わーすた、#ババババンビ　それぞれが“周年ライブ”で魅せたアイドルとしての矜持｜「偶像音楽 斯斯然然」第80回

#ババババンビ　コミカルもエレクトロもバンドも巻き込んだ馬鹿騒ぎ

#ババババンビは、ここ数年のアイドルシーンの中では新興勢力である。新しいグループは次々と生まれるものの、すでに名のある事務所や既存の運営が立ち上げる場合が多いわけだが、#ババババンビは完全に新規参入、しかもゼロイチファミリアというグラビア界からの参入だった。だからこそ、最初はアイドルヲタクから、ちょっと様子見されることも多かったし、“圧倒的な顔面偏差値”といった芸能的な宣伝文句に、“歌やパフォーマンスで勝負していないのでは？”と偏見的に見られることもあったはず。私は対バンイベントなどで、その存在もステージも何度も観ていたのだが、正直印象には残っていなかった。しかしながら「ばばばばんびずむ～!!」のキャッチーなメロディが耳に残り、あの印象的な振り、横移動膝蹴りがボディブローのようにじわじわと効き始め、楽曲のクオリティの高さに気づき、いつの間にか要所要所のライブには必ず足を運ぶようになっていたのである。

3月27日に行なわれた全国ツアー＜#ババババンビ 全国道中膝栗毛ツアー 2021-2022＞のファイナルのKT Zepp Yokohama公演。この日はデビュー記念日でもあり、2年前の2020年、華々しくデビューライブを行なう予定が新型コロナの影響で中止を余儀なくされた日である。加えてKT Zepp Yokohamaは昨年2021年8月に過去最大キャパのワンマンライブ＜#大馬鹿者祭＞を行なったものの、残り43席を残してソールドアウトできなかった因縁の場所である。

リベンジを掲げた今回のツアーファイナルのチケットはソールドアウト。満員のKT Zepp Yokohamaにお馴染みの角田信朗の語り部＆出囃子が響くと、新衣装を纏った7人による「ばばばばんびずむ～!!」でライブはスタートした。「とぅまっそ」に「うましか超！」というテンポよくコミカルに振り切った楽曲から、「常勝MY GAME」「マイノリティ」「星形」という、クールに攻めるエレクトロチューンまで、この振り幅の広い楽曲が#ババババンビの強み。岸みゆの伸びやかで上に抜けるような歌声は気持ちよく、水湊みおのダイナミックな動きに目を奪われる。池田メルダの来てほしいところにちゃんと来る斬り込み具合いしかり。個性豊か、なんていうと安易すぎるわけだが、いい意味でアイドルっぽくないノリ、女子校というよりも男子中学生の悪ノリを感じられるおふざけ具合いは、魔王・吉沢朱音が大暴れするYouTubeコンテンツ含めての面白さとして魅力となっている。バラバラでどうしようもなさそうに見えて、キメるところはキメてくる緩急に感服。

中盤は待望のバンドセットライブ。過去にもやっているのだが、私は初見。当コラムでも「ドラムがカッコいいアイドルソング」など、#ババババンビのバンドサウンドのこだわりは散々述べてきたが、やはり遠藤勝彦のドラムはキレッキレで気持ちよく、音源よりも前のめりで攻めていくグルーヴと性急なアンサンブルがスリリングで素晴らしかった。改めて感じた「青春ギルティ」が放つガールズロック強度の高さ。バンドセットのライブが正義だとは思ってはいないし、むしろバンドでやっておけばヲタクは喜ぶだろう的なものはうんざりなのだが、このバンドセットはもっと観たいと心底思った。4曲だけのバンドセット。しかしながら、#ババババンビはコミカルソングあり、エレクトロチューンあり、そしてバンドセットでも魅せられるというバリエーションが魅力でもあるので、このバンドセットだけに頼り切らない部分もグループのポテンシャルを感じられる部分だ。

#ババババンビ 「青春ギルティ」

次のセクションはヤマモトショウが手がけた新曲「パーティー」をはじめ、同氏の「バカになって好きって言うだけ」、そして最強ガールポップ「恋するうさぎちゃん最強伝説」「キスしてほしい」という、#ババババンビ流の王道“ザッツ・アイドルソング”の応酬。最後のセクションは「アイノハナ」で桜紙吹雪が舞い、「無重力ランナー」で締め括った。アンコールの最後の最後は「ハナビガタリ」で大団円。完成度の高い構成を見せた公演だった。

#ババババンビは先に述べたように、デビューとコロナが重なった悲運なグループでもある。当初に考えていたヲタクと一緒にバカ騒ぎをしていくものとは違う現在なのかもしれない。しかしながら、“今最も勢いのあるアイドルグループ”であることは間違いない。それはゼロから始めて、真剣にアイドルに向き合ってきた、真摯に音楽に向き合ってきた成果でもある。他媒体でのインタビュー時に聞いたところ、運営ともども“特典会とは？”というところから始めたというのだから。

“全国道中膝栗毛”にしても、そもそも“馬馬馬子鹿”というグループ名も、センスのよさはいたるところから感じられるところ。“圧倒的な顔面偏差値”と謳っていても、CDのアートワークにはアー写は使わず、12枚同時リリースや、3月27日にリリースした最新アルバム『バババーバ・バーババ』も、前作『強く儚い大馬鹿者たち』（2021年）も、どこかで聞いたタイトルのような気がしてならない、ストリーミングより先にフィジカルでのリリース、ついにはアナログ盤まで出すというこだわりようだ。きちんと“音楽をやっている”という誇りがあるからこそできることだろう。