TENRIN、HEROINESの“OUTSIDER”が新体制で魅せるアナーキーな転生輪廻｜「偶像音楽 斯斯然然」第103回

ロックなカッコよさとアイドルらしい可愛らしさの共存

HEROINESのすごいところは、あんなにも多くのグループがいるのに、それぞれにちゃんとコンセプトがあって、音楽性とキャラクター性の棲み分けが明確にされていること。そして何よりどのグループも全員が歌って踊れることだ。歌に関していえば、ボイストレーナー・AKINO LEEの手腕も大きいだろう。TENRINは誰1人として迷いがなく思いきり声を出している。全員が滑舌よく歌い上げられて、がなれる。さらにはラップもできて、煽ることもできるという強み。歌唱力といったスキル的なこと以前に、声量があるというのは大きな武器だ。

加えて、Twitterにアップされたムービーで気づいたことがある。出番直前での声出しをしている何気ない一幕であると思われるのだが。

しっかりウラ拍を取りながら練習しているではないか。きちんとウラでリズムが取れていないアイドルは意外といるので、感心してしまった。

天鬼の貫禄たっぷりの野太い声と立ち上がりの速さ、強いところはもちろん、弱いところでもエッジ感があるという、こういう歌声を持ってるボーカリストはアイドルに限らずそうはいない。キュートにもコミカルにも、飛び道具的にも振り切れる、のもあちゃちゃの唯一無二の強さ。切れ味抜群に斬り込んでくるラップと、キレキレなのに妙に綺麗な動き方をする月神キラは気がつくと目で追ってしまう。比較的フリーダムなステージングも多いロック系アイドルの中で、統率の取れたフォーメーションでしっかり惹きつけていくのもTENRINの魅力。その見映えを際立たせているのは彼女の存在が大きいだろう。

鳴海こまは、“ハロー！プロジェクト以外は認めぬ”くらいに思っていた頭の固いヲタクだった自分にライブアイドルのすごさと面白みを教えてくれたのが、某サイケデリックトランスのグループだった……ということもあり、彼女をなんだかんだ長いこと見てきているのだが、今が1番輝いていて楽しそうでカッコいいと思うのである。艶っぽい声と鋭い眼光で観る者に襲い掛かってくる白洲あやんは、個人のYouTubeチャンネル『となりのやんやんぱーく』でTENRINのステージとはまるで違うゆるい側面を披露している。おい、なんだこれ、魅力的すぎるぞ。

白洲あやん「人生だらだら」

そんな5人に強力なメンバー、雅なぎと七瀬にこの2人が加入したのである。この先、面白くならないわけがない。まだまだ荒削りでこれからのところも多いが、今最もアツいライブを展開する今後が楽しみなグループであることに間違いはない。

7月18日（火）、CLUB CITTA’で3周年ワンマンライブを開催するというではないか。バンドセットだそうだ。私はアイドルのバンドセットライブは、その必要性を疑うこともあるのだが、TENRINに関しては過去のバンドセットライブ実績もあるし、何よりこの7人であるのだから楽しみでしかない。

激しいロックアイドルは多くいるし、歌のウマい、ダンスのウマいアイドルだって珍しくはないだろう。だが、せっかくアイドルなのだから、といういい意味でのはずし方ができているのもTENRINの魅力だ。ロックなカッコよさとアイドルらしい可愛らしさの共存。バチバチにキメていると思ったら、わちゃわちゃとしたアイドルっぽさを見せてくれるんだ。アツいぞ、アツすぎるぞ、TENRIN。