振りコピヲタクが売れっ子振付師になったワケ　コレオグラファー・いどみんインタビュー［前編］「振りコピの精度を高めるためにダンス教室に通い始めた」『偶像音楽 シン黒子列伝』第3回前編：いどみん

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日本特殊陶業市民会館フォレストホール後方席のヲタクだった

——アイドルヲタクとしてのいどみんさんの原点は、なんだったのですか？

いどみん：
海沿いの田舎で育った人間なんですけど、『THE夜もヒッパレ』（日本テレビ系列で放送されていた音楽番組）と『ハロモニ』（テレビ東京系列で放送されていたハロー！プロジェクトの冠番組）くらいしか情報源がなくて。知念里奈、SPEEDに始まり、モーニング娘。にハマり、SweetS、BON-BON BLANCO、キャナァーリ倶楽部に行って、Dreamに行って、ハロー！はずっと好きだったけど、AKB48劇場にも行って。でもやっぱり原点はハロー！ですね、歌って踊ることが楽しいことを教えてくれた。男の歌手にまったく興味がなかったです。でも自分は男に生まれてきてしまったから、どうひっくり返ってもモーニングにはなれない。どんなに頑張っても、どんなに容姿がよくなっても、モーニングになれない人生しか用意されていない。絶対に叶わない、なれないものを背負わされて生かされてきたなと思います。

——モーニング娘。は、誰かに憧れたとかありますか？

いどみん：
とにかく“モーニング娘。に入りたい！”って思ったんです。なっち（安倍なつみ）になりたい、ごっちん（後藤真希）になりたいと思ったけど、あやや（松浦亜弥）になりたいとも思った。ミキティ（藤本美貴）はずっと好きで。みんながみんな、憧れられるところを持っているから。あそこに入りたいとしか思ってなかった。今でも。“『レインボー7』（モーニング娘。2006年リリースのアルバム）の亡霊”って自分でも呼び続けてるんですけど、吉澤ひとみリーダー時代のモーニング娘。に入りたい亡霊なんです。あの頃が1番好きで。上下関係のギチギチのあの時代。その後、飯窪（春菜／モーニング娘。）さん、矢島舞美（°C-ute）さんに憧れて。

——振りコピヲタクとして覚醒した時代ですね。

いどみん：
日本特殊陶業市民会館フォレストホール（ハロー！プロジェクトのコンサートではお馴染みの愛知県名古屋市にあるホール）後方席のヲタクで。あ、大学と就職で名古屋に引っ越してるんですけど。自分のお金でモーニングのコンサートに行けるようになって、そこで現場の振りコピヲタクが誕生しました。高校生までは部屋で振りコピをするだけのヲタクだったんです。田舎だったのでコンサートにも来てくれないし、リリイベもない。大学生から就職して、現場の振りコピヲタクになれて超楽しくて。そこで振りコピの精度を高めるためにダンス教室に通い始めたんです。それが23歳の時。だから、今からアイドル始める子に“ダンス苦手”とか言わないでほしい。こっちは23から始めて。体育の成績“2”なのに。振りコピが上手になりたくて、教室に通って、そこで出会った仲間たちと、ハロー！の「踊ってみた」を始めました。矢島さん担当、飯窪さん担当だったんですけど、握手会で本人に言われるんですよ。“観たよ、ニコ動。私やってたでしょ”って。だから狼（2ちゃんねる“現・5ちゃんねる”のハロー！掲示板）でもほどよく叩かれるようになって。

——自分もその当時ハロヲタだったんで、たぶんいどみん先生を見たことがある気がする……。

いどみん：
ていう時に、名古屋でアイドルしか流れないクラブイベントで踊ってたら、地下アイドルの運営から“振り付けってできますか？”って言われたんです。よくわからなかったけど、適当に“できまーす”って答えたんですよ。それで「踊ってみた」で仲よくなったミキティー本物（二丁目の魁カミングアウト）に“振り付け頼まれたんだけど？”って相談したのが2014年。その時にミキティーはBiSとかやってたので。そしたら“やればいいじゃん”って、他人事だったんですけど、だからこそ背中を押してくれて。“じゃあ、やってみようかな”と思ってやったのが2014年8月の終わりにお披露目された曲。Pink♡Dolceっていうグループだったんです。

——人生の転機ですね。そこから振付師としての活動がスタート。

いどみん：
それで名古屋のコンカフェとか。東海地方のご当地アイドルを担当するようになって。そして、ネオジャポ（NEO JAPONISM）と知り合ったんです。ネオジャポの「聞こえない歌」が東京アイドルの1曲目。そこから終演後物販卍（現・SANDAL TELEPHONE）、そのあとにミキティーがクマリを紹介してくれて。その時は月2、3曲くらいだったし、まだ“誰やねん！”状態だった。当時はまだ名古屋からレッスンしに通ってたんです、働きながら。でもふと“東京行こうかな”と思って出てきました。そしたら当時ZOCだった戦慄かなのと、さやぴ（兎凪さやか〜兎月さやか）からソロ曲を“私、クマリの振り付けの人にお願いしたい”って、そういう頼まれ方を生まれて初めてされたんです。そこで初めて、自分の作った振り付けを見て頼んでくれる人がいるんだと嬉しくなって。

——そうやって、いどみん先生の名前が徐々に広まっていった。

いどみん：
で、そうこうしてるうちにゼロイチの人から連絡が来て。“振り付けをお願いしたいんですけど”って。でも、その時はアイドル事業を立ち上げたばっかりだったし、アイドル界隈にゼロイチファミリアの名前はなかった。漫画雑誌の表紙になってるタレントさんがいることは知ってたけど、“アイドルやってない事務所だよな、怖いな”と思いつつ、可愛い子たちだし、“やります”って答えたら、大ハネしてくださって！　そこは人生の転機2回目。東京に来てなかったら出会わなかったし、お披露目曲を完パケで任されるなんてこんな嬉しいことはない。ザーッと話しちゃいましたけど、そういうところから見つけてもらって、名前も知ってもらえてるのかなっていう現在です。

——今では誕生日ライブを開催するほど、アイドルからもヲタクからも慕われています。

いどみん：
一昨年、誕生日会はWOMBと（Spotify）O-WESTでやったんですけど（＜いど祭り2021〜当日〜 supported by エクストロメ＞2021年4月12日）、今年はO-EASTとO-WESTでやったんです！（＜LEADING ID -Birthday Special-＞2022年4月12日）　ヤバいですよね。おじさんの誕生日会にO-EASTさま、O-WESTさまが貸してくださって、みんなが“出たい、出たい”言ってくれて。お花が出て、意味わからないくらいお客さんが入ってくれる。誕生日会をやる時くらいしか、ヲタクに“ありがとう”なんて言う機会はないし、普段SNSに“いいね”くれる人とか、リプくれる人、みんなにありがとうって。うちらにとって、O系列は“恵方”なので。“恵方巻きはO系列の方に向かって食べる”のがモットー。来年もまた恵方で誕生日会をしたいな。来年も絶対に誕生日会はやるので来てくださいっ！！