SNS、UGC、インフルエンサー、女性ファン…… 大きく変わろうとしている2022年ライブアイドルの現在|「偶像音楽 斯斯然然」第97回

SNS、UGC、インフルエンサー、女性ファン…… 大きく変わろうとしている2022年ライブアイドルの現在|「偶像音楽 斯斯然然」第97回

SNS、UGC、インフルエンサー、女性ファン…… 大きく変わろうとしている2022年ライブアイドルの現在|「偶像音楽 斯斯然然」第97回

2022年最後の更新となる今回のテーマは、現在のライブアイドルの現場で起こっていること。冬将軍がその目で見てきた、コロナ禍を経て生まれたシーンの新しい潮流について綴る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

“今、何がキテますかね?”と訊かれることがよくある。無論、関係者同士での話だ。私はこの手の質問には“#ババババンビとHEROINES”と答えている。“キてる”指標はさまざまな観点があるが、両グループともにアイドルシーンに突如として現れ、非アイドルファンを一気に引き込んで新たな息吹をもたらしているからである。

今年2022年のアイドルシーンは大きく変わった。少しずつではあるが、声出しOKのライブが増え、数年前の在りし日の光景が戻りつつもある。反面で長く続いたソーシャルディスタンス下に順応した演者と観客による新しいライブの愉しみ方との共存といった意味では、新たな局面を迎えているようにも感じている。コロナ禍でデビューしたグループも多い。今、現場では何が起こっているのか、改めて考えてみたい。

コロナ禍でのライブアイドルシーン

コロナ禍になって、ライブアイドルシーンは一変した。よく動員が減った、解散や活動休止が相次ぎシーンが衰退した、などと、マイナス面ばかりが目立って取り沙汰されるわけだが、実際は悪いことばかりではない。緊急事態宣言下で勢力的に配信ライブに勤しんでいたのも、明けの有観客ライブをどこよりも早く取り組んでいたのもライブアイドルだったし、常に活気のあるシーンであったことは紛れもない事実だ。多くのグループがコロナ禍での制約のあるライブスタイルに合わせ、試行錯誤しながら新しい形でのライブの愉しみ方を見出していった。中でも、当コラムでよく話題にしている“オーディエンスのパワーに頼らないライブの魅せ方”に重きを置いたグループの飛躍は大きく目立った。コールやモッシュ、ダイブといった、いわゆる“沸き曲”に頼ることができなくなったことは、ライブパフォーマンス自体はもちろん、楽曲制作にも大きく影響を与え、結果としてシーン全体の音楽やスキル面の向上に繋がったと感じている。NEO JAPONISMや我儘ラキアといった、ロックファンの心をも揺さぶる楽曲とライブパフォーマンスで“魅せつける”ことに特化したグループは、コロナに勝利したグループと言ってもいいだろう。

NEO JAPONISM / Resist the fate [Live Video] 【一闘両断】@Zepp DiverCity(TOKYO)

これまでライブアイドルシーンではいわゆる“楽曲派”と呼ばれるグループがシーンの一翼を担ってきたが、ここ数年はそこに加えて“not 楽曲派”のアイドルの躍進が目立っている。先述のNEO JAPONISMや我儘ラキア然り、そしてDevil ANTHEM.やINUWASI、キングサリ……といった、“地下アイドル=ライブアイドル”ではなく、ライブバンドと同等の意味でのライブアイドル、実戦叩き上げの実力派グループが大きく台頭している。ざっくり言うと“株式会社リーディ主催の関連イベントによく出ているグループ”でもあり、この界隈を好きなファンがシーンを大きく支えている。2019年に音霊 OTODAMA SEA STUDIOよりスタートした<超NATSUZOME>は会場を幕張海浜公園に移し、今やライブアイドルの夏の一大イベントとなっている。メジャー資本の主催ではないインディペンデント最大規模クラスのアイドルイベントであり、春に山中湖交流プラザ きららで行なわれた<アイドル甲子園>とともに、あの光景こそが今年のライブアイドルシーンを表す模式図のような存在であったように思う。

しかしながら、ライブアイドルシーンには閉塞的な側面があることも事実だ。いくらこんなに盛り上がっている、すごいアイドルがいる、音楽的にも面白いことをやっているグループがいる、と言ったところで、それを世間に届かせることはなかなかに難しい。よくも悪くも<超NATSUZOME>規模の中で、新しく増えていくグループと既存グループが限られたアイドルファンの取り合いをしていることも紛れもない事実だ。ライブアイドルは対バンイベントで持ちつ持たれつの関係性で成り立ってるがゆえに、ファンが複数グループを追っていることがほとんどであるし、その優先順位は日々激しく変化している。

アイドルに限らず、アーティストがブレイクするに避けては避けて通れない“Zeppの壁”というものがある。ワンマンライブの指標として、キャパシティ2,000人規模を超えることは非常に難しいという話だ。それ以上の動員を確実に得るためには、アイドルファンのみならず、非アイドルファン、および一般層をも取り込まなければいけない数字であり、その壁を越えることは実に困難なことである。

そうした意味で、アイドルシーンに新興勢力として現れ、非アイドルファンを巻き込んでいる、#ババババンビとHEROINESの存在は大きい。“いい音楽といいパフォーマンスをやっていればいずれ見つかる”という従来の受け身的な姿勢ではなく、時代に沿った攻勢を見せている。

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