アイドル無知なアラフォーV系女子がMIGMA SHELTERに惹かれたワケ|「偶像音楽 斯斯然然」第4回

アイドル無知なアラフォーV系女子がMIGMA SHELTERに惹かれたワケ|「偶像音楽 斯斯然然」第4回

アイドル無知なアラフォーV系女子がMIGMA SHELTERに惹かれたワケ|「偶像音楽 斯斯然然」第4回MIGMA SHELTER、THERE THERE THERES、グーグールル、AqbiRec所属グループの深遠なる音楽性の魅力を紐解く

これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

THERE THERE THERESとBUCK-TICK

話は少し遡る。MIGMA SHELTERの所属するAqbiRecには、今年2月に解散したTHERE THERE THERESというグループがいた。私は、周りのロック畑の人間にこのグループを“BUCK-TICKがやってそうなことをやってるアイドル”と説明する。具体的に何が似ているというわけではない。ニューウェーヴにポジパン、ブリティッシュロックからオルタナティヴロック、そしてEBMにダークエレクトロまで、あらゆる音楽を吸収し、ゴシックな世界観を以ってオリジナリティに昇華していく様が、どこか似ている気がするのだ。

THERE THERE THERES「SOIL」

BUCK-TICKは1989年のメジャーデビューから30年間、孤高のバンドとしてシーンに君臨し続けている。今でこそ、ヴィジュアル系の始祖的存在として語られることもあるが、かつてはそのあまりに前衛的な音楽性と貪欲な探究心ゆえに、ヴィジュアル系の枠に入れてはいけないとされてきたバンドである。

BUCK-TICK「ドレス」

私の周りにはBUCK-TICKファンが多くいる。であるから、“BUCK-TICKがやってそうな〜”という説明がわかりやすいのだが。そうした中、THERE THERE THERESに興味を持った女性がいた。

“Portisheadだね”

THERE THERE THERESの「メタリクス」を聴いた彼女はそう言った。そう、それだ。どこが似ているのではない、雰囲気で語る。小難しい音楽専門用語を知らないリスナーにとっては“〜っぽい”というのが共通言語なのだ。

THERE THERE THERES「メタリクス」

彼女、オシノヒデヒ子さん(仮名)は広告代理店勤務の40代。小学生の時、『惡の華』に冒されて以来、筋金入りのBUCK-TICKファンだ。ほかにはDIR EN GREYやMUCCを好み、近年の派手な若いヴィジュアル系バンドには疎い、生粋の黒服育ち“オバンギャ”である。アイドルは興味がないわけではないが、これまで縁がなかったという。Perfumeは好き、BABYMETALは聴く、最近はBiSHが気になる、というこれまた典型的なロックファン気質。

1990年代が青春だった我々世代にとって、BUCK-TICKはまさにロックの伝道師だった。バンドブームからのビートロック、オルタナティヴロックからのミクスチャーロック、インダストリアルにドラムンベース……あらゆる先鋭的な音楽を教えてくれた。KMFDMもAphex TwinもAutechreも、教えてくれたのはBUCK-TICKだった。

だから、THERE THERE THERESの楽曲を、BUCK-TICKを介して洋楽になぞらえることはわかりやすく、盛り上がる。

すっかりTHERE THERE THERESを気に入ったオシノさんをライブに誘った。昼間からいろんなグループが出るイベントだった。

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