有馬えみり(PassCode/LADYBABY)×冬将軍「偶像音楽 斯斯然然」第100回記念トークセッション【前編】「あたしは徳川家康です」

有馬えみり(PassCode/LADYBABY)×冬将軍「偶像音楽 斯斯然然」第100回記念トークセッション【前編】「あたしは徳川家康です」

有馬えみり(PassCode/LADYBABY)×冬将軍「偶像音楽 斯斯然然」第100回記念トークセッション【前編】「あたしは徳川家康です」

2019年4月からスタートした本連載。記念すべき100回目となる今回は、初のゲストとして有馬えみり(PassCode/LADYBABY)を招き、冬将軍との特別対談をお届けする(全2回)。バンド活動を経て、現在はアイドルのみならず、作詞家としても活躍する有馬と、ロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた冬将軍が、それぞれの音楽人生やアイドルについて、じっくり語り合った。前編となる本日は、2人の馴れ初めや、LADYBABYが魅せていたもの、アイドルシーンの中でのLADYBABYとPassCodeの立ち位置などについて触れていく。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

“ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム”として、2019年4月に連載を開始したこの『偶像音楽 斯斯然然』。おかげさまで100回目を迎えることになりました。ありがとうございます。

忖度なしの主観的な内容は「ギターがカッコいいアイドルソング」をはじめ、マニアックすぎてなかなか伝わらないと言われながらも、ありがたいことに予想以上の反響をいただき、読者さまのおかげで現在に至ります。運営スタッフさま、クリエイターさまなど、中の人からの反応をいただくこともあり、ありがたいことに本コラムがきっかけで一緒にお仕事させていただくこともありました。この場を借りて、深く御礼申し上げます。そして、これからも『偶像音楽 斯斯然然』ならびに兄弟企画『偶像音楽 シン黒子列伝』をどうぞよろしくお願い致します。

さて、今回は記念すべき100回目ということで、連載が始まって以来、初のゲストをお迎えします。まさにこのコラムがきっかけで、お仕事をさせていただくようになった方で、アイドル活動はもちろん、作家としても大活躍されているという、まさにこのコラムの初めてのゲストに相応しい方でございます。

表に立ってる時も、あたしは裏方(有馬)

有馬:
おめでとうございます、100回目!

冬将軍:
ありがとうございます。この連載でLADYBABYを取り上げたものを有馬さんが触れてくれたことがきっかけで、ライブレポートやインタビューをさせてもらうようになって。しかも、アイドル活動と並行して作詞家としても活動しているということで、本コラム100回目にして初のゲストは有馬えみりしかいないなと。

有馬:
ありがとうございます、ほかにゲスト回はないんですか?

冬将軍:
ないです、有馬さんオンリーで。

有馬:
うわ、プレッシャーや……。

冬将軍:
今回はインタビューというお固い感じではなく、有馬えみり個人として、対談という形で気楽にいろんな話ができればいいなと思っております。そもそも、私が有馬さんに初めてインタビューしたのは、2020年に出した『有馬えみりPhoto Lyric Book「the heart of sword」』でした。

有馬:
お仕事でいうと、あれが初めてでした。

冬将軍:
取材したのは、ちょうどLADYBABYが活動休止に入るラストライブ(<Reburn>2020年1月13日 恵比寿LIQUID ROOM)の直後、その1週間後とかでしたよね。

有馬:
そうそう、懐かしいですね。

冬将軍:
あの時記事には書けなかったんですけど、“もう表舞台からは引退する”みたいなことを言ってたじゃないですか。

有馬:
そうなんですよ、冬将軍さんがウマいこと、マイルドな表現に変えてくれたけど、私はそのつもりでいました。

冬将軍:
それが今や……。

有馬:
表舞台ど真ん中ですよね。どうしてこんなことになったんや!って、いつも思いますね(笑)。

冬将軍:
でも、よかったじゃないですか。

有馬:
そう、表舞台に立たない=作家業で、あたしは作詞家。PassCodeに入ったことは事務所の社長、ももいろクローバーZの楽曲を手掛けているmichitomoさんも喜んで“おめでとうございます!”と言ってくれたんで。作家業と一緒に活動できるということだったので、よかったです。

冬将軍:
自分も最初に聞いた時、びっくりしたし嬉しかったけど、当然かなとも思いました。PassCodeに新メンバーが入るなら、最強スクリーマー・有馬えみりしかいないだろうと。時系列を整理すると、LADYBABYが活動休止になってから、作家業を始めたのが先なんですよね。

有馬:
そうです、全然先です。専門学校に行って、その時はmichitomoさんではなくて、コンペを投げてくれる事務所に入ったんです。でもコンペって、ものすごい数の応募があるじゃないですか。だから受かったとしても、作曲家さんがプレゼンテーションするためのデモの仮歌詞とか、世の中に出ないものばっかりで。それがしんどくて、いいところないかなと思って見つけたのがmichitomoさんの事務所だったんです。それがPassCodeに入る1年くらい前です。

冬将軍:
そもそもなんで表舞台に立つことをやめて、作家業をやろうと思ったんですか?

有馬:
表舞台は向いてないなというのは昔から思っていて。もし、シャウトを裏方としてできる仕事、スタジオミュージシャンみたいな、“スタジオシャウトボーカリスト”というやり方で生きていけるのなら、たぶん15〜16歳の時からバンドマンではなく、そういう道に進んでたと思うんですよ。それくらい自分はシャウトができるだけでほかは何もできない。内向的なので、ボーカル向きではないんですよね。だからなんでこんなことになったんだろうって思います。

冬将軍:
でも、LADYBABYの時にステージに立つ楽しさや手応えは感じてたんですよね?

有馬:
ですね。LADYBABY加入前のバンドの時も楽しくて、LADYBABYも楽しくて、PassCodeも楽しいんですよ。でも、“あたしは裏方だな”というのを感じながらの楽しさというか。ただ、裏方だからこそ、表に立って表現できることがあると思っていて。自分のオリジナリティだけでガーッていくアーティストって素晴らしいと思うんですけど、あたしはどっちかというと落ち着いて、“このグループには、どういうパフォーマンスが合うんだろう?”ということを考えてパフォーマンスするんですね。それって裏方の仕事に近いと思うんです。歌詞もそうで。“このアイドルさんには、どういう歌詞が合うんだろう?”とか。それと同じ感じなんですよ。だから表に立ってる時も、あたしは裏方なんです。

冬将軍:
セルフプロデュースというよりも、プレイングプロデューサー的なものに近いわけか。あとやっぱり、LADYBABYでやり切った感もあったんじゃないのかなと思うんです。

有馬:
そう、もうできることは何もない!って思ったんですよ。あたしの尊敬するボーカリストより大きなキャパシティの会場にたくさん立てたんですね、海外でもライブがやれたし。それってアイドルだからこそできたことでもあって。アイドルとして、シャウトボーカルをやって、大きなステージに立てた。それはやり尽くしたってことじゃないですか。だから、もういいかなって……そう思ったんですけど、PassCodeにはまだやることがあった。アイドルとしてシャウトできる人材を求めてくださった。“あ、私、まだやることあるやん!”と思ったんですよ。

有馬えみり(PassCode)撮影:Viola Kam (V’z Twinkle)
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有馬えみり(PassCode)撮影:Viola Kam (V’z Twinkle)

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