#ババババンビ、NEO JAPONISM、ベンジャス！、Appare!……この夏、TIF2022で観た暑くて熱い風景｜「偶像音楽 斯斯然然」第88回

Appare!　 統率の取れたアスリート感

やんちゃするヲタクのみなさんと秩序を守るセキュリティ『BONDS』のみなさんとのやりとりも＜TIF＞における夏の風物詩であった。しかしながら、コロナ禍による規制のあるライブ下でそういった光景が見られなくなってから久しい。ヲタクが一体となる力いっぱいのコールもミックスもなくなり、ライブの在り方は大きく変わった。そうしたオーディエンスの力に頼らずとも“魅せる”ライブができるグループが伸びてきたのである。

Appare!も、かつてはそうしたオーディエンスからのパワーを受けてそれを起爆剤にしていたグループであった。しかしながらコロナ禍において、そこから“魅せ方”を追求する方向にシフトチェンジした趣きがある。

フューチャーベースやエレクトロにバンドを土台としたサウンドは、重低音と音圧重視の派手な聴こえ方から聴き取りやすくクリアなサウンドプロダクトになったように思う、それは気のせいではないはず。そして、ハイテンションを売りにパワーで押し通す印象の強かったパフォーマンスも大きく変わったように感じている。

グループにおける振り付け、ダンスはその技術云々以前にまず揃っていることが肝要だ。たとえスキルの個人差があっても揃えるべきところが揃っていれば、美しくカッコいい見栄えとなる。メインストリームのメジャーアイドルとインディーズのライブアイドルとの大きな差はそこにある。メジャーアイドルは個人スキルよりもグループとして縦の線とタイム感＆タイミングを合わせることに重きをおいており、要所要所、揃える決め打ちで合わせてくる。片やライブアイドルは個人プレイに走っていることがある。手を挙げるタイミングや足を上げた時の角度など、各々の癖やアレンジが加わってしまい、バラバラに見えることも少なくないのである。

そうした面でばっちり揃っているのがAppare!である。ハイテンポでハイテンションのパフォーマンスがバシっとキマっている様相は統率の取れたアスリートのチアリーディングのようで清々しくカッコいい。昨今力を入れている“振りコピ強化”、YouTubeにおける「DANCE PRACTICE VIDEO」がそうであるように、改めてブラッシュアップしていると思われる。

Appare!「激奏！アンサンブル」【DANCE PRACTICE VIDEO】

高身長メンバーがいるグループはタイム感を合わせているつもりでも、遠くから見るとどうしても揃っていないように見える場合が多いものだ。しかし、150cmクラスのメンバーの中で1人高身長168cmを誇る、工藤のかの長い四肢が振り動くタイミングはばっちり。＜TIF＞で改めて観たZeppの2階席からの光景はそれが顕著で、数百人キャパ規模のライブハウスから2,000人越えのホールクラスへフェーズが切り替わっていることを感じたステージであった。9月に日比谷野外音楽堂でのワンマンも決まっているAppare!の勢いは止まらず、今抜群に面白い。