NEO JAPONISM サウンドP・Saya[インタビュー後編]V系ギタリストからアイドルクリエイターへの転身「J-POPの魂を忘れない洋楽化! そこが大事」
NEO JAPONISM サウンドP・Saya[インタビュー後編]V系ギタリストからアイドルクリエイターへの転身「J-POPの魂を忘れない洋楽化! そこが大事」『偶像音楽 シン黒子列伝』第1回後編
新連載『偶像音楽 シン黒子列伝』第1回・Sayaの後編。今回は、音楽的ルーツ〜ヴィジュアル系バンドマン時代の話を皮切りに、彼が設立した音楽制作チーム『A-Spells』、曲作り&サウンドデザインでのこだわりなどについて、じっくり語ってもらった。
日本で音楽をやっていて、キャッチーじゃないものを作るのは甘え
ーーSayaさんがDTMを始めたきっかけは?
Saya:
もともと小学生の時、ケータイで着メロを打ち込むとか、『ポケットピカチュウ』でアラームを打ち込むとか、そういうことが好きだったんですよ。プレステに『音楽ツクール』っていうソフトがあって『ファイナルファンタジー』の曲を打ち込んだり。本格的なDTMは父親のパソコンにデジパフォ(※Digital Performer、米Mark of the Unicorn社のDAWソフトウェア)が入っていて。合唱コン(コンクール)の伴奏はピアノ弾いて録音したものを使ってたけど、打ち込みだったらテンポもジャストになるっていう中学生の謎の思考で、合唱コンの伴奏を全部デジパフォで打ち込んでましたね。その後、バンド志向になって、なぜかMTRになるんですよ、ZOOMの。デジパフォ使ってたのに(笑)。そのうちに父親がデジパフォからLogic(※Apple社のDAWソフト)に乗り換えて、“これやっておいた方がいいぞ”っていう無言の圧力があったんです。確かにDTMは今後の音楽に欠かせないものになるよなと思って、高2、高3の時に覚えました。東方(project)アレンジ作ったり、(涼宮)ハルヒの曲とか打ち込んでましたね。ヲタク文化が流行って一般化し始めたじゃないですか。
ーーニコニコ動画が流行り出して同人音楽がブームになりましたよね。その辺のメロディやキャッチー性は現在のSayaさんの作家性になっていますね。
Saya:
もともとメロディアスなものが好きだったし。そういう日本のコアな若者に通用するメロディを研究しまくったから、それは身になってると思います。
ーーSayaさんの曲は、サウンドや音像は洋楽志向ですけど、メロディは必ずキャッチーという。
Saya:
日本で音楽をやっていて、キャッチーじゃないものを作るのは甘えだと思ってます。好きなことをやって突き詰めた結果、マニアックになるのはいいと思うんですよ、それはカッコいい。じゃなくて、“自分は違うんだぜ”って、あえてマニアックな方に走るヤツいるじゃないですか。コアぶるというか。それはダメじゃん、って思うんですよ、全然カッコよくない。俺はとことんメロディアスでキャッチーなものが好きだから、“これが海外ではカッコいいんだぜ、お前らついてこいよ”みたいなことはしたくないんですよ。エンタメを提供する側として正しくない。初めて聴いたヤツが好きになってくれないと困るから。ライブハウスの1番後ろでチラっと観てるヤツに好きになってもらわないといけない。
ーーそれ大事ですよね。メロのキャッチーさに惹かれたけど、ちゃんと聴くとサウンドは音楽通を唸らせる本格派っていうのがカッコいいと思います。
Saya:
それこそ自分にとっては、加藤颯がその1番後ろで観てる感性なんですよ。颯くんがよく“これはちょっとマニアックすぎると思います、サビはもっとキャッチーになりませんか”って言ってくるんですけど、それは100%信用してます。何パターンも作って、“え? またサビやり直し!?”ってこともよくある。でも、そうやって作るといい曲ができるんですよ。
ーーそもそも、アイドル自体に偏見はなかったですか?
Saya:
ないんですけど、強いていうならユニゾンが苦手かな。AKBとかはホントに聴いてなかったから、ユニゾンであることすら知らなかったけど、ジャニーズでもサビでみんな歌ってるとかあるじゃないですか。あれは苦手だったんです。でもカッコいい部分があるのもわかってたんですよ、SMAPとかセンスいいなとか、モー娘。とかめちゃめちゃカッコいいし。だから偏見じゃなくて、苦手な部分があるっていう感じですかね。ちゃんと音楽やってるのは知ってたから。
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