前島亜美[オフィシャル座談会]出演舞台<ダディ>の魅力を語る「登場人物をこんなに好きになれる作品はなかなかないです」

前島亜美[オフィシャル座談会]出演舞台<ダディ>の魅力を語る「登場人物をこんなに好きになれる作品はなかなかないです」

前島亜美[オフィシャル座談会]出演舞台<ダディ>の魅力を語る「登場人物をこんなに好きになれる作品はなかなかないです」

舞台<ダディ>が、7月9日(土)~7月27日(水)に東京グローブ座、8月5日(金)~8月7日(日)にCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演される。今回、同作の主演・中山優馬をはじめ、大場泰正、原嘉孝、前島亜美、神野三鈴のキャスト陣による座談会インタビューが到着。5名が、同作の魅力や斬新さ、それぞれの役柄、カンパニーの様子などを語った。

昨年開催された第74回トニー賞で、ストレートプレイでは最多となる12部門にノミネートされた<Slave Play>が大きな話題となり、その脚本を手掛けた新進気鋭の劇作家、ジェレミー・O・ハリスはアメリカの演劇界で一躍脚光を浴びる存在となった。

<ダディ>は<Slave Play>以前に書かれた作品で、2019年に映画『チョコレート・ドーナツ』などでも著名なアラン・カミングらアメリカの実力派俳優陣が揃い、オフ・ブロードウェイのヴィンヤード劇場で初演。人種、セクシュアリティ、家族、格差社会、モラル、アイデンティティといったテーマをリアルな会話で鋭く描き、大胆で刺激的な内容が非常に魅力的だと話題が沸騰した。

コロナ禍で延期していたロンドンでの初上演も果たし、ついに日本での初演となる。

大事に演じていきたい

――<ダディ>はアメリカ演劇界注目の劇作家、現在33歳のジェレミー・O・ハリスの日本初上陸作品です。その戯曲の魅力をどう感じていますか?

中山:
劇中で大きな問題が起きることは起きますが、僕が魅力を感じているのは、問題が起こるところ以外の行間の部分。本読みを重ね、立ち稽古をしていく中で、より行間の豊かさを感じるようになりました。

神野:
それぞれの人物が本当に生き生きと、時に残酷でありながらもリアルに描かれている戯曲だと感じています。どの人物も多面的で、そういう人たちが誰かと関わることで、自分自身の違う一面が見えてきたりする。また、主人公のフランクリンだけではなく、1人ひとりが成長し、自立していくんです。主人公はアフリカ系アメリカ人ですが、きっと、日本のお客さんも共感できるところがいっぱいあると思います。

前島:
これまで本読みを丁寧にやってきました。日本語訳をどう整えていくかというところを時間をかけてやってきた中で、今、私はどの登場人物も好きになっています。みんな人間らしく愛があり、憎めないんですよね。登場人物をこんなに好きになれる作品はなかなかないです。

大場:
本当に登場するのは素敵な人ばかりで。この戯曲、複雑なところもたくさんありますが、分別くさい本ではないんですよ。それぞれ違うバックグラウンドを持った人たちが出会った時、当然生まれる軋轢をリアルに、そこにある痛みごとしっかりと描いている。またそういうことを技巧的にではなく、さらけ出して見せている。そんなところにも若い作家らしい鮮度を感じています。

原:
確かに人種も違えば宗教も違う、バックグラウンドが違う人たちが集まった物語ですから。誰が正しいとか正しくない、とかではないんですよね。愛の形もいろいろで正解があるわけではない。そう、正解がない作品。そういう戯曲だと思います。

――それぞれの役についてはいかがでしょう。中山さんはアフリカ系アメリカ人のフランクリンを演じますが、今どう見えていますか。

中山:
稽古を進める中で、すごく一生懸命な人だと思うようになりました。フランクリンはアーティストですが、どうしてアーティストになったのかと考えるとやっぱり、一生懸命生きていく中での一種の自己表現だと思うんです。単なる職業として選択したというより、自己表現。一生懸命に生きているんだなと。一生懸命な人だと。

神野:
“一生懸命”って何回言うの?(笑)

一同:
(笑)。

原:
視野が狭いといったら狭いですよね。

神野:
狭いよね。でも、それが一生懸命ってことだよね。

中山:
そういうことです。

神野:
フランクリンは瞬間瞬間を生きているから。確かに一生懸命という言葉でしか言い表しようがないよね。また、それをごまかさない。それだから周囲の人が振り回されるのかもしれないんだけれど。

中山:
嫌な奴になってもおかしくないのが憎めない存在になっているのは、ひたむきさがあるからなんだろうと思います。

大場:
基本、そういうフランクリンにみんなが振り回される芝居なんですよね。

――神野さんはフランクリンの母ゾラ役です。神野さんは“母親という立場の女性”を多く演じていらっしゃる印象があります。いろんな人の母親になっていらっしゃるなと。

神野:
そうなんですよ。しかも、息子はジャニーズの方が多いですよね。つい先日までドラマ『マイファミリー』で二宮(和也)くんのお母さん役を演じ、その前は舞台<オレステイア>で生田(斗真)くんのお母さん役という幸せ!

中山:
ジャニーズの母!

原:
稽古場でも母です。

神野:
いや、“恋人”って言って!(笑) 嘉孝の彼女を演じたい。

一同:
(笑)。

――息子役の中山優馬さんはどんな印象ですか。

神野:
作品全体に対して責任を持ってその場にいらっしゃる。それと、芝居に嘘がないですよね。感性が豊かで、今この場で起きていることにちゃんと反応し、心でやり取りをしてくれると感じます。嘉孝もそう。みんなそれは共通していらっしゃいますよね。だから、ホントなんて素晴らしい息子たちだろうと。

――大場さんはフランクリンの恋人となるアンドレ役です。アンドレはどんな人物でしょうか。

大場:
アンドレは大金持ちのアートコレクター。何十億、何百億のアートも見境なく買うんですが、世の中にあるいろんな“美”を収集しているという感じで。そんな中でフランクリンに出会い、惹かれる。フランクリンの外見だけじゃなく、内面にも“美”を見出すんです。多分、アンドレにとってフランクリンはアート以外で初めて強く心が揺さぶられ、惹かれた人間なんだろうと。そして、そんなフランクリンの核にどうにか辿り着きたいと思っている。優馬くんの芝居には嘘がないと三鈴さんがおっしゃいましたが、本当にそうなんです。等身大で飾り立てず見せてくれる。そういうフランクリンでいてくれることがすごく嬉しいし、好きになれるなって感じています。

中山:
大場さんが演じるアンドレもすごくセクシーですよ。

神野:
そう、セクシー。また品があるんですよ。ご本人はジェントルマンですが、目が時々笑っているか笑っていないのかわからない時があって(笑)。でもそういうところもアンドレのミステリアスな部分と重なります。本を読んでいる段階では、アンドレはどこか嫌悪感を覚えるような人だと思ったんですが、大場っちがやると悲しみを抱えた、やさしい人の雰囲気があるんです。でも、ゾラとしてはそんなアンドレと戦わないといけない。大場っちもその時は刀を出してくるんだろうと思うと、ワクワクします。すぐ斬られると思いますが(笑)。

大場:
いやいや、ゾラ、かなり強いです(笑)。

――神野さんは演じるゾラの人物像をどう言い表しますか。

神野:
それはもう大変な人です(笑)。

一同:
(笑)。

神野:
でもそんなゾラも1人で子どもを育てる中で悩んできたんだろうなって。自分がまだ子どもなのに、なんとか親になろうと頑張ってきた女の子だったんでしょうね。だからこそ強くならないといけなかった。また、この世が安全じゃないからこそ、時にはジャングルで子を守るメスライオンのようにならないといけなかった。ゾラは信仰心の強い人でもありますが、子どもをこの世の悪から守るために宗教が非常に力になってくれたと思うんです。ゾラは最初から母親だったわけじゃないんですよ。“フランクリンによって作られた自分”が彼女の人生でとても大きいと思うんですね。

原:
ゾラは母親の鑑みたいな人です。最初はただの“束縛する人”なのかなと思っていたけど、そうじゃないんですよね。自分の知らなかった息子が見えていく中で、それを受け入れたりもする。そういう姿にもまた母の強さを感じました。

前島:
私、フランクリンとゾラのプールのシーンがすごく好きです。

中山:
あそこどうなるんでしょうね。

神野:
そう、亜美ちゃん! さすがです! 今回舞台にはプールがあるんです! プールがあるっていうことは水着になるんです!

中山:
水着どころじゃないです(笑)。

神野:
水着どころじゃないんですよ。太字で書いておいてください(笑)。

大場:
ここにいるみんなプールに入りますもんね。

中山:
裸の時間の方が長いくらいです。

神野:
優馬と嘉孝は稽古の前にジムに通ってるらしいですよ。

プールをしつらえた舞台美術模型
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プールをしつらえた舞台美術模型

――“水着どころじゃない”ところのためにですか?(笑)

原:
そうですね(笑)。

中山:前に嘉孝と共演した時、嘉孝が稽古場でずっと筋トレしてたんですよ。で、言ったんですよ。“お前何そんな筋トレしてるんだよ! 芝居だろ、芝居!”って。でも今は一緒になって筋トレしてます(笑)。

一同:
(笑)。

中山:
筋トレの先輩です。いろんな情報もらっています。

原:
僕の場合、普段は趣味の筋トレですけど(笑)、今回は役のために本当に作っていて。視覚的な情報が今回は大事だと思うので。

神野:
また、亜美ちゃんが演じるベラミーもすごいんですよ。ベラミーについて説明するト書きに“どちらかというと水着の方が似合う”って書いてあって。

大場:
本当にそう書いてあるんです(笑)。

前島:
だから私も筋トレしてます(笑)。

神野:
で、大場っちはバレエダンサーで……。

大場:
やめてください(笑)。

神野:
水着の代わりにタイツ履いてくるでしょう?(笑)

大場:
いや、どんなフリですか?(笑)

神野:
もう、プールの中でリフトするでしょう?(笑)

大場:
あ、それは本当かも。リフトはするかもしれません。

神野:
あと、歌も歌っちゃうの。プールに歌って、ちょっとこの舞台おかしいんじゃないの?(笑)

中山:
“三鈴の歌”もあります(笑)。

神野:
“三鈴の歌”って(笑)。私のは余興ですけど。

中山:
派手な余興ですね(笑)。

神野:
ズルいの。大場っちのはロマンティックで、私は余興なの。

一同:
(笑)

神野:
嘉孝も歌うよね?

原:
え、僕歌うんすか?

神野:
歌うよ、歌う(笑)。

原:
(前島に)え、俺ら歌う?

前島:
え、聞いてないです。

大場:
歌うよ。

神野:
亜美も歌わせないのはもったいないからって、あるパーティのシーンで歌うことになる!かもしれません(笑)。

前島:
そうなんですね。今、知りました(笑)。

――そんな、原さんが演じるマックスと前島さんが演じるベラミーの人物像とは?

原:
マックスはフランクリンの親友で役者です。アーティストであるという面ではフランクリンと一緒ですね。そして、マックスは真っ直ぐ過ぎるぐらい真っ直ぐな人で、人間味があります。フランクリンが間違った道を進んでいるかもしれないと感じ、どうにか伝えたいんだけど、はっきり言わず遠回しに言うのでウマく伝わらないんですよ。あと、マックスは自分を俯瞰できる賢い人でもあると感じています。その辺りはゾラと少し似ているのかもしれません。ゾラと似た感覚でフランクリンを心配してあげられる人なんです。

前島:
ベラミーはSNSのインフルエンサーですが、ただ承認欲求がある若い子というわけではなくて。現実主義で自分の感性をしっかり持った、ほかの人の選択には流されない子だと感じています。自分の中にある空洞を理解しながら、それでも今しかできないことを自分自身で選択している。そういう子なのかなって。またベラミーにとってフランクリンは友だちであり、家族に近い存在でもありますが、同時にどこか憧れを抱いていたりもする。そういうところも大事に演じていきたいです。

神野:
マックスとベラミーは繊細な感性を持った子たちだと思うんです。鈍感なところがあるように見えて、それは、そういう繊細な子たちがこの時代をサバイブするために身につけたものなのかなって。また自分自身が傷付かないように、あえてスイッチをオフにしてバカのように見せたりしているのかなとも。そうやってこの時代を必死に生きている2人が愛おしく懐かしくも感じます。とても身近に思える2人です。

――そして大場さんがおっしゃったように、役の上ではみんながフランクリンに振り回されている。

大場:
そうなんですよね。

――でも、現実世界では中山さんは本作の主演を務められ、いわば座長の立場にあります。中山さん、座長として意識されていることはありますか。

中山:
いや、何もないですよ、座長なんて考えたこともなかったです(笑)。

神野:
座長ですよ、リスペクトしてます。

中山:
やめてください!(笑)

神野:
だけど、そういうの関係ないよね。

中山:
関係ないです。

大場:
そういう感じじゃないですよね。

神野:
みんな年齢もキャリアも関係なく、対等にガチンコで芝居ができる相手だと思っているので。運命共同体なんです、私たちは。

大場:
どの役も決して1人で成立する役ではないんです。

神野:
稽古では外れててもいいから、全部吐き出したいよね。

中山:
そうですね。

神野:
最初に沸騰させたら、そのあと、見つかるものも多いと思う。だから恥ずかしげもなくやりましょう。稽古場で恥をかくことはなんでもないから。

――最後に中山さん、代表してひとこといただけますか。

中山:
こんな舞台、日本で観たことないと思いますよ。だってプールがあるんだもん。

原:
間違いない!(笑)

中山:
物語はもちろん、視覚的にも楽しんでいただけるはずです。劇場に来ていただけたら、きっといい時間を過ごせると思います。そういう作品にできるよう、“一生懸命”稽古をしています。

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