NEO JAPONISM サウンドP・Saya 新スタジオ『MELON SODA STUDIO』潜入[後編]A-Spells×滝沢ひなの&福田みゆ「ネオジャポ師弟懇談」
NEO JAPONISM サウンドP・Saya 新スタジオ『MELON SODA STUDIO』潜入[後編]A-Spells×滝沢ひなの&福田みゆ「ネオジャポ師弟懇談」NEO JAPONISM サウンドP・Saya 新スタジオ『MELON SODA STUDIO』潜入[後編]
NEO JAPONISMのサウンドプロデューサーのSayaが、今年5月末に都内に開設した新スタジオ『MELON SODA STUDIO』の全貌に迫る特別企画の後編。今回は、Sayaと、彼が率いるクリエイターチーム『A-Spells』の山本紗江、NEO JAPONISMの滝沢ひなのと福田みゆの4名による懇談をお届けする。NEO JAPONISMの楽曲制作やメンバーの成長、新曲などについてじっくり語り合ってもらった。
俺、どちらかというとウマくない子をウマくさせる方が得意なんですよ(Saya)
ーー仮歌やディレクションを含めた、ボーカル録りのこだわりはあるんですか?
Saya:
正直全然なくて。クオリティが高いものを仕上げて、みんなが“好き”と言ってくれて“売れるもの”をちゃんと作り上げるのが俺の仕事だから。どういう情景を表現したいとかは、颯くんやその時の作曲家の仕事だし。歌詞をこう伝えたいとかは作詞家や歌ってるメンバーの仕事だから、俺自体はそこへのこだわりはないんですよ。最初の頃“○○みたいに歌って”と言ってたのも、とりあえずNEOは頭2つ3つ抜けてるとして、インディーズのアイドル、いわゆる“地下アイドル”と呼ばれる人たちの仕事をしてると、正直そんなに歌が得意ではない人もいっぱいいるんですよ。そういう歌をカッコいいものにするためにはたくさん素材を集めるしかない。これは松隈(ケンタ)さんもよくやってるけど、いろんな歌い方をさせて、“このテイクの、この一文字がいい”というところから組み合わせて歌のフレーズを作っていくわけです。NEOも最初はそうだった。今より実力もなかった、ウマい人もいるし、そうじゃない人もいる。そういう中で、パーツ集めをして作り上げていく。でも最近はそうじゃなく、メンバーが好きに歌ったり、紗江が作詞をしてることもあるから、細部を理解している紗江がディレクションしてクオリティが上がるのなら、そっちの方法でもよくて。クオリティ優先でやってきたら、録り方が変わってきた。みゆは歌い方が“いろいろやってできあがった”と言ったけど、みんなそう。(朝倉)あいちゃんとかもそうなんですよ、ドスい声とか出したりしてるけど、これが自分でカッコいいんだとわかってきたんだと思うし、(瀬戸)みるかとかもそうだよね?
山本:
最初、めっちゃ可愛かったですからね。
Saya:
みるかは多分、可愛い系のアイドルが自分のルーツだろうし、そういう歌い方をしてたんだけど、とりあえず頑張ってイカつい歌い方をさせたらけっこうできて、それも武器の1つになった。(辰巳)さやかもそうだし。そうやってみんな成長している。ただ今はこういうレコーディングをしてるけど、次にまた新しいレコーディングの仕方が見つかるかもしれない。それがどんどん変わっていっていいと思ってるから、成長に合わせて変わっていってる。
山本:
最初はいろいろやってましたね。
滝沢:
紗江さんにも“もっとナルシストになっていいんだよ”ってよく言われました。
山本:
自分の持ってる自信は、マイクに乗るんで。丁寧に歌おうとするよりは、“目の前に大観衆がいてそこに向かって歌って”と言えば、声の伸びも全然違うし。ここに向かって歌うのと、あっちに向かって歌うのとでは全然違う聴こえ方になるから。
滝沢:
それを言ってもらったあとに歌った方が、いいテイクが録れる。
Saya:
あと、俺、どちらかというとウマくない子をウマくさせる方が得意なんですよ。ヴィジュアル系をやって録ってきたからそうなったんです(笑)。30点のくらいのものを平均点以上、70点くらい取れるところまで持っていくというか。今のNEOはウマいから90点以上のものを確実に100点にする作業じゃないですか。俺が得意なのはウマくないものをウマくする方だから……。
滝沢:
得意分野じゃなくなったんや!
Saya:
そう(笑)。だからそこは俺もこれから頑張らなきゃいけないところ。
ーーそういう部分では、楽曲のクオリティと難易度をどんどん高くしていますよね。メンバー的には“こんなの歌えない”というのもあると思うんですけど。
滝沢:
(食い気味に)うん!
山本:
私もよく抗議してますもん、“これちょっとキー高すぎじゃないですか?”“これはさすがに非道すぎるんでちょっと下げませんか?”って。
滝沢:
「Signal」が来た時、“何やってんだ、このキーは!?”と思ったもん!
福田:
ワハハハハ!
山本:
あれは私も下げるように言って、一応半音下げたのもあったんですけど……。レコーディングで結局歌えちゃったんで……。
NEO JAPONISM「Signal」(2021年7月リリース)
滝沢:
あの曲、ライブでめちゃめちゃ人気曲で、みんな“好き”って言ってくれるんで結果的によかったけど。音源来るたびに“高っ!”ってなります。
ーー「Signal」はSayaさん、“ベースの音域で絶対に譲れない場所があるから半音下げると潰れちゃう”って、おっしゃっていましたね。
Saya:
そうそう、歌じゃなくてオケを優先しているっていうね(笑)。それは俺らのヤバい部分で、“高音もここまで出せる”となったらまた“ここまで作ればいいじゃん”となる。これは颯くんもなんだけど、“前はこのくらいの納期で作れたから”と言って“今回もこのくらい納期で頼もう”ってどんどん短くなったり。それで、どんどん曲も難しくなっていく。俺らの悪いところだね(笑)。
山本:
プレイヤーの立場としては常識の範囲で歌ってほしいし、1番声の出やすい高さで歌ってほしいところはあるので、私は今後も抗議を続けようかなと。
滝沢・福田:
おおー、ありがとうございます!
福田:
フェスとかでいろんなグループさんを観ると、“このくらいの音程歌いやすそうだな”と思うんです。と同時に“やっぱNEOって高いし、むずいよな”って(笑)。でも私、ボカロが好きだから人が歌えないような曲とかそういう曲に挑戦することは好きなので、その“難しそうだけどやれるかな”というゲーム感覚で挑戦すると意外と楽しかったりもするんです。「VIVA LA DANCE」も、最初の全員で歌うところはどういう感じなの? どういうテンションなの?って音程以外の部分を考えた時に、これは自分が思ったように変えちゃってもカッコよくなるかなと思って、ノリでやってみたら“あ、それいいね”ってSayaさんが言ってくれて。ああこれでよかったんだって安心したり。そうやって自分たちが何だかんだできるんだということを理解してるから。“できない”で諦めちゃったら自分のパートも減っちゃうし、曲に対しても失礼だし、頑張って乗り切ってます。
滝沢:
でも、そうやって歌えてしまうのがすごいよな。
福田:
確かに。でも“1人で歌え”と言われたら絶対無理。
滝沢:
うんうん、みんないるから歌えるき。
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