TEAM SHACHI、sora tob sakana、でんぱ組inc.、新体制で新境地を感じさせる新曲｜「偶像音楽 斯斯然然」第8回

絵本から飛び出したおとぎ話　sora tob sakana「ささやかな祝祭」

3人組となったオサカナこと、sora tob sakana、7月24日リリースの2ndシングル「ささやかな祝祭」。

sora tob sakana「ささやかな祝祭」

これまでのポストロックアイドルのイメージを超えた、より洗練されたポップス。デキシーランド・ジャズっぽくあり、マルディグラの謝肉祭っぽくもあり、どこかロマやジプシーの香りもする、それは無国籍なおとぎ話のようで。聴けば見れば思わずにんまりしてしまう、まさにタイトル通りの“ささやかな”幸福感。

オサカナといえば、サウンドプロデュースの照井順政（ハイスイノナサ、siraph）による巧妙かつ緻密なポストロックをベースとしたサウンドとアレンジで、アイドルファンのみならずロックファンをも唸らせてきた。反面で、その腕っ扱ゆえにインストゥルメンタルバンドと少女たちの歌、というどこか別々に隔離されたような聴こえ方をしてしまうことも少なからずあったはず。

未完成なものが完成へと向かっていくのを見守る、これはアイドルを応援する醍醐味の1つ。その過程にはプロデューサーの戦略すらもメンバーが超えていく瞬間がある。コンセプトありき、テーマありきだったものが、逆にメンバー自身にインスパイアされ導かれるものへと変わる、メンバーの成長によりグループの性質が変わっていく。

sora tob sakana「knock!knock!」

今年3月にリリースされたメジャー1stアルバム『World Fragment Tour』で見せた広がりは、単に“メジャー感”というもので説明できるものではなく、表現力が増した彼女たちの賜物にほかならない。ポストロックやエレクトロニカ、フォークトロニカの女性ヴォーカルといえば、どこか北欧イメージが付きまとうもので。しかしながら、そうしたものを感じさせず、かといって和情緒たっぷりというわけでもないという特異性。“詞”ではなく“詩”を感じさせる文学性、絵本のような空想的な世界がこちら側に飛び出してきた感すらある、これからのオサカナの物語から目が離せない。