MAD MEDiCiNE、ゴシックでデジタルな世界観が織りなす気高く優雅な狂躁｜「偶像音楽 斯斯然然」第115回

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作＆マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である（隔週金曜日更新）。

世界的に大きく盛り上がっているY2Kリバイバル影響下、X-POPを掲げるXGのサイバー系ファッションのビジュアル然り、徹底的な世界観構築はアーティスト表現の大きな要素としての変革期を迎えていると感じている。“女が惚れる女”ガールクラッシュからの盛り上がりもあって、ユーザーから求められる女性グループ像は大きく変化している。

日本のライブアイドルシーンにおいても同様であり、徹底的な世界観構築を持ったグループが昨今急速にシーンの一角を担うものになった。男性よりも同性に支持されるグループが増えたことも近年のライブアイドル、地下アイドルシーンの大きな傾向であり、メイクや衣装といったビジュアルだけではなく、苦悩や心の病みといった負の感情をあらわにした歌で独自の世界観を構築していく。韓国のガールクラッシュとは異なるベクトルだが、“心に抱える弱さを強く歌ってくれる女の子”が、代弁者としてZ世代女子を中心に今大きく求められているのだ。

私はそのカテゴリグループを、誤解を恐れずに“地雷系ロック”と呼んでいる。俗に言われる地雷系女子メイク＆ファッションが、ヴィジュアル系ロックバンドシーンやゴシックロリータの影響下ではなく、インフルエンサー〜地下アイドルシーンで広まった過程も踏まえてそう呼んでいるのである。音楽性を見ても直接的なV-ROCK（音楽性としてのヴィジュアル系）ではないことが多い。

インフルエンサー方面からアイドルシーンに殴り込みをかけたと言っていいほどのインパクトを持ち、地雷系ロックのパイオニアグループであった悲撃のヒロイン症候群のメンバーが、ミオヤマザキ系譜メンヘラロックのGILTY×GILTY、呪詛系ゴシックのAdamLilith、ぴえん系ボカロロックのガガピエロと、それぞれHEROINESの別グループとして現在もそうしたムーヴメントを牽引していることも注目すべきところだ。

さて、閑話休題。

先日、そうした徹底的な世界観構築の勝利といえるライブを観た。地雷系ロックの麒麟児、MAD MEDiCiNEの東名阪ツアー＜MAD SiCK CiRCUS＞ファイナル（10月14日 WOMB LIVE）である。

MAD MEDiCiNE「MAD SiCK CiRCUS」

会場内に飾られた三角旗といった装飾の数々とステージ両脇に構えるメリーゴーランドの白馬に乗った道化師の人形……不穏さと不気味さが支配する禍々しい空間で歌い踊る5人の邪悪なお嬢さま。その様相はタイトル通りの狂気と退廃を生むゴシックサーカスといった趣で、強い美学を魅せつけた素晴らしいワンマンであった。