2024年“今、会いにいけるアイドル”と“SNSネイティヴ世代アイドル”|「偶像音楽 斯斯然然」第121回

2024年“今、会いにいけるアイドル”と“SNSネイティヴ世代アイドル”|「偶像音楽 斯斯然然」第121回

2024年“今、会いにいけるアイドル”と“SNSネイティヴ世代アイドル”|「偶像音楽 斯斯然然」第121回

コロナ禍を経て、さまざまな変化を遂げたライブアイドルシーン。今回は、その中からおもに楽曲とプロモーション手法に焦点を絞り、冬将軍が独自の視点で新しい流れを分析する。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週金曜日更新)。

前回、コロナ禍によっての変化として歌唱力やパフォーマンス力の向上を例に挙げたが、楽曲自体における変化もある。ライブにおけるオーディエンスへの依存度が低くなったために沸き曲の必要性はなくなった。いわゆるコールを想定したような楽曲作りやメロディの置き方をする必要がなくなったのである。加えて、観る側もしっかりとライブを観る、聴くという姿勢が強まり、耳も肥えたと言っていい。さらに新規層によってライブに求めるもの自体が大きく変わっていった。アフターコロナの現在、かつての盛り上がりを取り戻したグループもいるが、全体的に見てライブにおける観る側が声を出すこと自体の重要性は以前に比べて下がっていると言っていいだろう。

しかしながら地下アイドルライブのコールは、別ベクトルからの盛り上がりを見せている。

iLiFE!に学ぶ、コール&MIXの逆転の発想

2023年の大きなトピックとして挙げたのはiLiFE!の快進撃だ。2022年から確実に大きな波は来ていたが、2023年夏からの勢いがすさまじい。5月に主要メンバーの脱退、そして6月にリーダーを含めたオリジナルメンバーの2人が卒業という最大の窮地を迎えながらも、そこからの起死回生どころか、結果的に勢いづいたところが驚きである。

そうしたマイナス状況下からの既存メンバーの結束。HEROINES屈指の実力派メンバーと新人グループからの選抜メンバーのサポート加入という施策が、パフォーマンスの向上とグループの本質を問うことになり、アイデンティティがしっかりとできたように感じた。そこが確立されてからの9月、新メンバー加入が再スタートの大きな着火剤となったのである。現に9人体制となってから、新たなフェーズに突入したことがありありとわかるパフォーマンスを展開している。

iLiFE!「のびしろグリッター」(2023年)

そんなiLiFE!の旗艦楽曲である「アイドルライフスターターパック」だが、そもそもこのような楽曲をアイドルが歌うこと自体が斬新すぎた。

iLiFE!「アイドルライフスターターパック」(2022年)

「可変三連MIXをおぼえるうた」や「MIXあるあるのうた」といった、アイドルヲタクあるあるソングで話題になっていた、めだんし氏にその集大成というべきアイドルソングを依頼し、アイドル本人が歌うという大英断。ヲタクが勝手にやっているコールやMIXをアイドル本人が楽曲として歌うなんて、考えはついても正直誰も絶対にやりたくなかったことだろう。

もはやアイドル現場の定番「可変三連MIX」をおぼえるうたを作ってみた

しかしながら、時はコロナ禍。観客は声を出せない状況である。ならば演者自らが声を出してしまえという逆転的発想が見事に当たった。

【アイドルライフスターターパック / iLiFE!】現場の基本コール詰め込んだ曲作ったったwww【作曲者本人が歌ってみた】

振り付けを担当した、いどみん氏のキャッチーな振りもあって、TikTokでじわじわと広がっていったわけだ。メジャーな大手事務所だったらこういう発想には至らないし、地下アイドルを長年やってきた運営でもやろうとは思わなかったことである。斬新な発想を用いて地下アイドルシーンに殴り込みをかけてきたHEROINES(イマジネイト)だからこそできたものだろう。そして、めだんし&いどみんというヲタク発想を持ち合わせたクリエイターだからこそ生まれたものである。さらにはアフターコロナによる声出し解禁も大きな後押しになった。

今や中高生が学園祭で踊ったり、プロ野球団オリックス・バファローズの紅林弘太郎選手が登場曲で使用したりと一大ムーヴメントになっている「アイドルライフスターターパック」現象。冒頭で述べた“コールを想定したような楽曲作りやメロディの置き方をする必要がなくなった”という部分とは似て非なるもので、逆転の発想の勝利である。本来コールやMIXはヲタク側が勝手にやるものであって、演者側が扇動すること自体がそれまではなかったものだ。アイドルライブのコールやMIX、俗に言う“ヲタ芸”は、どの場所でなんと言っているのか、そもそもやらなければいけないのか……などなど、初心者には最初の一歩を踏み出しにくいところがある。しかしながらそれを、ライトにキャッチーに演者側がやっているのだから、ただそこに乗っかればいいだけだ。そして、得も言われぬ一体感が生まれるのである。

「アイドルライフスターターパック」以降、アイドルが扇動してMIXを煽ることも珍しくなくなったし、ヲタクコールの定番“ガチ恋口上”を捩った、MAD MEDiCiNE「ヒステリックトリック」の“メンヘラ口上”や、昭和的な呑みコールを令和にアップデートしたAlcute!「がんばれ!あるコールのうた」の“ガチ酒口上”など、オリジナルのコールを盛り込んだ楽曲が増えている。

MAD MEDiCiNE「ヒステリックトリック」

Alcute!「がんばれ!あるコールのうた」

次ページ

  • 1
  • トップページ
  • 連載
  • 2024年“今、会いにいけるアイドル”と“SNSネイティヴ世代アイドル”|「偶像音楽 斯斯然然」第121回