鶯籠、会心ノ一撃、LiLii Kaona、感情に揺さぶりを掛けてくる“エモい”グループ|「偶像音楽 斯斯然然」第5回
鶯籠、会心ノ一撃、LiLii Kaona、感情に揺さぶりを掛けてくる“エモい”グループ|「偶像音楽 斯斯然然」第5回鶯籠、会心ノ一撃、LiLii Kaonaが描く“Emo”の音世界を紐解く
これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。
奇矯な表現者集団 鶯籠
鶯籠「嘴」
麗しく瑞々しい少女の歌声が、ふと少し大人びた儚なく物憂げな表情にも聴こえたりする。それは感受性の強い女の子ならではの感性と胸懐を鳴りはためかせ、時として苦悩や葛藤を叩きつけながらもがいているようでもあり。多感さゆえに繊細な情感が揺らめく様相が鶯籠の大きな魅力にもなっている。
そして、14歳の最年少メンバーでありながらエグゼクティヴプロデューサーでもある駄好乙(たむこ)がこのグループのカラーを背負っているようにも思う。彼女の破天荒で自由奔放さが、鶯籠の持つミステリアスさを色濃くしている。
男の子がロックに惹かれる初期衝動は、ある種の“中二病”的なダークヒーローへの憧れであると思うが、女の子が憧れるものだって、何もキラキラとしたものだけではない。鶯籠を見ていると、煌びやかなアイドルとは相反する女の子の心の深淵を覗いている気分にもなる。とはいえ、仄暗さよりも、負の感情から解き放たれようとする眩しいくらいの力強さを感じるのだ。
鶯籠「ESCAPE」
鶯籠のパフォーマンスは楽曲の世界観を映し出した物語のようなもの。その動きの1つひとつは“ダンス”というよりも“演技”であり、オーディエンスに愛想を振りまくような素振りも見せない。まるで芸術性の高い演劇を観ている感覚に見舞われる。
その醸し出される風情は、一見読めないグループ名と、PINOCO、ʚ✞ばんぱいあ✞ɞ、からあげ、点点、駄好乙、という謎めいたメンバーの名前、加えてオリエンタルなアートワークも相俟って、極東の異国情緒、奇矯な表現者集団といった趣である。
鶯籠『PAN』
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