最近の若者はギターソロを飛ばすのか!? アイドルソングで考えるギターの存在意義｜「偶像音楽 斯斯然然」第83回

ギターソロは飛ばされるのか？　どんどん短くなる楽曲尺

ギターソロ、および間奏は“ボーカルを休ませる”という意味もあるだろう。しかしながらアイドルによる複数メンバーの歌割りでは必ずしも必要なことではない。アイドル戦国時代と呼ばれた、アイドルブームが始まった頃から、間奏が存在せず常時ボーカルパートが存在する楽曲が増えた。

SUPER☆GiRLS「女子力←パラダイス」（2011年）

実際、“最近の若者はギターソロを飛ばしているのか”というところだが、とあるネット調査によると実際はそうでもないらしい。よく考えれば“ギターソロが始まったから飛ばして次に行こう”という思考になるとは考えにくく、飛ばすのは“1番を聴いて満足した”ということだろう。それよりも“イントロが長いと歌が入る前には飛ばされる”ことの方が現実味はある。実際私が音楽事務所で新人開発業務をやっていた時、送られてきた膨大なデモテープを、イントロが長すぎて歌に入る前にボツにしたこともあったし、そういったことを踏まえ、アマチュアバンドには“デモテープのイントロは15秒以内にすべき”というのは業界的で声高に言われていたことである。尤も、長さを感じさせずにリスナーを惹き込ませるイントロというのは確実に存在するので、結局は腕とセンス次第ということなのだが。

当コラムでもしばし取り上げているが、昨今のポップスにおける海外トレンドは楽曲の短さである。イントロなし、間奏なし、さらにはサビらしいサビや盛り上がりもなく終わってしまい、リスナーに“あれ？”と思わせてくり返し聴かせる手法を用いていることが多い。そういうとなんだか面白くないように思えているのだが、くり返し聴くことに耐えうる楽曲というものはかなり高度な技術も必要になる。楽曲の尺は2018年あたりから3分半くらいの曲が目立ち始めた。BLACKPINK LISAソロの「LALISA」（2021年）が3’26”、 BLACKPINK「How you like that」（2021年）に至っては2’59”と3分を切り、今話題のLE SSERAFIM「FEARLESS」（2022年）は3’03”だ。K-POPに限らず、Latto「Wheelie」（2022年）が2’59”、Jack Harlow「First Class」（2022年）は2’34“……と現在の欧米チャートは3分弱の楽曲が溢れている。

LE SSERAFIM「FEARLESS」（2022年）

日本では、“侘び寂び”文化もありドラマティックな展開を好む傾向もあって、アイドルソングおよび、ポップスではリスナーをハッとさせる“転調”と“Cメロ”が当たり前のように多く用いられている。ゆえに現状を見ると海外のような短い楽曲がスタンダードにはなりづらいように思うが、それでも90年代末から00年代に多かった4分半〜5分越えの楽曲はここ数年で急激に少なくなってきていることも事実である。

アイドルにおいて、ギターソロや間奏はパフォーマンスにおける“ボーカルレスの演舞”として、コレオグラフィの山場としているグループも多い。間奏の必要性と、それを盛り上げるための要素としてのギターソロはグループを魅せるためのものとしてプラスに働くこともあるわけだ。