マーキュロ[ライブレポート]7人のダークヒロインが“絶望の世界”で届けた救済「みんなの傷を少しでも抱きしめてあげることができたらいいな」

マーキュロ[ライブレポート]7人のダークヒロインが“絶望の世界”で届けた救済「みんなの傷を少しでも抱きしめてあげることができたらいいな」

マーキュロ[ライブレポート]7人のダークヒロインが“絶望の世界”で届けた救済「みんなの傷を少しでも抱きしめてあげることができたらいいな」

マーキュロが、6月26日(月)に恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンライブ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>を開催した。ソールドアウトとなった同公演は、マーキュロ初のバンドセットライブ。メンバー7人は、力強いバンドサウンドに乗せて圧巻のパフォーマンスを魅せ、大きな熱狂を生み出した。本記事では、そのオフィシャルレポートをお届けする。

取材・文:冬将軍
撮影:saru

“見世物小屋ファイナル、開幕!”

猛り狂うバンドサウンド、芥タマキの叫びで今宵の宴は始まった。歪んだ音に彩られた7人のダークヒロインは妖しく美しく、狂おしく歌い踊る——。

“サブカル系”を標榜するアイドル、マーキュロが2022年6月の始動から1年、恵比寿LIQUIDROOMにたどり着いた。2023年6月26日<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>。マーキュロにとって、最大規模であり初のバンドセットでのライブである。

オーディエンスが埋め尽くすソールドアウトしたフロア。不穏さが張り詰めたような空気感が漂う。空襲警報のごとくサイレンが鳴り響き、ヘヴィな轟音アンサンブルが降り注いだ。

“僕たちへの忠誠の証を誰よりも高く掲げろーー!!”

タマキの叫びで始まった「デイストオシオン」の強襲。23日にSpotify O-WESTで行なわれた<『見世物小屋』東京編>にて、初披露となった新衣装を纏った7人。これまでは黒と赤をベースとした、ゴシックなV系ファッションの衣装が多かったが、今回はそれぞれのメンバーカラーを取り入れたもの。『少女椿』『ガラチア帝都物語』『ライチ光クラブ』……そんな名作群を想起させるような奇抜なデザインは、メンバーそれぞれのキャラクターをより色濃く表している。

芥タマキ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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芥タマキ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)

“恵比寿LIQUIDROOM、そんなもんじゃねえだろ! 命かけてかかってこい!”

タマキの煽りを合図にスネアが撃ち乱れると、“この世界の不条理に、中指!”軍帽姿が勇ましい藍咲ユウリが中指を突き立てると、それに呼応するように無数の中指がフロア一面に突き上げられた。さらに次の瞬間、ステージの7人とともにフロアを埋め尽くしたオーディエンスの頭が振り乱れ、会場いっぱいに「絶望セカイ」が広がっていく。《壊セ壊セ壊セ壊セ...》と我執キルが感情のすべてを床に叩きつけるように吐き捨て、タマキが獣のように咆哮し、珖夜ゼラが噛み付くように急襲してくる。アイドルは希望を与えるもの……そんな幻想など、どこかに置き去りにするように、7人のダークヒロインは絶望を高らかに歌うのだ。

藍咲ユウリ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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藍咲ユウリ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
我執キル(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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我執キル(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
珖夜ゼラ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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珖夜ゼラ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)

間髪入れずに軋むようなギターリフで始まった「ぬいぐるみ。」。先ほどとは打って変わって軽快なリズムに合わせてキャッチーながらも奇怪なダンスが始まった。あどけなさと大人びた表情が介在する、翠城ニアが美麗に歌い出し、人形のように無表情ながらも蠱惑的な色香を放つ紫月レンゲが鋭い眼光で突き刺してくる。黄色いエレガントな衣装を纏った雅楽代カミテが見る者を嘲笑うような不気味な笑みを見せていく。

翠城ニア(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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翠城ニア(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
紫月レンゲ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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紫月レンゲ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
雅楽代カミテ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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雅楽代カミテ(マーキュロ)<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)

“ハイ、土下座ァァァ!!”

ゼラがそう叫ぶと、フロアが沈んだ。ソールドアウトした会場いっぱいのオーディエンスが土下座する光景は壮観で、その様子を7人は満足げに眺めながら指を差して嗤う。

本公演はマーキュロ初のバンドセットでのライブである。マーキュロ楽曲はバンドサウンド&アレンジを基調としており、生バンド演奏で再現することは想像がつくものであった。だが、実際に生バンドのグルーヴを目の当たりにすると、その威力のすさまじさを知る。「D.I.D」のファンキーでハネたリズム、「East Side Kids」の性急で攻撃的なビート、「責任」の和の鼓動……次々とくり出される巧妙なアンサンブルがマーキュロ世界の輪郭を明確にしていく。低いセッティングで精確かつ緻密なドラミングを見せる優一(Dr)、重低音から駆け上がるような高音までグルーヴィさが心地よい俊吉(Ba)、ヘヴィなリフを轟かせるTANO(Gt)、そして、多くのマーキュロ楽曲を手掛けてきたtaka(Gt)のエッジの効いたプレイ。学ラン姿の4人が創り上げるアンサンブルは、いちロックバンドとして絶品だ。そうした生のグルーヴを身体中に浴びたマーキュロの7人はいつにも増した躍動感を魅せつけ、とてつもないエネルギーを放ちながらライブを展開していく。

そんな獰猛なステージに応えるよう、“暴動区”と名付けられたフロアの規制なしエリアでは、モッシュにダイブ、リフト……カオティックな様相がくり広げられている。

ソールドアウトしたフロアを見渡せば、マーキュロが普通のアイドルとは違う層から支持されていることがわかる。バンド好き、サブカルやV系好きはもちろんだが、圧倒的にZ世代の女性客が多いのである。希望ではなく絶望を掲げる彼女たちは、理想だけで生きていくことが困難であることを教えてくれる、納得のいかない不条理な世の中に中指を立ててくれる。そして、《死にたいんじゃない生きたくないの》と、誰しもが抱える心の闇を赤裸々に歌ってくれるのだ。それはまさに若者の代弁者であり、令和の現代社会における新しいアイドル、“ネオ・アイドル”だ。

マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)

“傘は陰を落とす 君が深く抉った掻き傷に雨が染みないように”

タマキがそう静かに呟くように口を開き始まった「私に鋭利な雨」。アイドルにおいてバラードは珍しいが、人の痛みを歌う彼女たちだからこそ成立する世界である。真っ赤なステージに雨のように白い光が降り注ぐ中、《私に鋭利な雨 それは貴方の存在でした》と静かに歌う。

“マーキュロ、整列ッ!!”

ゼラの号令で横一列に並んだ7人は、タマキ作詞の「性少年育成委員会」を投下。デジタルノイズとヘヴィリフが暴走しながら、キャッチーなメロディが狂い咲く。“全体、止まれ!!”再びゼラの号令が響くと、狂気のブレイクダウンへ。地鳴りのような重低音に合わせてフロアが折りたたみ、《季節外れのプールを泳ぐクジラの その美しい腹を抉り貪った》とユウリが無表情に歌い閉じた。

“次は「自殺願書」、「自殺願書」、黄色い線の外側にお立ちください……”

タマキの不穏なアナウンスで7人は手を取り合い、“いっせのーせ”の掛け声で駅のホームから飛び降りるようにジャンプした。文字通りのキラーチューン、「自殺願書」だ。会場にいるすべての人間が“ジェット躁鬱コースター”となり、熱気がグイグイと上がっていく。ゼラが“生きるのは、面倒臭いなぁ!!”とキメ台詞を放つと、会場全体を前後に揺らす、最大級の折りたたみが巻き起こり、ボルテージは最高潮に達する。熱をそのまま受け継いで「ピエロ」へ。陽気ながらも不気味なビートに合わせ、妖艶に舞う7人にオーディエンスは身を委ねた。そこから“僕たちの始まりの歌”というタマキの絶叫で始まった「RED」。マーキュロクロム液のごとく、真っ赤に染まったステージとヒートアップしたフロアが狂気を作り出していく。

マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)

サブカル、アングラ、V系……アイドルとして特殊なコンセプトを持ちながらも最高の船を作ることができていると語るユウリ。マーキュロクロム液にならい、“傷を癒す、寄り添う”というコンセプトに心を込めて向き合えていると続けると、“嫌な話をしますけど……”とタマキ。“小学校の時、自傷行為をしていたんですけど……マーキュロに入ったら「そういうこと、あるよね」と傷ごと認めてくれた。だから救われています”と明るく話した。“貴方の傷を抱きしめます”という自己紹介を掲げるゼラは、“傷は完全に癒えることはないけど、みんなの傷を少しでも抱きしめてあげることができたらいいな”という想いから、そうした言葉にしていると語った。

“これからも僕たちは、意見のすれ違いとかたくさん傷つけ合って、傷を抱えていくと思うけど、それも生きた証だと思って抱きしめて、今後も僕たちみんなで一緒に歩んでいけたらいいなと思っております”

ユウリの紹介で始まったのは、新曲「傷」。ピアノとストリングスのドラマティックな響きに乗ったおおらかなメロディを7人が丁寧になぞっていく。優しさと強さを感じる詞で紡がれた、傷つけ合いながらも愛に気づくというこの歌は、今日というこの日のためだけに作られたものであるという。

“これからも貴方のそばにマーキュロをいさせてください!”

間奏でタマキがそう叫ぶと、ステージの7人に呼応するようにフロアいっぱい、“マーキュロポーズ”が掲げられた。

目一杯拳を天高く突き上げた「明日も生きよう」。さらに、ステージもフロアも会場にいる全員が己の存在を確かめるようにかざした右手と、力強い歌声が一体となったラストの「存在証明」。《僕と共に生きよう 僕と共に行こう》と、つらいのは自分だけではない、独りぼっちではないのだと、7人が差し伸べた手をオーディエンスはしっかり掴むようにライブは大団円を迎えた。

最後の挨拶でのタマキの言葉が印象的だった。

“本来アイドルが隠さないといけない部分、弱くて脆い部分を歌わせていただいております。アイドルではなく、弱い人間として……”

新曲「傷」について語ったその言葉は、そのままマーキュロのアイデンティティであると感じた。アイドルはキラキラと輝いて希望を歌うもの……、それとはまったく異なる形の救いをマーキュロは教えてくれるのだ。

マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)

マーキュロの次なるステージは<失楽園>と題された関東ツアーだ。ファイナルは11月21日(火)、Spotify O-EASTで開催される。バンドセットに加えて、芝居構成があるという。耽美的で退廃的な世界観を構築してきたマーキュロだからこそできるステージ構成だろう。サブカルであり、アングラであり、V系であり、Z世代の代弁者であるネオ・アイドル、マーキュロが創り出す“絶望セカイ”からますます目が離せない。

マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)
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マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>LIQUIDROOM(2023年6月26日)

マーキュロ<一周年東名阪単独追加公演『見世物小屋』帝都編>

2023年6月26日(月)
LIQUIDROOM

1. 1周年SE
2. デイストオシオン
3. 絶望セカイ
4. ぬいぐるみ。
5. D.I.D
6. East Side Kids
7. 責任
8. 激情崩壊リテラシー
9. 私に鋭利な雨
10. 無稽の啼泣
11. 性少年育成委員会
12. 自殺願書
13. ピエロ
14. 罰愛罰愛
15. RED
16. 傷
17. 『明日も生きよう』
18. 存在証明

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