病みかわ、ゴスロリ、量産型…… 地雷系アイドルロックとヴィジュアル系ロック｜「偶像音楽 斯斯然然」第104回

V-ROCK究極アイドル

ビジュアル面以外での部分でのヴィジュアル系ロック、V-ROCK系譜はどうだろう。私がNEO JAPONISMやシュレーディンガーの犬を初めて聴いた時に感じた、“これを作ってるのは絶対ヴィジュアル系畑の人間だろ！”という直感。グループカラーもビジュアルイメージも地雷系とはかけ離れたものではあるが、かき鳴らされる音楽を聴けば、それこそhideから自然に脈々と受け継がれるインダストリアルロック、ニューメタルの洗礼を受けたV-ROCKの血筋とでもいうべきもの。そのセオリーは楽曲構成、メロディラインの作り方もあるが、ギターのサウンドメイクやレンジの取り方でわかるもの。ひとくちにヘヴィミュージックとして、BABYMETALやPassCodeと同じようなことをやったとしても、音像も解釈もまるっきり違うのである。

NEO JAPONISM「again」（2020年）
作曲：Saya, Sohma Miyanishi
作詞：syosyosyosyosyo

シュレーディンガーの犬「genom-over」（2021年）
作詞・作曲：Yoshito Abe

そうしたhide流れのヘヴィロック系譜であり、V-ROCK風味のロックアイドルはマーキュロで極まった。サウンドも音楽性もビジュアル面においても、地雷系アイドルロックではなく、明らかにヴィジュアル系直系のものである。taka（ex.ミオヤマザキ）からの楽曲提供もありつつ、昭和サブカルの世界観を見事に作り上げている。2000年代以降のネオ・ヴィジュアル系に寄せているわけだ。メンヘラ、中二病といった負の要素はもちろんであるが、ネオ・ヴィジュアル系観の大きな要素である、帝国主義やエログロナンセンスという、サブカル要素をアイドルに持ち込んだことは衝撃でもあった。

マーキュロ「デイストシオン」
作詞・作曲：Yoshito Abe

そんなマーキュロの新曲は以前紹介した“羅照羅流嗚呼苦”こと、ラテラルアーク「再殺」を手がけたTetsuya（ex.My BACTERIA HEAT IsLAND, ex.SKULL, ex.RAZOR）によるもの。暴れたスピード感で迫るドラムにヘヴィ＆ノイジーなギターリフが絡み、音符の動きは少なくもリズムの動きとボーカリゼーションで紡いでいくハイトーンのサビにゾクゾクする曲だ。SUGIZOを彷彿とさせるモジュレーションギターの大袈裟なビブラートもいい。

マーキュロ「East Side Kids」
作詞作曲：Tetsuya

90年代のヴィジュアル系からの原宿・神宮橋のコスプレ文化があり、2004年に嶽本野ばら『下妻物語』が映画化。ゴスロリが一般にも浸透し、雑誌『KERA』などの青文字系・原宿系ブームに繋がっていく。『h.NAOTO』から派生した“グロカワ”系キャラクターブランド『HANGRY＆ANGRY』の音楽ユニットとしてモーニング娘。の吉澤ひとみと石川梨華の覆面ユニット、HANGRY&ANGRYが登場した。当時はアイドルが下火だったということもあり、アイドルではなく、“ヴィジュアル系女性ユニット”という名目であり、当時海外からの注目度を高めていた“ヴィジュアル系＝Visual kei”とジャパンカルチャーブームの波に乗った。しかしながら、海外の評価ほど日本での活動がウマくいかなかったのも事実である。

当時と現在の何が違うかといえば、圧倒的に女性支持が多いということだ。女性アイドルファンは男性が多い、マニアライクなロックファンが行き着く先というイメージも強いわけだが、ここ数年で確立しつつある地雷系アイドルロックのムーヴメントは女性支持層が厚いのである。それは、90年代に一斉を風靡したヴィジュアル系ムーヴメントとどこか通じるものがあるわけだが……。

さて、そんなV-ROCKと地雷系アイドルロックとは別のラウドロック系のアイドルロックもあるわけだが、話が長くなってしまったので、それはまた別の機会にしたい。

最後に個人的に気になっている地雷系アイドルロックグループを2つほど
紹介。MAD MEDiCiNEは名古屋を拠点とするグループ。

MAD MEDiCiNE「レゾンデートル」

ボカロロック以降の歌謡曲解釈と雑食的なロックサウンドが融合した今どき感とでもいうべきであろうか。徹底的な世界観構築は申し分なく、今後が楽しみである。

MAD MEDiCiNE「愛憎レイテンシー」

さらにもう1組、個人的に最近グイグイきているのが、アンチテーゼ。前に見た時は、5人組だったが気がつけば3人組へ。その分、精鋭感が増している。

アンチテーゼ「Trigger」

正直あまり印象のなかったグループだったのだが、改めてライブを観たらかなりレベルが上がっていた……矢先の「Trigger」MVのクオリティの高さに驚愕。アニソン、ゲーム要素の高い楽曲、だと思ったら楽曲制作者の篠崎あやと、橘亮祐はそっち関連のクリエイターということで納得。柊あおのあのギャル系不思議キャラからも目が離せないグループである。