わーすた、#ババババンビ　それぞれが“周年ライブ”で魅せたアイドルとしての矜持｜「偶像音楽 斯斯然然」第80回

わーすた　新たなフェーズに突入したミライ

3月26日、豊洲PITで行なわれた、わーすた7周年ライブ＜The World Standard～石の上にネコも乗る7年～＞は、安心と信頼のわーすたによる圧巻のステージでだった。

猫耳をつけたデジタルネイティブ世代アイドルとして、センセーショナルにシーンに現れた彼女たちも結成7周年。もうすっかりベテランの域である。ここ最近は数多くのグループが出演するイベントで観ることも多いのだが、そういう場だからこそ実感する、さすがの貫禄。圧倒的なパフォーマンスでオーディエンスをねじ伏せていくが、それでいて、若いグループと並んでも遜色のないアイドルとしてのフレッシュなキラキラオーラを持ち続けているというすごさである。

今年2022年から新体制4人編成となり、だいぶ見え方は変わった。無論良い意味である。アイドルグループには意図せずとも“センター”ができてしまうゴレンジャー的な5人編成、平均的に見える4人編成、それぞれのよさはある。わーすたは、ツインボーカル＋ダンスメンバー3人という見せ方が前提にあって、5人であってもセンター的な見え方はなかった。しかしながら4人になってからバランスが抜群によくなったと感じている。ステージ前方に等間隔に躍り出る絵面を含めて“四天王”か“四神”とでもいうべきフォーメーションに途方もない強さを感じる。

前奏なしで三品留香の歌から始まる「ミライバルダンス」からの圧倒感。全力で攻めるアイドルが多い中で、余裕な表情で魅せられる彼女たちの強固さ。「Congrats!」のハネたリズムも「雨のキモチ」の詰め込んだ言葉が織りなす複雑なメロディの絡みも、時に寄り添い時に離れていく4人の動きに目を奪われる。前体制から歌割りやフォーメーションの変更があったにせよ、“ツインボーカルとダンスメンバー”という構図ではなく、完全に“4人のステージ”になった。

わーすた「ミライバルダンス」 Live Video

そんな新しいわーすたを感じながら、特にグッときたのが「べちょべちょパンケーキ？feat.そこの君。a.k.a.ヲタ」だった。もともとはユニット曲であったが、今回は4人バージョンで披露。謎の狂劇に突然美麗なメロディが挟み込まれるネタ曲と思いきや、ニューウェイヴを感じさせながらファンクっぽいトラックであったりと怪曲であるのだが、そんないろんな意味での難解曲をちゃんと成立させてしまうのが、わーすたである所以。4人バージョンにアップデートされ、他愛のないシュールな会話劇に4人の絆と実力を感じた一幕である。

1部の「スタンドアロン・コンプレックス」からの「グレープフルーツムーン」の流れはボーカルグループとしての真骨頂であったし、2部の「PLATONIC GIRL」、そして「萌ってかエモ」は、ロックアイドルとしての真髄を見せてくれた。コミカルにもシリアスにもロックにも振り切れる、強靭なわーすたのアイドル魂ここにあり。

三品瑠香のボーカルは、実に魅力的である。ビジュアルはクールそうに見えて、ものすごく“人間味”溢れるボーカルなのだ。時折制御不能になったような感情の高ぶりからくる叫びはアイドルよりもシンガーに近い感覚だろう。本公演の1週間ほど前にソロライブ＜三品瑠香生誕LIVE ～21だね！ひゅうひゅう！～＞を行なったばかり。椎名林檎、緑黄色社会、花譜……といった世代も次元も超えた女性の生き様を歌う三品は、テクニックや表現力にとどまらない“歌”に達したのだと感じた。それは新たにリリースされたソロ曲「優しい泡」、先日披露されたバンドアレンジバージョンとは異なるエレクトロサウンドの中で、淡々と吐き出していくその言葉しかりである。

三品瑠香「優しい泡」

歌がウマいアイドルも、ギターを弾くアイドルも少なくはないが、テレキャスターをかきむしりながら吐き捨てるように歌うシルエットがカッコいいアイドルなんて、彼女だけだろう。

三品がそうやって自由闊達なスタイルを確立できたのも、ほかメンバーがいたからにほかならない。廣川奈々聖の抜群の安定感、特に「KIRA KIRA ホログラム」、「最上級ぱらどっくす」での突き抜ける歌声はスピード感がある。加えて、どこまでも高く、どこまでも遠くに飛ぶ声である。しなやかなダンスで魅了する小玉梨々華もMCでは“メラメラ”を“もやもや”と間違えるなど、相変わらずの天然な“語録”を増産していき、松田美里は要所要所で流されたVTRでの謎キャラはともかく、スタイルのよさに磨きをかけたパフォーマンス、艶っぽい動きにドキっとする。わーすたにおける“ガールクラッシュ”担当だ。

「べちょべちょパンケーキ？」に「うるとらみらくるくるふぁいなるアルティメットチョコびーむ」、わーすたの全力でコミカルに振り切れるパワーとふざけ倒せる余裕はスキルがあるからこそ成り立っているもの。そもそもデビュー当初からグループのコンセプトやビジュアルイメージがまったく変わらないというのもわーすたの強みであり、すごさである。これまでも面白かったのは間違いではないが、8年目に突入したからこその貫禄と余裕が、これからのわーすたをますます面白くする。

4人になり、新たなフェーズに突入した彼女たちのミライが楽しみで仕方ない。