26時のマスカレイド［日本武道館公演 密着レポート］信念を貫き、愛をたっぷり届けた奇跡の夜「夢が叶ったこの景色を見て、本当にニジマスでよかったって思う」＜26時のマスカレイド The Last Year 特別公演 『26時のマスカレイド×日本武道館』＞密着レポート

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【ライブレポート】
全身全霊で想いを届け続けた夢のステージ

“いつか満員の武道館でライブがしてみたい”

日本武道館公演の決定からライブ本番に向けた過程を収めたオープニング映像は、この言葉から始まった。ライブ中も、またその前からも、メンバーが何度も言及してきたとおり、日本武道館でのライブは、2022年10月30日（日）に解散する彼女たちの長年の夢でありながら、叶うことができないと諦めかけていたものであった。

日本武道館は、数多のアーティストが単独公演を目指し、そのほとんどがその願いを実現させることができない夢の舞台。2016年のデビューから6年、解散まで残り約1ヵ月半となったこのタイミングで、彼女たちは、ついに日本武道館のステージに立つことができたのだ。

コロナ禍になって約2年半。26時のマスカレイドの日本武道館公演は、なかなか前向きな気持ちになれない昨今において、それでも“夢”を持つこと、そしてそれを諦めずに行動を続けるということの大切さを改めて思い出させてくれる場所となった。それは青臭いことかもしれないし、現実はそんなに甘くないのは承知している。でも、彼女たちがこの日見せてくれた数々の光景は、それでもそういうことを思わせてくれるだけの力を持っていたし、アイドルがファンに届ける希望や多幸感を具現化したものであった。

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ニジマスにとっての悲願のライブは、彼女たちのこれまでの“全力疾走”を表すかのように「B dash!」で開幕した。Co2が噴射されるステージ上でメンバーは、いきなりアクセルをグッと踏み込むように躍動。それに呼応するように会場中で青のサイリウムが激しく揺れた。

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「ハローハロー」「GoWay」とアッパーな初期曲で勢いをつけていくと、キャッチーなメロディが炭酸のように心地よくはじける「チャプチャパ」では、ポップな空気で会場を包み込んだ。

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各メンバーの自己紹介のあと、“ついに武道館にやってきましたー！”（江嶋綾恵梨）、“やったぞー！　パンパンじゃん！”（来栖りん）、“すごいライトが綺麗だね！”（森みはる）と、それぞれが素直な想いを口にしていく。続けて、江嶋が“始まるまでは、武道館まであと何日とか数えていたんだけど、始まっちゃたら、もうここまで進んじゃった（笑）”、来栖が“始まっちゃったからには、もう1度はないので、最後まで1曲1曲噛み締めながら、みなさんと最高の時間を作っていけたらなと思っております！　最後まで一緒に楽しんでいってください。よろしくお願いします”と呼びかけた。

中村果蓮が童謡「花いちもんめ」を歌い出すと、4人がその後方で2組に分かれ、手を繋いで交互に前と後ろに移動しながら、蹴り合う動作を見せる。すると、日本武道館にハードなディストーションギターが轟く。ニジマス屈指のハードナンバー「ハナイチモンメ」だ。火柱も上がり、ステージも会場も真っ赤に染まっていく。メンバーも激しく舞い踊り、それまでとは一転、クールな表情を魅せつけた。「ハナイチモンメ」のラストには、5人が揃ってセンターステージに移動。再び景色を大きく変えるように、どこまでもエモーショナルなメロディを解き放つ「ゼンキンセン」へ。想いをたっぷりと込めたダンスと歌声で、観客の心を鷲掴みにする。サウンド的には対照的な「ハナイチモンメ」と「ゼンキンセン」の2曲を聴いていて、高い技術力を持つ江嶋、美しいハイトーンを響かせる吉井美優、表情豊かな来栖、小悪魔的でありながら温かさも宿す森、ピュアな中村と、26時のマスカレイドの“歌声”の強さを感じることができた。この歌の力が、彼女たちがアイドルシーンの中で大きな存在感を残すことができた武器の1つであったのは間違いない。メンバー主演ドラマ『君の名前を好きって書いた』の主題歌「二人だけの初めてをもっと」でも、江嶋と吉井による輝きすら感じられる美しいハーモニーが響きわたり、ボーカル力の高さをまざまざと証明していた。

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“ファイアーボールが個人的に嬉しかった。一生の想い出だよ”（来栖）、“今日、MCで笑いを取ってない。緊張しているのかな？って思っているのかもしれないけど、そうだよ！”（森）など、彼女たちらしい飾らない人柄が表れたMCを経て、スウィング感がありつつ、セクションによってリズムが細かく変わっていく華やかなナンバー「仮面に隠れたセレナーデ」、ニジマスの“エモサイド”を象徴するようなセツナメロディをたっぷり聴かせる「エンジェルナンバー」、5人の歌声が絡み合いながら美麗な音世界を描くバラード「スノウメモリー」の3曲を一気に届ける。ステージモニターに映し出されたパフォーマンス映像も「エンジェルナンバー」ではセピア、「スノウメモリー」では雪が降るなど、楽曲に合わせたエフェクトが取り入れられていた。

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3回目のMCでは、センターステージに移動してトークを展開。1つ前のMCから森は、汗が止まらないことを話題にしていて、ここでは“武道館まで来て、汗の話しかしていない！”と無邪気に話して会場の笑いを誘った。

南国感のあるイントロが鳴り響き「妄想シンドローム」でライブを再開。メンバーはセンターステージからメインステージの下手、さらに上手へと移動しながら、“ハイ！　ハイ！”と煽ったり、手を振ったりしてオーディエンスにアピール。会場中で激しく振られているサイリウムから、発声ができなくても観客が心の底からこのライブを楽しんでいることが伝わってくる。「七色のツボミ」では、メインステージの2階で森と吉井、1階で江嶋、来栖、中村がパフォーマンス。江嶋綾恵梨が初めて作詞を手がけたこの曲は、平歌では哀愁感のあるメロディを聴かせながら、サビでは伸びやかな旋律で開放感を生み出す秀逸なナンバー。アイドルポップスの王道とも言えるとびきりキャッチーなメロディと、ツボを押さえたバンドサウンドを基軸に、多彩なアレンジを聴かせる26時のマスカレイドの楽曲。メンバーのボーカル力とともに、その楽曲の振り幅の広さとクオリティの高さもまた、彼女たちが日本武道館のステージに立つことができた重要なファクターの1つだったのだと断言したい。

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再びCo2が噴射された「マスカレイドは眠らない」では、メンバーがニジマスのワンマンライブでは欠かせない魚のマスコット“ニジマスくん”を振り回しながら、観客のテンションを上げていく。森はステージ上のカメラに向かってアピールしつつ、“みなさん、今日は夢のステージに連れて来てくれて本当にありがとうございます！　今、すごく、すごく、すごく幸せです。みなさんのことも、もっと幸せにしちゃいますよー！　そして、ニジマスのことをもっと好きになってください。私もみんなのことが大好きです！”と煽った。

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日本武道館公演のちょうど1週間前の9月7日に公開された新曲「未来へのハーモニー」のMV。その映像内では、中村が手紙を読み上げ、メンバーが涙をするシーンが登場する。MVのため、彼女が何を語っているのかはわからなかったが、「Inter Movie」として武道館のモニターで流された映像では、その手紙がサプライズでほかのメンバーに読み上げられたものであり、ニジマスメンバーとして選んでくれたことや、何も知らなかった自分を迎え入れてくれたメンバーへの感謝、そして、これまでの楽しい想い出、残りわずかとなってしまった活動への寂しさなどを語っていたことが明かされた。多くの観客が胸を打った直後にパフォーマンスされたのは、その「未来へのハーモニー」。

26時のマスカレイド「未来へのハーモニー」MV

《僕たちは辿り着いた あの日夢見た場所》

《頑張れば全部叶うわけじゃないけど 今なら言えるよ、夢は叶うと。》

夢の舞台に立った5人は、まさに自分たち自身のことを描いた歌詞の1つひとつを、万感の思いを込めながら紡いでいく。

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“夢は叶う”。この困難な時代の中で、この言葉は綺麗事に見えてしまうかもしれない。でも、目に見えないところでも奮闘し、夢の舞台に立つことができた26時のマスカレイドが、今、“夢は叶う”と歌うことには大きな意義がある。そして、「未来へのハーモニー」を聴きながら、このことを信じさせてくれることが、アイドルのみならず、エンタテインメントが持つ力だと改めて思わされた。

MCで、江嶋綾恵梨は“「未来へのハーモニー」は、（ニジマスの）最後にふさわしい曲”と述べ、続けて来栖は“解散が決まってから武道館が決定したんですけど、解散が決まった時に武道館は夢だったなっていうのがすごくあって。どのアイドルも、どのアーティストさんも、武道館はいつか立ちたいって1度は口にする目標とするようなハコだと思うんですけど、解散が決まって（残りの活動が）あと半年でまさか武道館が決まるなんて思ってもいなかったですし、改めて武道館に今立っていると考えると、なんという奇跡だって（笑）。夢が叶ったことは、ニジマスになってからたくさんあったけど、こうして5人で、みなさんのおかげで掴み取れた武道館というハコは、私たちにとって、この先も忘れないし、すごくすごく大切な存在だと思うので、ありがとうございます”と感謝の気持ちを伝えた。

江嶋は“6年前の今頃はまだ人前に出る活動はしてなくて、一生懸命、公園とかで踊っていたと思うんです。初めて立ったステージが原宿のフードコートにあるステージ、JOL原宿ってところで、きっとこの中にもそのステージを観に来てくれた人だったり、チラシ配りをした時にチラシを受け取ってくれた人もいると思うんですけど、そこから6年経って、最初は対バンライブに出て、「ニジマス10人集客できたよ」って、みんなで喜んだりとか、メインステージ（＜TIF＞メインステージ争奪LIVE）で優勝できたりとか、いろんな想い出があって、その中で武道館があって。果蓮が入ってくれた2年前からニジマスはどんどんいい雰囲気になって、今まで一緒に活動してきたメンバーとかもたくさん繋いできてくれているので、こうしてたくさんの方たちに支えられて、噛み締めながら武道館のステージに立っているんですけど。もう終わりたくない（笑）“とこれまでの活動を振り返りながら、終幕に向かっている武道館のステージへの名残りを語った。

“（次の曲を）やりたいけど、やりたくない！”と、これまた率直な想いを森が口にしながら、ライブ本編はいよいよ終盤へ。中村加入直後に発表され、ニジマスの新章の扉を開いた「君は青のままで」では、5人はやさしくも力強い歌声を届けながら、美しいフォーメーションを魅せていく。観客も“青”のサイリウムを輝かせて呼応。そのまま「ダンデライオンに恋を」に繋ぐと、会場は青から一転、黄色一色に染まり、その中で5人は華やかに歌い踊った。

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本編の最後は、ニジマスライブのキラーチューン「ハートサングラス」。森が、1番のAメロ《もどかしい思い 全部夏のせいにしたい》を《もどかしい思い 全部武道館のせいにしたい！》とアドリブで変えると、それに驚いたのか、続く、吉井、江嶋、来栖が歌詞を飛ばしてしまう。このように自由奔放にパフォーマンスをし、時にハプニングを起こしながらも、それをライブならではの楽しさとして魅せてくれることもまた、26時のマスカレイドの魅力の1つだ。思い返してみると、コロナ禍以前は、この「ハートサングラス」は激しいコールが巻き起こる沸き曲だった。コロナ禍以降、コールができなくなると、メンバーは観客に手振りなどを求めて新しい盛り上がり方を提示し、騒ぐ曲から一体感を生む曲へとシフトチェンジしていった。この日本武道館公演でも観客にリアクションを煽り、コールがなくても、大きな熱狂を生み出していた。26時のマスカレイドは、解散の理由の1つに“コロナ禍”を挙げてはいたが、コロナに簡単に白旗を上げていたわけではなく、その逆境をバネに自分たちの表現力を磨きながら、パフォーマンスの届け方を模索し、アーティストとしてさらなるレベルアップを果たしていたのだ。ラストは大量のシャボン玉が舞う中、江嶋が“武道館、最高！”と叫んで、本編は終了となった。

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