コロナ禍がもたらしたもの、アイドルだからこその新たな可能性|「偶像音楽 斯斯然然」第81回

コロナ禍がもたらしたもの、アイドルだからこその新たな可能性|「偶像音楽 斯斯然然」第81回

コロナ禍がもたらしたもの、アイドルだからこその新たな可能性|「偶像音楽 斯斯然然」第81回

新型コロナウイルス感染症は、アイドルに大きな影響を与えている。

コロナ禍以前のような活動ができず、困難な状況に陥っているグループがいる一方、この難局の中でも新しいアプローチを試みて、アイドルエンタテインメントの可能性を押し広げているグループがいるのも事実だ。

今回は、改めて新型コロナウイルスがアイドル界にもたらしたこと、またその中でも試行錯誤をしながら新たな展開を見せているいくつかのグループの活動を紹介する。

アイドルだからこそできる、新しいエンタメの可能性

コロナ禍になって、槍玉に挙げられたエンタテインメント業界。2020年の緊急事態宣言後のライブ再開には大きく批判もあった。特にメジャーは関わる人間も多く、責任が多岐に渡るため、どうしても腰が重かった。これは今だから話せるバンド界隈の話ではあるのだが、“どこそこがまだ有観客ライブをやってないから、うちはまだできない”などという、“足並みを揃えなければならない”というなんとも悪い意味での日本っぽい変な風潮があったことも事実である。そうした渦中でのアイドルシーン、とりわけインディーズのライブアイドルシーンは、試行錯誤しながらもライブイベントの再開へ向かうフットワークは軽かった。形式は異なれど、ライブを求める演者と観客の相互関係はコロナ前も後も変わっていないように思っている。私は、再開してから毎週のように何かしらのライブに行っていたので、その辺りの熱量は感じてはいた。

観客側の状況も大きく変わった。ライブハウスには行かないけど、ホールだったらライブに行くという層が一定数いる。それはコロナどころか、80年代のバンドブーム時代から変わらない部分だ。スタンディングで、モッシュやダイブといった行為を含めたライブハウスに対する怖さ、偏見を持っている人は少なくない。加えて、アイドルライブに対するイメージもあるだろう。かくゆう私も10数年前、アイドルライブはいわゆる“ヲタ芸”をやらないと他ヲタクに締め出されるのではないだろうか、など思っていたものだ。アイドルライブに対してのハードルは意外と高いのである。しかしながら、このディスタンス下のライブハウスでのアイドルライブはそうしたハードルが大きく下がった。実際にコロナ禍でライブハウスデビューした人は、女性を中心にかなり多い。

先月、山中湖で行なわれた<アイドル甲子園 FUJISAN SPRING FES 2022>は、開放的な大自然の中でのスケール感、久しぶりに思いきり“フェス”味を味わえるイベントだった。声は出せなくとも広い野外で思い思い振りコピに興じる盛り上がりに、ライブイベントの希望を感じた。冒頭での真っ白なキャンバスのコール&レスポンスの解禁ライブもこうしたイベントから触発されたものなのだろう。

Appare!が浅草花やしきでイベントをやるらしい。なんとも楽しそうなイベントである。

Appare!公式Twitter

Appare!といえば、オーディエンスとの一体感ありきのライブを行なってきた代表格グループであったが、改名後、特にここ最近はパフォーマンスレベルが格段にアップしており、きっちり“魅せる”ことで勝負するグループへと成長した。

Appare!「スカイラインファンファーレ!」

アイドルだからこそできる、こうした自由な発想の施策。やはりアイドルは、みんなに元気と希望を与える存在であってほしい。

徐々に規制は緩和されてきているとはいえ、昔のようなライブ環境に戻るのはまだいつになるかはわからないし、常に今できる形を模索しながら、演者と観客の満足度が上がるものをともに模索していかなければならない。面倒なことではあるかもしれないが、それもエンタテインメントの醍醐味だろう。特にこうでなければならないという決まりのない、総合芸術であるアイドルだからこそ、自由にできることがある。そこから生まれる新しい可能性は、アイドルならではの楽しみでもある。

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