広瀬すず、「最近は自分のお芝居に葛藤するようになりました」スペシャルドラマ『津田梅子 ～お札になった留学生～』制作発表記者会見にて

『津田梅子 ～お札になった留学生～』は新5000円札の顔として描かれる女子教育の先駆者、津田梅子（幼名・梅）の青春を描く大型スペシャルドラマ。彼女は日本初の女子留学生として6歳でアメリカに渡り、女子教育の道を切り拓いたことで知られているが、同作では結婚や仕事について悩む姿にもスポットを当てて誰も知らない津田梅子を丁寧に描いていく。

等身大の梅を、広瀬すずが真っ直ぐに熱演。また、ともにアメリカに留学し、深い絆を築いた親友の山川捨松を池田エライザ、永井繁を佐久間由衣が演じ、内田有紀は西洋思想を身につけた娘の苦悩を理解してあげられずに苦しむ母・初を繊細に表現する。

さらに、ディーン・フジオカが初代文部大臣・森有礼、田中圭が初代内閣総理大臣・伊藤博文、伊藤英明が梅の父・津田仙といった実在の人物に扮し、明治という変革の時代を生き生きと描写。このほかにも宮澤エマ、平岩紙、井之脇海、原田美枝子らが参加し、現代を生きるすべての女性に捧げる“希望の物語”を作り上げる。

会見では撮影秘話がさまざま飛び出したが、盛り上がったのは時代を反映した美しいドレスファッションにまつわる裏話。

広瀬、池田、佐久間は鹿鳴館の舞踏シーンなどで可憐なドレス姿を披露したが、広瀬は“ドレスはウエストがぴったりだったので、みんなで「お腹が空いたね」と話していてもお腹が空いているのか、ウエストが圧迫されているわからなくなっていたことがありました（笑）。食べたら食べたで、お腹のあたりが苦しくなるし……”と、慣れない衣装に苦労したエピソードを打ち明けた。

また、梅、捨松、繁の親友3人組が劇中、夢や恋を語り合うシーンにちなんで、“現場で盛り上がったガールズトークは？”という質問も飛び出し、“ちょっとしたことでもずっと笑っていた記憶があります。笑うツボがみんな一緒で、よく笑っていました！”（広瀬）、“芝居を重ねるにつれてどんどん信頼関係ができていくような現場でした。最初にみんなでワイワイ話すシーンがあって、その芝居の延長線上でずっと笑って話していました”（池田）と役柄同様に、撮影の合間は女子トークで盛り上がっていたことを明かした。

さらに、主人公・梅を演じた広瀬は、役柄への想いも吐露。“梅は日本人だけど中身はアメリカ人、というか、アメリカという環境がすべて自分の中に染みついた女の子。私自身は、直感的に考えは浮かんでくるけど、それを言葉にはできないタイプなので、梅のようにズバズバとぶつけられる性格は演じていて気持ちよかったです”と、熱い信念を曲げずに生きた梅への憧れを語った。

そんな中、取材陣から“梅のように仕事や結婚について選択を迫られたら？”という質問が向けられた。広瀬は“私は……きっと「わかりません！」って言うと思います（笑）。劇中でも「自分のことは自分で選ぶ」と告げるシーンがありましたが、それって私たち現代人にとっては当たり前の感覚だと思うんです。私は両方、大事にしたいです”と、まるで梅のようにきっぱりと回答。

一方、梅とは対照的に忍耐を強いられる明治の母・初を演じた内田は、“今、私たちは自由に自分の意見を発言することができますが、その礎を築いたのが津田梅子さん。彼女が先駆者として道を切り拓いてくれたからこそ、今、私たちがこうして伸び伸びと発言権を持つことができるのだと思います。当時は自分の気持ちを押し殺して生きていた女性が多く、自立することが許されなかったようですので、自分の考えを真っ直ぐ言葉にする梅の姿はとてもまぶしく感じられました”と、梅の功績に思いを馳せていた。

“情熱を持って女子教育に取り組んだ梅のように、今、みなさんが情熱を傾けていることは？”という質問に対しては、広瀬は“「お母さんのカレーが食べたい」と思ったのをきっかけにいろいろな料理を作っています。家にいる時はちゃんと3食作って、残ったものは翌日に食べて……という生活をしています”と、本格的に料理に目覚めた近況を報告し、池田は“役作りでアクションをやりはじめたのですが、あまりに身体が硬いので挫折しかけています（笑）”と、身体作りに奮闘中であることを告白。佐久間は“趣味の乗馬のスキルをもっと上達させたい！”、内田は“華道をやってみたい。お花の声が聞けるような素敵な女性になれたら……”と秘めた想いを口にした。

にぎやかに進んだ会見の最後に、広瀬は“女子教育のパイオニアとして人生を全うされた津田梅子さんの姿を、1人でも多くの方に観ていただきたいです。そして、少しでもみなさんの背中を押せるような作品になっていたらすごく嬉しいです”と力強く語り、制作発表をしめくくった。

質疑応答

――衣装や所作にまつわるエピソードを教えてください。

広瀬：
ドレスはけっこうウエストがぴったりだったので、みんなで“お腹空いたね”って話していてもお腹が空いているのか、ウエストが圧迫されているわからなくなっていたことはありました（笑）。そして食べたら食べたで、お昼ご飯の後のワンシーン目から、お腹のあたりが苦しくなるという……。でもウエストから下がふくらんでいたので、寒いロケでもいっぱい着込むことができました。私のドレスは黒いものから派手なものまで幅が広かったので、毎日着ていて楽しかったです。

池田：
すごく愛おしい想い出として残っているのは、3人で狭い場所に座るシーン。3人とも幅の広いドレスを着ていたので、座った時“押しくらまんじゅう”みたいにギューッと狭くなっていたのが、すごく可愛かったなと覚えています。

佐久間：
大変なことも多かったのですが、当時の身体の見せ方がとても美しくて……。衣裳担当の方がビンテージものを用意してくださったり、イチから作ってくださったりしたので、“世界観に染まれる一部”としてすごく助けていただきました。

――強い情熱を持って女子教育に取り組んだ主人公・梅のように、今、情熱をかけて取り組んでいることはありますか？

広瀬：
2、3日前から、本格的に料理をやろうと思いはじめました。1回目の緊急事態宣言中に、毎日3食作るということにチャレンジしていたのですが、撮影がはじまると自然とやらなくなっていったんです。でも、最近ふとやりたくなって……。きっかけは“お母さんのカレーが食べたい”と思ったからなのですが、母にカレーの作り方を聞いて久々に作ったら、そこからいろいろなものを作りたくなってしまったんです。家にいる時はちゃんと3食作って、残ったものは翌日に食べて……という生活をしています。家にあるもので簡単に作ったり、お肉が好きなので、お肉料理を作ったりしています。

池田：
私は、役作りでアクションをやりはじめたのですが、本当に自分の身体が硬いことに気づいて……。なるべくケガをしないように身体を柔らかくしようとは思っているものの、あまりに硬いので前屈もつま先が遠すぎて、挫折しかけています（笑）。家でストレッチをやったり、身体作りをしたりしています。

佐久間：
ここ2～3年、乗馬が趣味なんです。馬が大好きで、天気が悪くて乗れない時も馬小屋の掃除をしに行ったり、ニンジンだけあげに行ったりしています。“乗馬のスキルをもっと上達させたいな”というのが最近の目標です。ただ、私は運動神経が悪いので、乗馬の先生には　“乗る馬がかわいそう”って言われてしまうんです（笑）。きっとどこかが硬いんでしょうね。2時間くらい乗って、やっと馬とコミュニケーションが取れることもあって、だから毎回汗だくで、悔しくて涙が出る時もあるのですが、それくらい熱血派のスポーツなので、頑張っています。

内田：
クランクアップの時、よくお花をいただくのですが、それを家に持ち帰って生けたりするんです。自分で言うのもなんですが、それがとても上手に生けられるので（笑）、華道をやってみたいなと思っています。お花の中にはすごく元気な子もいれば、すぐに弱っちゃう子もいるので、そういうお花の声が聞けるような素敵な女性になれたらなと思っています。

――梅はわずか6歳で日本初の留学生としてアメリカへと渡りましたが、ご自身が役柄の立場だったらいかがですか？

広瀬：
梅は視線も言葉もすべてぶつけるような女性で、それはきっと日本人だけど中身はアメリカ人、というか、アメリカという環境がすべて自分の中に染みついた女子だからこその行動なんですよね。梅のお姉ちゃんみたいに、ずっと家で暮らす明治の女性だったら、きっと私も“当時の女性らしい女性”でいよう、と思うんだろうな、と思います。私自身は、直感的に考えは浮かんでくるけど、それを言葉にはできないタイプなので、梅のようにズバズバとぶつけられる性格は演じていて気持ちよかったです。お父さん役の伊藤英明さんはすごく素敵な方で面白くて、とても楽しかったです。

――梅子の母・初は、夫・仙のすすめでわずか６歳の梅を日本初の留学生としてアメリカへ送り出しましたが、ご自身が津田家の一員だったらいかがですか？

内田：
劇中、伊藤英明さん演じる夫・仙から叱りつけられたり、急に“鶏をさばいて汁にしろ”と命じられたりするシーンがあったのですが、現代女性の感覚では“どうして私がやるのかな、伊藤くんやってよ！”と思ってしまいました（笑）。今、私たちはこのように会見の場で自由に自分の意見を発言することができますが、その礎を築いたのがすずちゃん演じる津田梅子さんなんですよね。彼女が先駆者として道を切り拓いてくれたからこそ、今、私たちがこうして伸び伸びと発言権を持つことができるのだと思います。当時は自分の気持ちを押し殺して生きていた女性が多く、自立することが許されなかったようですので、自分の考えを真っ直ぐに言葉にする梅の姿は、とてもまぶしく感じられました。ただ、アメリカと日本とのギャップに苦しんだところも母親として見ていますので、梅は本当につらかったと思います。それでも、自分の意志を貫いて輝いたことが後の津田塾大学へとつながり、女性の立場を作ってくれた……。ドラマを観てくださった方には、梅と初という、明治に生きた女性の対比を感じながら、梅の切り拓いた道を楽しんでいただけると思います。

――劇中には、梅、捨松、繁の3人がガールズトークで盛り上がるシーンもありますが、現場で実際に盛り上がったガールズトークは？

広瀬：
ちょっとしたことでもずっと笑っていた記憶があります。笑うツボがみんな一緒で、よく笑っていました！

池田：
撮影初日の朝こそ、それぞれ人見知りをしていましたが、芝居を重ねるにつれてどんどん信頼関係ができていった現場でした。最初にみんなでワイワイ話すシーンがあって、その芝居の延長線上でずっと笑って話していましたね。でも、話の内容を覚えていないということは、そんなにたいしたことは話していなかったのかな（笑）。英語のセリフは大変でしたが、会話のテンポがよくて、自分の意見をハキハキと言える感覚がすごく気持ちよかったですし、英語を話していると（3人の距離が）グッと近くなる感じがしました。

――劇中では梅子が仕事か結婚か、悩む姿が描かれていますが、もしご自身がそういう選択を迫られたらどういう決断を下しますか？

広瀬：
私は……きっと“わかりません！”って言うと思います（笑）。劇中でもお父さんに“自分のことは自分で選ぶ”と告げるシーンがあったんですけど、それって私たち現代人にとっては当たり前の感覚だと思うんです。そのセリフをハッキリ言った時に、“梅ってこういう女子なのかな？”と、役への思考がすごく働いたんですよね……きちんとした答えになっていないかもしれないですが、私は両方大事にしたいです（笑）。

――明治時代は女性がさまざまな葛藤を抱えて生きていた時代。今、みなさんが葛藤していることは？

広瀬：
これまでいろいろな役を演じさせていただいてきましたが、以前よりもインプット、アウトプットする時間が少なくなっている気がします。以前はもっと熱心にいろいろなものを見て、“ああしたい、こうしたい”と思っていたのですが、最近は少し休むと一気に気が抜けてしまって……。次の現場のクランクイン前に“どうしようかな……”と考えることが多くなりました。以前はクランクインが楽しみだったのですが、最近は自分のお芝居に葛藤するようになりました。

池田：
この作品を経て、学ぶことへの意欲や可能性を自分自身で制限しているところがあるのではないかと気づかせてもらいました。勉強することは好きなので、いろいろなことを学んでみようと思って挑戦するのですが、すごく忙しくなってしまって、生活のリズムと合わなくなってしまって……。でも、まだ世の中には自分が意欲的になれば興味を持てるものはいっぱいあって、それを学べるのはとても幸せなことなんじゃないかと、この作品を機に思うようになったんです。今、自分が学んでいることで満足しないような、生き方、生活の送り方をよく考えるようになりました。

佐久間：
“睡眠と食欲”との葛藤はすごくありますね。私は寝るのが大好きで、必ず夢を見るのですが、夢の続きが見たくてもう1回寝たりしちゃうんです。だから、仕事などで“やらなければいけないこと”も“やりたいこと”もたくさんあるけど、寝たいし食べたい！……という葛藤はよくあります。ちなみに、普段は睡眠を取っちゃうことが多いですね。12時間くらい寝ちゃったりします。

――みなさんが憧れている女性、カッコいいと感じている女性を教えてください。

広瀬：
私のまわりには、お母さんになってもめちゃくちゃ男前でカッコいい方が多いんです。サバサバしていて、とりあえず1度は“好きにしな！”と子どもの背中を押してあげる……。そういう男前な“お母ちゃん”にすごく憧れます。うちの母もそういうタイプなんですけど、わりとおっとりもしているので、たまにペースを持っていかれたりするんです（笑）。先輩の女優さんたちを見ていると、女優さんでもあり、1人の女性でもあり、お母さんとしての姿も持っていて、かつ男前で本当にカッコいいなぁって憧れます。

池田：
すずちゃんのいう“お母ちゃん”のカッコよさはすごくわかります。お世話になっているスタイリストさんやヘアメイクさんの“お母ちゃん”としての姿を見るたびに、すごく安心もするし、遠くも感じるというか……とにかく偉大なんですよね。みなさん、相手のことを深く理解しようとしていて、私もカッコいいなと思います。

佐久間：
私も（広瀬）すずちゃんと（池田）エライザと一緒で、現場でお会いするスタッフさんや女優さんの“母の姿”を見るとキュンとするというか……。たまに現場でお子さんと電話している姿を見たりすると、勝手にキュンとしちゃうんです。同じ女性としてカッコいいな、素敵だなって思いますね。今回、出産シーンは“どんな気持ちなんだろう!?”って想像しながら演じたのですが、私自身は出産を経験していないので、経験している人へのリスペクトがより強くなりました。

内田：
“仕事を続けていく”のは人間にとってとても大事なことですが、同じことを続けていくのって本当にどれだけ大変なことか……。だからこそ、私は自分のことだけを見て精一杯になるのではなく、自分の環境に感謝しつつ、まわりをやさしい目で見られる人でありたい。そういうたおやかで豊かな女性はカッコいいなと思います。

――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

広瀬：
女子教育のパイオニアとして人生を全うされた津田梅子さんの姿を、1人でも多くの方に見ていただきたいです。そして、少しでもみなさんの背中を押せるような作品になっていたらすごく嬉しいです。ぜひ、ご覧になってください！