田所あずさ［ライブレポート］多彩なシーンを描きながら溢れる想いを届けた3年8ヵ月ぶりの有観客ワンマンライブ

取材＆文 : 千葉研一
撮影：TAKASHI KONUMA

自身にとって久しぶりの有観客ライブ。その幕開けは特徴的なイントロから始まる新曲「プライベート・ルーム」（TVアニメ『もののがたり』第二章EDテーマ）だ。作詞・大木貢祐＆作曲・神田ジョンの黄金タッグによるオシャレな1曲を、淡いベージュのドレスに身を包んだ田所が美しく歌い上げる。背後の大きな幕を使った映像もステージを彩り、自身の新たな世界観に観客を誘っていった。

続けて、「ソールに花びら」「ちっちゃな怪獣」とアーティスティックに聴かせる楽曲の連続。感情が零れ落ちそうなほどの田所は、それぞれの曲で違った魅力を見せていく。そして、MCからお馴染みのバックバンド『あずさ2号』のメンバー（Gt＆バンマス：神田ジョン、Gt：長澤トモヒロ、Bass：岩切信一郎、Dr：MIZUKI、Key：柴﨑洋輔、Mp：篠崎恭一）を紹介し、次の曲では雰囲気を一転。爽やかなナンバー「リトルソルジャー」（TVアニメ『転生したらスライムだった件』エンディングテーマ）で澄んだ歌声を響かせると、観客のクラップとともに「Visual Vampire」、乱暴な口調でグッと心を掴む「ころあるこ。」と力強く畳み掛けていった。

ライブ中盤も、メッセージ性の強い楽曲で多彩な世界観を見せていく田所。「箱庭の幸福」（TVアニメ『リアデイルの大地にて』エンディングテーマ）では物語を紡ぐように想いを届け、さらに「Rest in a Stroke」、Lo-fi Hip Hopのメロディが心地良い「ドラム式探査機」（TVアニメ『神達に拾われた男2』エンディングテーマ）、感謝と祝福の気持ちを込めた「クリシェ」を披露。楽曲の世界や心情の機微を巧みに表現して、聴くものの感情を揺さぶっていく。

MCでは今回もやっぱりライブを迎えるのがすごく怖かったと正直に語るが、その一方で食べたトンカツやラーメンのこと、一緒に住んでいる猫のラジャのことなどを楽しそうに語る親近感も彼女の魅力だ。

そんな親近感のある姿から、ライブになれば他を圧倒するアーティスト田所あずさに早変わり。ラストスパートと言わんばかりに、「レイドバック・ガール」は時にオシャレに、時に攻撃的に熱唱。配信のカメラに向けて《わたしの目を見て言えるの》と言ってみんなの心を虜に。さらに、「DEAREST DROP」（TVアニメ『終末なにしてますか？忙しいですか？救ってもらっていいですか？』オープニングテーマ）では美しいイントロから一気にロックなリズムを刻むと、観客の歓声も一段とボリュームアップ。優しく情感たっぷりに歌い上げた「スペクトラム ブルー」から、本編ラストはセルフプロデュースした同名アルバムを象徴する「Waver」。響かせる声には、揺らぎながらもここにいる田所の心が詰まっており、想いや決意をみんなに届けていった。

アンコールでは、田所と『あずさ2号』のメンバーがグッズのパジャマを着て再登場し、今回のワンマンライブのために制作された新曲「Last Thursday」を初披露。曲中にはライブグッズの缶バッジを客席に投げ込む場面もありつつ、ごきげんな曲を楽しく歌い上げていく。

そして、“ワンマンライブって味方しかいないんだなと思い出しました”との気持ちを乗せて、ラストは「ストーリーテラー」「純真Always」で熱いロックをぶち上げる。観客のボルテージも最高潮となり、みんなの大合唱を聞いた田所は“最高！”と喜びを爆発させていた。

歌い終わり、みんなが素敵な笑顔を見せに来てくれたことに何度も何度も感謝を述べる田所。不安になることも多い彼女だが、自分の元気を出してくれるのがみんなの言葉であり笑顔。それを嬉しそうに語ってライブを締めくくった。

なお、今回のライブはDMM TVにて配信。2023年7月17日（月）18:00～2023年7月30日（日）23:59まで見逃し配信も行なっているので、ぜひ田所あずさの魅力や紡ぎ出す世界観を何度も感じてもらいたい。