Z世代のライブアイドル観からアフターコロナのアイドルライブシーンを考える|「偶像音楽 斯斯然然」第108回

Z世代のライブアイドル観からアフターコロナのアイドルライブシーンを考える|「偶像音楽 斯斯然然」第108回

Z世代のライブアイドル観からアフターコロナのアイドルライブシーンを考える|「偶像音楽 斯斯然然」第108回

今回は、冬将軍が先日直接触れることになったZ世代一般層のアイドル観を皮切りに、コロナ禍以降のライブアイドルシーンを分析。コロナを通じてシーンはどのように変化し、コロナを乗り越え、今後どのようになっていくのか。その潮流を語る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週金曜日更新)。

ライブアイドルシーンがコロナ禍で得たものは大きく2つあると思っている。まず1つ目はパフォーマンス力のアップ。ステージとフロアが一体化する、オーディエンスとともにライブを作っていくという意識が強いシーンではあるが、反面でオーディエンスの力でライブの良し悪しが左右されてしまう、オーディエンスの盛り上がりがライブの盛り上がりであると判断されてしまうことがあったのも事実だ。しかしながら、“声出し禁止”といった制約の多いコロナ禍でのライブは、オーディエンスに頼らない表現者としての意識が“魅せつける”という部分に集中し、結果としてパフォーマンス力が上がったグループが多くいる。

2つ目は、女性客の増加である。ライブハウスは怖いところというイメージや、騒ぐヲタクが怖い、コールなどをしないとほかのヲタクから怒られるのではないか……などと諸々のマイナス的な先入観や偏見があったはず。しかしながら、そういった非アイドルファンにとって、ソーシャルディスタンスで自分の場所を確保しながらライブを観られるコロナ禍は、新規層、特に若い女性の大きな呼び水となった。

そうした呼び水となったのは、ライブハウスへ行きやすくなった前段階でも起こっている。コロナ禍におけるライブ配信、およびInstagramやTikTokといったSNSからの流入も大きい。SNSから流行が生まれていく。これは日本だけのみならず、海外においてもそうだ。ロックシーンにおけるY2Kリバイバルの筆頭格であるアヴリル・ラヴィーンの再ブレイクや、イタリアのロックバンド、マネスキンの世界規模でのブレイクにもTikTokやInstagramストーリーズでの大バズが影響を与えている。“Stay Home”、日本では“おうち時間”と呼ばれた家での過ごし方がインターネットでの拡散、UGC(ユーザー生成コンテンツ)という、現代型の口コミを生んでいったのである。

Z世代一般層にとっての“地下アイドル”

先日、非アイドルファンの10代女子に“地下アイドル(ライブアイドル)で何か知っているグループはいるか?”と尋ねてみたところ、思いもよらぬ答えが返ってきた。咄嗟に名前が出てきたグループが、夜光性アミューズとNANIMONOだったのだ。よるあみ(夜光性アミューズ)はYouTuberの神楽ひなこが所属するグループとして認識、NANIMONOはTikTokで知ったという。夜光性アミューズおよびHEROINESのZ世代支持率は想像がついていたものの、NANIMONOは意外でもあった。でも確かに、去年末あたりから確実に女性客を中心に動員が増えているなとは感じていた。6月にはKT Zepp Yokohamaでのワンマンを成功させ、今勢いを感じるグループの1つである。

NANIMONO「ジャージは戦闘服★」

夜光性アミューズ「シンギュラミューズ」

そこで、非アイドルファンの10代〜20歳の女子(専門学校生)5人に同等の質問をしてみた。全員が知っていたのはiLIFE!、次点で夜光性アミューズが3人、26時のマスカレイドが2人という結果だった。FRUITS ZIPPERと高嶺のなでしこはグループより楽曲(「わたしの一番かわいいところ」「可愛くてごめん」)としての認知度が高く、両グループはメジャーデビューしているものだと思われていた。楽曲のキラキラ具合いやグループイメージとしての見え方の印象は重要であると思った次第である。加えて面白かったのは、iLIFE!とよるあみが同じ事務所(HEROINES/imaginate)であることを全員が知らなかったことと、さらに“よるあみの柊ききちゃんの双子のお姉ちゃん(森ふう花)がいるグループ”という認識で、まねきケチャを知っている学生が1人いたのである。ただ、森ふう花以外のメンバーはわからず、曲は知らないという。ごく限られた少人数の意見ではあるものの、Z世代における地下アイドル価値観をリアルに知った気がした。機会があれば今度は改めて、大々的な統計を取ってみたいところだ。

ちなみに“地下アイドル”という定義的なもの、“テレビに出るような表だった活動ではなく、ライブ活動を主としているアイドル”という認識は非アイドルファン層にもなんとなく浸透しつつあるようだ。数年前までは蔑称的に扱われていたこの“地下アイドル”という言葉。そう呼ばれることを由としないアイドルも多くいたが、昨今はアイドル自らそう名乗ることが増えてきている。“ライブアイドル”という代替えの言葉も使われてはいたものの、バンドに対してライブを得意とする讃美の言葉“ライブバンド”とは似て非なるものである。インディーズとメジャーの差が曖昧になっている現在のアイドルシーンにおいて、1つの目安としての“地上/地下”という概念が生まれていることはわからなくはない。かつてのバンドシーンでの蔑称的な言葉、“ヴィジュアル系”がその便宜上、定着していったように“地下アイドル”という言い方も今後ますますライトに使用されていくのかもしれない。思えば“ヲタク”だってそもそも蔑称だったのだから。ただ、まだ対外的には蔑称としてマイナスイメージに捉えられることも多いので、TPOは弁えて使いたい言葉である。

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