地下アイドル？ ライブアイドル？　せめぎ合うグループアイドルシーンの現在とこれから｜「偶像音楽 斯斯然然」第112回

立ちはだかるZeppの壁

アイドルに限らず、アーティスト活動を行なう上で立ちはだかるのが“Zeppの壁”だ。Zeppくらいのキャパシティ2,000人規模のハコでワンマンライブができても、そこから上へは狭き門なのである。現にライブアイドルシーンで、その壁を越えることができた大手資本ではないインディペンデントのグループは、BiSH以降いないだろう。日本武道館でライブを行なったグループはいるが、キャパ的に“武道館アーティスト”になったわけではない。

Zeppより上に行くには、一般層からの支持を得ないと難しいと言われている。ライブアイドルというニッチなシーンだけでは厳しい現実であり、“いい曲といいライブをやっていれば、お客さんが増える”というところだけでは立ち行かない限界値でもある。同様にニッチな音楽シーンである、ヴィジュアル系ロックバンドのシーンも“Zeppの壁”は高く、分厚く聳え立ち、悪くいえば閉塞感のあるシーンとして知られている。ただ閉塞感があるからこそ居心地もよく、市場的には爆発せずとも安定はしている状態を保っている。そして、よりディープでマニアライクなシーンになっていくというスパイラルも生まれていっている。

現在のライブアイドル市場は現場完結型でもあり、長期戦略がしづらい側面がある。加えて、運営の規模や経験値的にもアーティストマネジメントや新人育成、プロモーション展開などのノウハウに長けているとはいえない場合が多い。ゆえに一般層には届きづらい、届けづらいという部分があることは否めない。

当コラムでは何度か触れているが、そもそも日本の音楽市場は売上枚数によるチャート至上であったがために、長期戦略という概念自体が根付いていない。特に、アーティスト自らが楽曲制作を行なうシンガーソングライターやバンド以外のポップソングの場合、リリース日に照準を合わせた初動セールスに特化したものがメインであった。逆に、韓国のグループはとにかく時間と手間暇をかけてクオリティの高いものを制作し、長いスパンでじっくり売っていくというものであり、K-POPの世界的成功は徹底的な長期戦略の賜物であるともいえるだろう。

そんなライブアイドルシーンに追い風になっているのが、ネット上の口コミであり、ユーザーによって生成されていくコンテンツ、UGC（User Generated Content）だ。膨大な宣伝費を掛けなくとも、ユーザーによる拡散が大きなプロモーションになっている。Y2Kリバイバルの筆頭であるアヴリル・ラヴィーンの再ブレイクも、一躍世界的なロックバンドにのし上がったマネスキンも、そうしたUGCによるものが大きい。日本においても、実際にTikTokの大バズがアイドルソングのヒットを生んできたことは今さら説明するまでもないだろう。