槙田紗子×むっくん(NNBS.)[プロデューサー&音楽クリエイター対談]盟友が寄り添い生み出したグループの歴史を紡ぐアンセム「Hey!Mommy!は、この曲に何度も救われてきた」

槙田紗子×むっくん(NNBS.)[プロデューサー&音楽クリエイター対談]盟友が寄り添い生み出したグループの歴史を紡ぐアンセム「Hey!Mommy!は、この曲に何度も救われてきた」

槙田紗子×むっくん(NNBS.)[プロデューサー&音楽クリエイター対談]盟友が寄り添い生み出したグループの歴史を紡ぐアンセム「Hey!Mommy!は、この曲に何度も救われてきた」槙田紗子×むっくん(NNBS.)対談

元PASSPO☆のメンバーで、現・振付師の槙田紗子が、はじめてプロデュースを手がけ、2021年11月28日(日)に豊洲PITで開催された<SACO FES DX>で正式デビューを果たしたHey!Mommy!。彼女たちのオリジナル曲の1つ「SCP!」は、1度聴いたら忘れられないキャッチーなメロディと躍動感のあるビート、さらにダイナミックな振り付けで、早くもファンの間で大きな人気となっている。そんなHey!Mommy!の“アンセム”を手がけたのは、覆面音楽クリエイターチームNNBS.のメンバーのむっくん。今回、Hey!Mommy!に限らず、これまでも数々のアイドルグループの楽曲制作と振り付けにともに携わってきた槙田とむっくんの特別対談をセッティング。強い信頼を持ちながらつながる2人の関係や、「SCP!」、そしてHey!Mommy!への想いをたっぷり語り合ってもらった。

槙田紗子
ポスト
槙田紗子

「SCP!」では、7人の人柄やこれまでの時間と未来が描かれている(槙田紗子)

――以前、よい楽曲はすぐに振りが思い浮かぶとおっしゃっていましたが、「SCP!」もまさにそういう曲だったんですね。

槙田:
SACO PROJECT!として活動していた時期は、半年ほどだったんですけど、Hey!Mommy!はその間に生まれたものだと思うんです。7人からインスピレーションをもらってアイディアが湧き出てくる……そういった進め方をしているので。「SCP!」の前に2曲できていたんですけど、それはストレートにカッコいい曲で、私がやりたいレベルの高いパフォーマンスが似合う曲なんです。その2曲は、“あの子たちをどうやってこの曲に合わせるか”という発想で振りを作っていったんですよ。それに、曲の雰囲気を表現するためには、あの子たちをもっと鍛えなくちゃいけないし。でも「SCP!」は本人たちに寄り添って曲を作っていただいたんです。だから振り付けもめっちゃやりやすかったです。しかも、彼女たちと過ごしてきた時間が長くなってきた中で生まれた曲だったので、“この子にはここで変な動きをさせよう”みたいなアイディアがどんどん浮かんできましたね。

――むっくんはメンバーに話を聞いたということでしたが、何か印象に残った言葉などはありましたか?

むっくん:
言葉がどうこうではないんですけど、すごくピュアだなと思いました。ちょっと驚いたくらい(笑)。みんな、決して話がウマいわけではないんですけど、一生懸命に答えてくれるし、何より嬉しかったのは、7人全員が武道館に行けるって信じていること。その真意が聞けて、自分も紗子のようにすぐに曲が思い浮かびました。この子たちはしゃべりで表現するんじゃなくて、パフォーマンスで表現してくれるというか、僕らが明るい曲を書いたら、ちゃんと明るくやってくれる、そんなことを思いました。7人は、印象的な言葉はあまり出てこないよね?

紗子:
そうなんですよね。

むっくん:
でも、いい意味で好きにならせてくれる魅力があるんですよね。話をしていると、思うことはいっぱいあるんです。“そこはこういうふうに言ったらもっと伝わるのに”とか(笑)。でも、そんなことはどうでもよくなるくらいピュアで魅力的なんです。きっとそこはプロデューサーの紗子の指導のおかげでもあると思います。

紗子:
彼女たちは、アイドルとしてのキャリアがまったくないんです。今のアイドル界ではちょっと珍しいことだと思うんですけど。その分、めっちゃくちゃピュアで、今は一生懸命アイドルになろうとしている段階ですね。だから、“こういう表現をしたい”“こういうふうに見せたい”っていうアイドルとしての自我はまだないんだと思います。それはよくも悪くも、という部分でもあるですけど、今はその“自我”を探している段階なので、そういう意味でも「SCP!」みたいな曲が必要だったんですよね。私が考えたものではなくて、「SCP!」は自分たちの言葉から生まれた曲で、7人の人柄やこれまで過ごしてきた時間と未来が描かれています。あの子たちが歌詞の物語を演じるんじゃなくて、彼女たち自身が描かれているんですよ。この曲を歌っていくことで、自我が生まれて、自分から発信したい言葉なんかも生まれるんじゃないかなって思っています。

むっくん:
そのとおりだと思います! (「SCP!」を作る前に)「SUMI-HAJI」と「Tickey Luppy Doo」のパフォーマンスを観たんです。すごく一生懸命にやっていたんですけど、紗子に言われたことをしっかり演じようとしている印象がありました。でも、「SCP!」では、感情が爆発したようなパフォーマンスを見せてくれていますよね。求められたことをしっかりと表現することも、自分自身を表現することもどちらも必要だと思うので、すごくよくなったなと思いました。それに、「SCP!」では、肩の力が抜けて、楽しそうにやっていて、それまでの2曲とは、また違った表情が見られて、それもいいなと思ったんです。この3曲の練習も見た時、最後に「SCP!」をやったんですけど、まったく雰囲気が変わったので、なんだか笑っちゃいました(笑)。

槙田:
はははは(笑)。

むっくん:
彼女たちの中でも、いい意味では曲に対するスタンスが変わったというか、自分たちが作った曲が、彼女たちの違った一面を引き出せたのかなって思えて、嬉しかったです。

――先ほど、槙田さんが“曲を作っているむっくんも、振りが思い浮かんでいるはず”とおっしゃっていましたが、むっくんは実際、イメージしながら作っているんですか?

むっくん:
そうですね。“紗子ならウマく料理してくれるだろう”っていう安心感があるので、ペンは走りやすいです。甘えているだけかもしれないですけど(笑)。ただ、「SCP!」は、メンバーに話を聞いて書いた曲ですけど、紗子のこともイメージしていたのかも。次に曲を書く時は、彼女たちだけを見て書くようになると思いますけど、あの時は、紗子を含めてSACO PROJECT!だという意識は持っていました。プロデューサーまで思い浮かべて曲を書くなんて、初めてのことでした。そんなふうに依頼されることってあり得ませんから(笑)。イメージしやすいという意味では、紗子とやる曲は、ふざけられるんですよね。毎回、湧き上がってくるものがある……ウマく言えないけど、それが、学校の休み時間みたいな感覚なんですよ。

――ちなみに、アイドルに楽曲を提供する時に、気をつけていることはありますか?

むっくん:
これまでにアイドルの楽曲は40~50曲ほど手掛けていると思うんですけど、汚い言葉は使わないようにしています。NNBS.としてはハッピーな音楽を提供したいという想いがあるんですね。なので、ネガティヴワードは使いたくないんです。あとは、“頑張れ”といった直接的な表現も避けるようにしています。

槙田:
言われてみれば、そういう歌詞はなかったかも。

むっくん:
ないんですよ(笑)。だって、みんな頑張ってるじゃないですか。それと意外と“好き”もあんまり使っていません。結局、押しつけがましい歌詞にしたくないんですよね。

槙田:
“好き”は、大事なところで出てくる印象があるな。

――あまり“好き”を安売りしないと。

むっくん:
安売りというよりは、そういう曲はもうたくさんあるので。アイドルの曲のワードセンスとして、“好き”とか“頑張れ”は頻出なので、ちょっとカッコつけて外しているんです(笑)。歌詞の中で“ボク”と“キミ”が登場するとして、それがラブソングだと捉えてもらってもいいし、友情かもしれないし、アイドルとファンの関係を歌っていると解釈してもらってもいい。限定せずに聴き手が自由に想像できる余白を残したいというのは、作家として心がけている部分ですね。これがロックバンドの曲だと、ストレートなメッセージが込められていてもいいと思うんですけど、アイドルって純粋に可愛いじゃないですか(笑)。そういう子たちが、政治的なメッセージを歌っても似合わないだろうし、ファンであれば“好き”も歌詞で歌ってもらうより、本人に直接言ってもらいたいんじゃないかな(笑)。

次ページ

  • 2
  • トップページ
  • インタビュー
  • 槙田紗子×むっくん(NNBS.)[プロデューサー&音楽クリエイター対談]盟友が寄り添い生み出したグループの歴史を紡ぐアンセム「Hey!Mommy!は、この曲に何度も救われてきた」