アイドルかロックか ＼ヲタグルイ！／ 合間はノーサンキュー｜「偶像音楽 斯斯然然」第2回PassCode、BiSH、爆裂女子-BURSTGIRL-、xoxo(Kiss&Hug) Extreme、Buono!、ロック系アイドルを考える

ロックの初期衝動としてバンドと同等にアイドルがいる

そして、しばし巻き起こるのが“アイドル or アーティスト”論争である。個人的には90年代から続いた“ヴィジュアル系”バンド論争と同様、臨機応変に使い分ければいいと思っている。いわゆる“アイドルの枠を超えた”などの表現は、アイドルファンからは好まれないものの、アイドルにまったく無関心、それどころか偏見を持っている層に対しては非常に有効的であったりもするからだ。

先日、ロック好きの高校生たちと雑談する機会があった。04 Limited SazabysやSurvive Said The Prophetといった激しめの音が好きな彼らに“アイドルは聴くの？”と訊ねたら“聴かない”と即答された。しかし、PassCodeは大好きだという。曰く“アイドルじゃなくてボーカルダンスグループ”“もはやバンドよりもバンド”だそうだ。BiSHの名前を出したら“楽器を持たないパンクバンドです！”と力強く返された。そういった体裁は大事なのだとあらためて思った次第。リスナーが勝手に解釈する場合もあれば、演者自ら名乗る肩書きもある。アイドルに限らず、“ヴィジュアル系バンド”はNGで、“ヴィジュアル系ロックバンド”じゃなきゃダメとか、“作詞”ではなく“作詩”とか、“Vocal”ではなく“Vox”などなど、表現者のこだわりはいろいろあるのである。

そうしたロック系アイドル（本稿ではこう表現する）のライブ会場には若い層、俗にいう、ロック好きのキッズも多い。先ほどの高校生たちを含め、彼らにとってみれば、ロックの初期衝動としてバンドと同等にアイドルがいるわけだ。私のような中年おっさん世代がSex Pistolsのシド・ヴィシャスを見て“オレ、明日眼帯つけて学校行くわ”などと中二病に陥ってしまったのと同じく、アイドルに対してそうした感情を抱いてもおかしくないのである。自分が中学2年生の時にBiSHのMVを観ていたら、また違うこじらせ方をしていただろうなと思うこともある。

BiSH「遂に死」

輸入盤の“Parental Advisory”ステッカーに意味もわからずドキドキしていた感覚を思い出す、BiSH「遂に死」