若月佑美、有馬爽人とのWキャスト主演舞台＜薔薇王の葬列＞開幕！「きっと何か感じていただけると思います」【オフィシャルレポート】

オフィシャルレポート

2022年6月10日（金）東京・日本青年館ホールにて、舞台＜薔薇王の葬列＞が開幕した。ウィリアム・シェイクスピア『ヘンリー六世』と『リチャード三世』を原案とした菅野文による漫画を原作としたTVアニメが現在放送・配信中の同作だが、これが初の舞台化となる。今回は記念すべき初演の直前に行なわれたゲネプロの模様をレポートする。

舞台＜薔薇王の葬列＞の見どころは、なんといっても主人公・リチャード役が男女Wキャストであることだろう。男性と女性、2つの性を持って生まれてきたリチャードを、若月佑美・有馬爽人がそれぞれの解釈と想いで練り上げ演じる。若月は、難しい役どころながら繊細に、そして力強く演じている。剣による本格的な殺陣アクションも同作で初挑戦ということだが、それを微塵も感じさせない迫力のパフォーマンスで魅せた。この日のゲネプロは若月のみだったが、前日に行なわれた稽古では、有馬の感情を内に秘めて発する声、こちらも初挑戦となる殺陣での、雄々しく、それでいて軽やかさを含んだアクションが目を惹いた。主演が代われば、周りも変わる。ぜひ、どちらの回も劇場に足を運び、生の演劇ならではの化学反応を見届けてほしい。

脇を固める俳優陣も、実力派揃いだ。一国の王でありながら、誰よりも優しく傷つきやすいヘンリーを演じるのは和田琢磨。リチャードが心寄せる柔らかな人柄の内に、恐れや苦悩を抱く複雑なキャラクターは、和田にとっても新境地だ。エドワード役の君沢ユウキ、ジョージ役の高本学、ケイツビー役の加藤将、ウォリック伯爵役の瀬戸祐介らは、流石の存在感。登場のたびに空気が彼らの色に染まる。次は彼等の視点で物語を観たい。そんな気持ちにさせる吸引力がそれぞれにある。リチャードに恋をする2人、エドワード王太子役は廣野凌大が、アン役は星波が演じる。作中では一際若く、瑞々しい役どころの彼らの心の交流にも注目したい。そして、リチャードの母・セシリー役の藤岡沙也香、ヘンリーの妻・マーガレット役の田中良子、リチャードの父・ヨーク公爵リチャード役の谷口賢志らが作品に重厚さと深みを与えている。

異彩を放つのはジャンヌダルク役の佃井皆美だ。リチャードにのみ見える幻影のような存在の彼女は、物語を導く役割も見事に果たしている。高い身体能力を活かし、幻影ならではの浮遊感や異次元感をその身一つで表現しているのも見どころだ。さらに劇中での歌唱シーンも見逃せない。

そのほか、アンサンブルの面々が舞台を支える。戦場を表現するアクションの数々に加え、今回の装置は、いわゆるお盆のように舞台美術が回転することで、同時刻に起こる事象や登場人物たちの交錯する感情を表現しているが、その舞台装置もアンサンブルが動かしている。さらには、リチャードを苛む呪いの声の合唱。生の人間の声だからこそ生まれる、臨場感と迫力が主人公を追い詰めていく。

1度観たら、もう1度劇場に足を運ばずにはいられない。そんな魅力が同作にはある。ぜひ、その目で、耳で、全身で＜薔薇王の葬列＞を感じてほしい。