振付師・槙田紗子［インタビュー］なぜ「わたかわ」「すきっ！」がTikTok総再生数7億回を突破したのか？ バズる振り付けの秘密「“違和感“を1個……」振付師・槙田紗子 インタビュー

編集協力：村田誠二

“初めて見る動き”、“新鮮な動き”。それを1個だけ入れる

――最近では、FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」（以下「わたかわ」）や最近では「ハピチョコ」、超ときめき♡宣伝部の 「すきっ！」などの振り付けを担当されていますが、各曲について振り付けで意識したところ、またバズったポイントなどについて聞いていきたいと思います。まず「わたかわ」は、振り付けについてどういうオファーがあったんですか？

槙田：
FRUITS ZIPPERは、ちょうどデビュー前（2022年4月）の準備期間に、私がデビューで披露する3曲を担当させてもらって、「わたかわ」はそのうちの1曲だったんですけど、“「わたかわ」だけはTikTokを意識してほしい”という要望をいただいたんですね。しかも“（楽曲内の）何秒から何秒までを使います”っていう細かい指定があって。で、私自身も普段からTikTokを観るのがめちゃめちゃ好きなので、何が流行ってるかっていう基本的な情報は頭の中に入っていて。自分なりにバズってる動画の共通点を分析してみると、1個“違和感”を作ってるんですよ。違和感というのは“初めて見る動き”、“新鮮な動き”。それを1個だけ入れる。しかも1個じゃなきゃダメなんです。基本的にTikTokって、ダンスをやったことがない人が踊るので、“見たことがある動き”というか、まったく踊ったことがない人でも“これならできそう”って思わせる動きじゃないとダメで、基本的に「わたかわ」では、そんなに斬新な動きはなくて、ほっぺにハートのポーズとかもすでに流行ってた形だし、頭の上で王冠を作る振りとかも、TikTokのほかの動画でバズってる曲で使われてる動きなんですね。ただ、それだけだとありきたりでつまらないから、1個だけ“え、初めて見た動き、これ何？　でも可愛い！”っていう新鮮味を感じられる動きを意識して取り入れてるんです。

――それはどの部分ですか？

槙田：
《そして君が知ってるわたしが一番かわいいの》の、肩の動き（右手の人差指を当てた左肩をリズムに合わせて動かすもの）がその“違和感”で、今までTikTokで流行ってきた振り付けになかった動きだと思うんですよね。それを観た人には“なんかやりやすそうで可愛いけど、ここが「わたかわ」ならではの動きだよね”っていうポイントになる、って自分的には意識しました。あとは、サビの最後の《わたしもそれに気付いた！》の部分ですね。ここは1人ひとり、自由なんですよ。

――全員で同じ振りをしているわけではないんですね？

槙田：
みんなには“ここは自由でいいよ”って言ってるんです。TikTokって、みんな自分を可愛く見せるためのツールだから、個性を出せるポイントがあった方がいいと思って、少し自由度をプラスするってことは意識しましたね。もともとの（楽曲での全員の）振りは、両手を上に広げてステップを踏むような全身の動きなんですけど、“TikTokの時は自由にやっていいよ”ってメンバーに言ってて。ライブの時は決まった振りなんですけど、TikTokでは完全に自由で、《わたしもそれに気付いた！》の最後の“た～”の部分でハートを作ってもいいし、走って逃げてもいいし（笑）、本当に何をやってもいい“振りがないパート”ですね。

――例えば、TikTokで「わたかわ」を女の子たちが踊っているのを観て、今まで見たことがなかった振りはありましたか？

槙田：
けっこうみんな“可愛い可愛い”な振りをしていることが多い感じでしたね。やっぱりコレ（顔の横で手のひらを開く）が正式だと思ってる人が多いので、その振りが多かったですけど、それって何の形でもないじゃないですか。だからその時にどこか目線を外すとか、2人で撮ってたらギュッとハグするとか、今まで見たことないような衝撃的な動きはなかったです（笑）。

――槙田さんとしては、「わたかわ」がここまでバズるという予感はありましたか？

槙田：
いやいや。バズるって基本的には予測できないので。本当に何がバズるかわからない世の中というか、今みんなバズりたいし、バズらせたいわけじゃないですか。でも実際はその中でバズってるのってめっちゃ少ない。だから、私は発注されたものに最大限お応えしますというスタンスで、できる限りTikTokに寄せたものを作って、自分なりに最大限、研究したものを出したという感じです。なので、バズった時にはマジでびっくりしました。メンバーとも、公開された直後は“え、バズりかけてない？”“あの子も踊ってくれてたんだけど！”みたいに、ちょっとずつ増えてるなっていうところを見てたんですけど、そこから一線を超えると、ガッ！っと一気に行くんですね。気づいたらもう10何K（1K＝1,000）みたいになってて。

――テレビでよく見るタレントさんも“わたかわダンス”を踊るようになってますもんね。

槙田：
FRUITS ZIPPERに関しては、まず曲が本当に素晴らしいってことが大前提にあって、時代に合った歌詞だし、最近のキーワードでもある自己肯定感をテーマにしていて。そういう曲ががっちり若い子たちに刺さってるし、それにプラス、メンバーの発信力とかカリスマ性、人気、フォロワー数……って、もう「わたかわ」って全部揃ってるんですよね。なので、振り付けは1個の要素でしかないんです。曲可愛い、振り可愛い、メンバー可愛い、衣装可愛いって全部揃ってるから、冷静に考えれば、それはバズるよなって思いますよね。でも、それでもバズらないこともありますからね。

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