが生まれているのは確かだ。そうした異なる界隈の切磋琢磨がシーン全体の活性化に繋がるので今後に期待したい。

そして、ユーザー主体のプロモーションで完結してしまっているところもあるので、媒体プロモーションの必要性がそれほどなくなってきているような気もしてならない。私のような職業にとっては死活問題でもあるのだが……。とはいえ、自給自足プロモーションには限界があるので、今後の市場規模の拡大を含めしっかりと見守っていきたい。そしてアイドルシーンのジャーナリズムとして、こうした評論家気取りの地道な発信は意地でも続けていきたい所存である。